JARL QRPクラブ会報 2012年10月号 Vol.55-06

投稿者: | 2012年10月25日

2012年10月号 Vol.55-06 10月25日発行


KN-Q7Aトランシーバキット頒布体験記

JL1KRA 中島 潤一

はじめに

 ハムフェア2012にて会員に復帰しましたので寄稿します。元々海外のキット好きが高じて、中国製トランシーバKN-Q7A(7MHz SSB 10W機)を作り、上海のRongさん(BD6CR/4)に1ページのカタログを日本語翻訳して差し上げたことがきっかけでした。
 後日ステップバイステップで作れるマニュアルにも感動し、自分のためのマニュアルでしたがWebにアップロードしたところ、欲しい方が沢山いらっしゃりました。さらにRongさんからも依頼され、正式名称のついた中国のガレージキット“CRkits”のトランシーバ2種類を非営利で頒布しています。KN-Q7Aは合計150台以上、その後頒布を開始したCRK-10は70台以上頒布いたしました。


海外キットの特性

 海外製キットは異国情緒があるものの、楽しむには旬の時期にWebや海外MLをフォローしたり、海外製部品の性質や欠品入手にも特殊なところが有ります。また中国からの場合、輸送物は投げられてしまうので内容品の痛みが多いです。サポートのある代理店を介さない輸入やクラブキットにはリスクが伴います。また安いキットは利幅が無く、エントリー機種でありながら手間がかかるので、代理店では扱いにくいものになってしまいます。それでも何とか自作とQRP人口の裾野を増やすべく、またアマチュア無線と言う趣味に恩返しするつもりで楽しみながら頒布頑張っているところです。

頒布をしてみてわかったこと

 若手ニューカマーを増やすため、Webサイトはイラストで萌え系にしてみました。これにつられて?免許をとりたての学生さんが申し込まれてきたときは嬉しくなります。99%の方はごく普通のアマチュア無線家で頒布の後はローカル局のようなお付き合いです。利益は無くてもこの絆が私の宝物です。ハムフェアでアイボール、キット楽しかったよ!と言っていただき最高です。おおよその推定ですがこのキットをきっかけにトランシーバの自作・再開される方が30%くらいはいらっしゃるようです。
 しかし悩みは1%くらいの方で稀に出来ないわがままを仰います。これにお付き合いできるかできないかが頒布継続の分かれ目になるようです。あまりに悩ましいメールが来て眠れないことが有りましたが、責任分界点を設け、最近は気にならなくなりました。


在庫、売りたくないキットとサポート

 各局が作りたい時に頒布するキットの在庫があるように調整が大変です。CQ誌2012年5月号に記事が掲載されたあとは注文が殺到しました。この時ばかりは大量に輸入したのですが、税関から問い合わせが来てしまいました。出頭説明しにいったところ担当の方がハムで、税金は取られましたが迅速に通関し、キットを各局にお届けすることが出来ました。
 また、輸入しておいて“売りたくない”というのは不思議な表現ですが、半完成品で簡単に完成するCRK-10(7MHz CW 4W)トランシーバキットです。成功される方は感動されCWerには人気ですが、初期の製品ロットでは基板上のICに不良品が混入したことがありました。そうなるとまさに基板だけに、頒布者は買われた方と中国側の“板挟み”です。もう売りたくないよ!と何度も中国にメールし、Rongさんと知恵を絞って何とか双方で解決策を導き出しました。
 そのほか頒布依頼の台帳管理、梱包、発送など手間や想定外の出費も多く、営利事業であってもキットメーカや代理店がどれだけ薄利で頑張っているかを身にしみて感じるようになりました。私の場合、キット頒布は必要なサービス部品をオマケ満載でお届けしているので利益は無く、一台当たり数百円の部品サポートコストを確保し、部品の追加発送や通信費になどに使わせていただいています。サポートは通勤電車の帰りにスマホか、寝る前にうとうとしながらメールをしていることが多いです。眠そうなメールが来たときはゴメンナサイ。

素晴らしい改造、上手く行かないときどうするか。

 現在の市販アマチュア機は改造の余地がほとんどありません。でもキットならまだまだ自由です。海外のQRPerでは出来ないようなオリジナルな改造を各局がされて感動します。
 上手く完成しないときはしばしばメールを頂きます。いくら頒布をしたといってもこちらの実物もないので目隠しをした人に道を聞くようなものです。それでも製作者からするとわらにもすがるようなメールですから、その気持ちが判ります。こちらも想像して回答すると稀にアドバイスが的中したり、やり取りのうちに間違いに気付かれることが有り喜びを共有します。
 よくあるのが先入観を持って“これは中国製の部品だから品質が悪い”と思いこむケースです。でもたいていはハンダ不良や部品の取り付け間違いです。最近は、どうしても上手く行かないときには完成品、デモ機を貸出することにしました。デモ機と御自分の製作されたものを比べれば誰でも容易にトラブルシュートが可能です。


まとめ

 目の前に並んだ電子部品がトランシーバとして完成し、遠くの相手と心通じ合える瞬間の感動を我々は知っています。微力ではありますがアマチュア無線をもっと面白くするためキットの頒布を私の余力の範囲で続けたいと思います。KN-Q7A等についてはこちらをご覧ください。
 10月号会報では福島会長もハムフェアで自作品の展示が少なくなったと書かれています。部品、ジャンクの入手難は年々進んでいるようです。キットへのニーズはますます高まっているように思います。幸い米国にはElecraftなどの元気なアマチュア無線機キットメーカが有り、EDCさんでも輸入されています。これからも多くの人がキットを楽しむことが出来ると思います。


【自作と実験】

 QRPクラブには製作記事を雑誌に書いている技術力のある会員がたくさんいますが、一方で下手の横好きで「自作は好きだがいつもうまく動かない」という私のような会員も多くいることでしょう。堂々と失敗できるのはアマチュアの特権であり失敗してもそれなりに楽しいのですが、時々は完成させることが精神衛生上はとても大事です(Hi)。
 QRPクラブはベテラン、名人たちだけの会ではないので、そのような失敗例を集めて自作する人の参考にしていただこうと思いました。たまたまハムフェアの会場でJG3EHD西村さんに自作の送信機がうまく動かないというお話しを聞いたので原稿を依頼したところ了承されました。みなさん、回路や写真をみて思いつくことがあれば編集部あてメール(qrpnewsアットマークjaqrp.net)でお願いします。また、われこそはという自信のある「失敗作」をお持ちのかた、投稿をお待ちしています。(JA8IRQ/福島)


14MHzモノバンドQRP送信機 約400mW出力

JG3EHD 西村庸

 JG3EHD 西村です。私のQRP送信機を会報で紹介していただけるようでありがとうございます。ハムフェアでお話しました14MHzモノバンドQRP送信機 約400mW出力の写真と回路図をお送りします。図面はフリーソフトの回路図エディタBSch3Vで書いてます。


(14MHzQRP送信機回路図。Ctrlと+キーとを同時に押すことで画面表示が大きくなります。逆にCtrlと-とでは小さくなります。)


(14MHz送信機 パネル面)

 Trやバリコンなどあまり汎用性のない部品を使用していますので,参考程度に していただいたほうが良いと思います。特にVXOに使用したマイクロインダクタはアナログカラーTVの基板からの取外し品です。これも再現性の悪い原因のひとつです。
 終段2SC781はジャンク基板から取外したかなり古いTrです。Pc5W Ft350MHzですがコレクタが外の金属ケースに繋がっていて使いにくいTrです。2SC945と2SC1815以外はもう見かけません。部品はほとんどジャンク基板出身です。
 終段のコレクタ能率は私がいくらやっても40%弱です。パラスチック発振を起こすと(起こしやすいです)コレクタ能率は60数%に上がりますがTrは触れないほど高温になります。(hi)


(終段の写真)

 VXOの水晶は数年前ハムフェアで手に入れました。この水晶VXOの可変範囲が予想外に広く,安定に50KHz弱可変できます。なぜかわかりません。OSCキーイングが可能です。しかし負荷変動には弱いです。ローエッジでオフバンドするのでVCの可変量を抑えています。図中L1は可動コアですが,シールドの影響を大きく受けます。非磁性体でシールドすると良くないようです。コアの材質によると思いますが(コアの正体不明),VXOの御多分に漏れず再現性が悪いです。


(VXOの写真)

 QRP送信機は移動用として使いたいです。最初そのつもりだったのですが,終段タンクコイルが空芯のリンクコイルで寸法が大きくなり,乾電池収納スペースにVXOを組込み,出たとこ勝負で作った結果固定用サイズになりました。
 また 28MHzの出力が14MHzの-20dB位(非常にラフな測定ですが受信機でS3つ位)です。基本波の7MHzより強力でこのままでは設備基準違反!。出力にF特の急峻なローパスフィルタが必要ですがこれを作るのは本体より難しそうです。

      DE JG3EHD


世界のQRPer

QRPなDXの世界

JA1KGW 青山憲太郞
Kentaro Aoyama

HA8SP/QRP, Petiさんの5WとGPアンテナで2WAY QRP QSO


 平成24年(2012) 8月5日は、04:00~05:30JSTの早朝に14.060 MHzでEUがオープンしていて、YU7EA/QRPとHA8SP/QRPの2局と2WAY QRP QSOができましたが、HA8SP/QRP、Petiさんとは1st QSOでした。
 彼のリグは、TS680S, 5WとGPの組み合わせで、RSTはHIS 549、MY559を交換しました。HA8SP/QRP、PetiさんのQSLカードは汎用のカードに手書きしたカードですが、2012年2月13日に打ち上げたハンガリーの初の国産人工衛星、Masat-1の写真がカードに貼ってありましたが、このMasat-1衛星はブダペスト技術大学 の学生が開発・製造したサテライトです。


DX短信 9月分

JA1KGW 青山憲太郞

 太陽活動の気まぐれと言いましょうか?再びSSNが100を超えるような日が続きました。昨年の9,10および11月の秋頃、素晴らしいコンデションに恵まれたことは、過去の“RX短信”でも紹介をしました。最近、8月30日の118から略連日100を超える様な状態続いて居ます。NOAAが発表している予想では、2013年および2014年にサイクル24のピークが来ると予想していますが、本当でしょうか?

DX短信 10月分

JA1KGW 青山憲太郞

 先月まで、極めて悲観的な太陽黒点の推移について書きましたが、10月10日以降は一転してとうとう連日100を超すようになりました。特に、10月21日は207となり、いよいよ本格的なサイクル24の最盛期の到来という印象を受けましたが、今後どの様に推移するかは“神のみぞ知る”です。
 当局も連日、28MHzだけのQRPウインドウ周波数を中心にQRVをしています。早朝の5:30JSTごろからW、NAなど、夜のEUやAFなどにハイバンドが活況を呈しています。この原稿を書いた10月25日のSSNは102でした。 Hi


札幌QRPミーティング特別例会

VE3CGC林さんを囲んで

JA8IRQ 福島 誠

 10月30日、カナダ在住のVE3CGC林さん(会員)が日本旅行の途中、北海道に立ち寄られるということで札幌の仲間とアイボールミーティングを行いました。待ち合わせをしたホテルのロビーのテーブルには、(旧)コールサイン入りナンバープレートが。

(林さんの旧ナンバープレート)

 参加者はVE3CGC,VE3CGC-XYL,JA8IRQ,JA8DIQ,JA8YZ,JH8BTSの6名でした。
 大衆的な居酒屋に移動し、開きホッケ、ジャガイモ、刺身、それに國稀という北海道メニューでした。楽しく飲んで食べてしゃべって、最後には2合入りという徳利が16本空いてました。XYLさんも高知出身とのことで楽しく飲みつつお話しに参加されてました。
 林さんはカナダに行ってから無線の免許を取ったとのことで、北米ならではのアマチュア無線の楽しみについてお聞きしました。上級の免許を取ったらあとはどんな自作リグでも免許の範囲なら自己責任で電波を出して良いというのはちょっとうらやましく思いました。

(アイボール会の様子)
 奥様の武勇伝。ご主人の単身赴任中、物置にしまってあった「解体したアンテナタワー」を処分して、代わりに木造の住宅の屋根をアルミ張りにしたそうです。アンテナタワーを建てるとご近所からのクレームの元だそうで、「この屋根がアンテナになるでしょ」ということなんだそうです(もちろんアンテナになります)。土佐の女性「はちきん」の面目躍如たるものがあります。
 林さんの英語・日本語両対応のブログはこちらです。北米ハムの遊び方を日本語で読めるのでどうぞ。

 なお、札幌QRPミーティングのいつもの例会は12月2日(日曜)13時半から札幌市中央区民センターで行われます。参加希望の方はja8irq(アットマーク)jarl.comまでご連絡ください。


編集後記

JA8IRQ 福島誠

 ☆ 今月も、発行が翌月になってしまいました。また、先月号の編集時に私の不手際があり、青山OMの記事が掲載されませんでした。申し訳ありません。まだブログ会報に慣れてないため、いろいろと試行錯誤を重ねています。
 ☆ 11月には全国集会がありますので次号はその特集を予定しています。
 ☆ 私たちのクラブの2大テーマはQRP運用と自作だと思いますが、運用はもちろん、無線機の自作の面でもわがクラブは日本のアマチュア無線界で最大勢力であるらしいことがハムフェアに行ってわかりました。今後は自作についての記事を充実させたいと思っています。あなたの自慢の作品や自慢の失敗作(Hi)など、2~3枚の写真つきでまとめて投稿してください。
 ☆ また、「FT-817、私の使いかた」という記事も募集します。移動運用、固定QRP機としての使い方、周辺機器などあなたの工夫を教えてください。
 ☆ 投稿は編集部あてメール(qrpnewsアットマークjaqrp.net)でお願いします。
 ☆ 編集スタッフも募集中です。一緒に会報を作りましょう。

(2012年10月号終わり)