JARL QRPクラブ会報 2018年 4月30日発行 vol.61-1

投稿者: | 2018年4月30日






JARL QRPクラブ会報 2018年 4月30日発行 vol.61-01 The JARL QRP Club




JARL QRPクラブ会報 2018年 4月30日発行 vol.61-01

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JARL QRPクラブ会報 2018年 4月30日発行 vol.61-01


No. 2018年 4月号 目次 コールサイン 筆者
1 【運 用】島の春は別れの春の巻 JR3ELR 吉本 信之
(Nobuyuki Yoshimoto)
2 【製 作】ロッドアンテナ活用ロータリーダイポールの製作 JG1SMD 石川 英正
(Hidemasa Ishikawa)
3 【お知らせ】小笠原返還50周年に伴うJD1移動運用の予告 JE1ECF 斎藤 毅
(Tsuyoshi Saito)
4 【お知らせ】QRPクラブからお知らせ JE1ECF 斎藤 毅
(Tsuyoshi Saito)
5 【編集後記&近況報告】  JR7SOX 菊池 弘二
(Kohji Kikuchi)
6 【編集後記&近況報告】  JA8IRQ 福島 誠
(Makoto Fukushima)


【運 用】 島の春は別れの春の巻

#0033 JR3ELR 吉本 信之

 昨年嵐で断念したJCG46006B三島村渡海に再挑戦しました。昨年8J6VLP/6を含め2回しかJクラスタに運用記録が残らない、IOTA番号AS-32が付く島々とは如何に大変なのかを身をもって知る結果となりました。琉球諸島では新城島級の難易度とリスクです。(図 1)


竹島


【図 1】

1.島のインフラ

 朝9時30分の出航時点で波高4m、接岸港が島の北側にある竹島と黒島大里港は抜港の可能性有の条件付き出航です。そのうえ年度末駆け込み公共工事の影響で上陸目標としていた硫黄島と黒島は宿の確保ができず、抜港の可能性有の竹島だけで宿が確保できています。
 荒波に11時間耐えた挙句に鹿児島港に舞い戻ることも辞さずと覚悟し、欠航三日分の生活物資積んだ船は気合で島に着岸すると固く信じた航行3時間、竹島港の波高は2m迄下がり何とか着岸し上陸できました。(写真2)

フェリーみしま

【写真2】フェリーみしま

 この島には物を売る店がありません。生活物資は全て鹿児島市内の店に注文し生鮮食品は保冷剤を入れた大型保冷袋に入れて運ばれてきます。港で真っ先に降ろしたA重油で発電している島の電気は、島の高台にある簡易水道の給水タンクへ三か所の水源から揚水し生命線になっています。
 三島村3島の携帯電話はdocomoが3Gのみ可、AUは全滅、softbankは3G/LTE可です。集落内に届く範囲のipstar衛星のインターネット設備もありましたが台風時はリンクが切れますし、国策の海底光ファイバーが陸揚げされているので今では出番は無さそうです。
 電気は各島毎に発電し海底送電と島間の送水はありません。特に硫黄島と黒島間は鬼界カルデラの斜面にあたり急激に水深が下がりカルデラの山体に遮られた黒潮が蛇行し潮流が乱れています。ここの区間で船体が11時間の航海中一番強く三角波とぶつかり衝撃音を発していました。

 島内の移動には村が設置した1k円/日の電動自転車を利用しました。海底カルデラの外輪山の先端だけが海面に突き出た高低差のある島は、電動自転車のレンジをハイパワーにしたまま転がして何とか上り下りできるほど急峻です。

2.生態系

 表土が薄い火山島です。比較的堆積物が積もった谷間には高木のガジュマルが傾くものの倒れずに成育していました。しかし島のほぼ全体は表土が薄く琉球竹の単一植生です。南隣の十島村や奄美群島に多い蘇鉄や青パパイアは生えていません。青パパイアは南の離島では貴重な地産地消型の生鮮野菜です。これが採れない島は食生活が相当厳しいことになります。
 マムシ、猪、鹿、猿はいませんが、港の湧水が染み出している場所では糠蚊の蚊柱が立っていました。集落内には去勢済みの野良猫が多数います。猫つながりで島の神社は狛猫です。(写真3)
 犬は屋内で小型犬を飼っており鳴き声は聞きませんでした。有人3島には繁殖牛がいます。煮沸しない湧き水は絶対に飲んではいけません。

狛猫

【写真3】狛猫
「後方矢印は祠(ほこら)と依代(よりしろ)だそうです。 
聖域の原型から今の形態まで廃棄されず残っていたとのことです。」(編注)

3.運用結果

(JIA46-104竹島)
 何時もと同じでアンテナは宿の窓から植栽の上に乗せて引き回した1.5mH40mLW+窓枠ラジアルです。1.9・3.5・10MHzはS9+のノイズでNGでした。ノイズ無しの7MHzは101局と交信しています。内QRPは何とJR6HK/QRP。呼ばれた瞬間、「あげっ!しにどぅまんぎたやっさ、HIDEたんめーOTのQRPやに!!」とどうちゅうむにー(標準語訳困難)していましたHI。
 「/6」を付けて交信していると何時しか頭の中は琉球の風モードです。(写真4)


竹島打電

【写真4】竹島打電

4.鬼界カルデラ

 竹島と硫黄島、昭和硫黄島は鬼界カルデラの外輪山、そして黒島も斜面で噴いた火山です。特に噴煙をあげ続けるA級活火山の硫黄島の迫力はギガW級リニアでした。とっさに浮かんだのは「こんな危ないところを世界中探し回っては地表から熱水溜のあたりを付けてブスリ!特製二重ケーソンの注射針を打ち込み採血よろしく加圧熱水をしこたま抜き取ってニンマリしつつ飄々と電波も出してくるクラブの某御方の姿」。視野に入りきらない迫力で迫る硫黄島を前に、その度胸につくづく感服いたしました。
 中越地震のさ中に小千谷の刈田の真ん中で打電して以来震度6程度に身をおいてもビビらず打電できますが、活火山の島嶼打電は桁違いの覚悟がいりました。新燃岳、桜島、硫黄島と三山の噴煙を見た今回の渡海打電で願ったことは、「鈍く腹に響く空振如きでビビらず。あぐらをかいた尾てい骨から骨伝導してくる地鳴りでも平然と打電のパドルを動かす。硫黄臭が目と鼻に沁みてもログ書き込みの手を止めない。三角波の衝撃音響く船内で平然と弁当を食う。」そんな仙人に私はなりたいでした。(写真5,6,7,8,9)


竹島

【写真5】竹島


昭和硫黄島

【写真6】昭和硫黄島


硫黄島

【写真7】硫黄島


黒島

【写真8】黒島


茶色の弁当

【写真9】茶色の弁当

5. 3月24日は島の別れの日

 この日、朝から島の小中学校は終業式でした。そして午後に島を出ていく船には一人で島を出ていく小・中学生が3島で6人。親は付き添いません。島の見送りは里親と先生たち。8時間の船旅を経て夜8時過ぎに着いた鹿児島港に親が待っていたのは3人。後の3人は満開になった夜桜の並木を一人で町へ歩いて消えていきました。今まで多くの離島で小中学校の里親制度の実情を目の当たりにしてきました。そしてまた一つ、別れと旅立ちの場に立ち会ってしまいました。(写真10)

片泊港出港

【写真10】片泊港出港

6.間一髪

 帰宅を一日早めた25日機上から見た新燃岳は噴煙をあげていましたが、翌26日午前に火砕流を伴う再噴火をしました。この噴火が一日早ければ風向き次第で鹿児島空港閉鎖になってまた足止めでした。
 未来が残っている方々は、ゆめゆめ活火山地帯の活火山島渡海などという補陀落渡海大作戦をくわだてないこと。
 またやーさい(ハム語訳:CU AGN)

【編集部から】

 毎号の離島探検レポートありがとうございます。そんな過酷なところにも人が住んでいるのですね。さらに無線だけをやりにいく物好きもいるという。
 なお、文中、火山を回って・・・という内輪ネタが出てきますが、たぶん、地熱といえばこの方のことかと。(JA8IRQ)


【製 作】 ロッドアンテナ活用ロータリーダイポールの製作

#0988 JG1SMD 石川 英正

 毎年ハムフェアに行くと、ついつい長いロッドアンテナを買ってしまいます。
 長くなれば自重もあるもので、軽い三脚の上にV型に立てようとしても少しの風でバランスを崩し、うまくありません。
 そのようなわけで、買ったのはいいもののなんとなく持て余していたのですが、勿体ないと家の中にあるジャンクを活用してロータリーダイポールを作ってみました。部品は、

  • 250㎝のロッドアンテナ2本
  • 塩ビ管の切れ端とキャップ2個
  • U字ボルトと蝶ネジ
  • ロッドアンテナを固定するネジ(頭は六角レンチで締めるもの)
  • アルミ板(穴が開いていたジャンク)
  • 使っていない「1:1バラン」
  • ACコードの切れ端
  • 端子4個

 結局、全て我が家の中から見つかりました。
 アルミ板は薄くても強度を得るために端が少し折り曲げられているものです。ロッドアンテナの根元は内側にネジが切ってありましたので、これに合うネジで固定します。断面図は下記のようになり、これを2セット作ります。根元を塩ビパイプで覆うのはこの部分に外側からU字ボルトを掛けて固定するためであり、絶縁が目的です。


断面図

【図1】 断面図


組立後写真

【写真1】 組立後写真

 組立て後の写真はこのようになっています。エレメントを全て伸長したところ、28-29MHz帯全体でSWRが1.5以下になりました。これを2エレHB9CV(50MHz)の上に取付けます。エレメントを伸ばしたらこんな感じになりました。【実装状態】


実装状態

【写真2】 実装状態

ブタの尻尾

【写真3】 ブタの尻尾

 重くないのでそれほど風に振られる感じはしません。なお建物との距離はSWRに影響がありますので支柱は高く伸ばします。
 このロッド長では28-29MHz帯にしか対応していませんが、そこはロッドアンテナのよいところで、先端に「ブタの尻尾」のようなワイヤを取り付けてやれば21MHz帯、縮めれば50MHz帯にも対応ができます。更に尻尾を長くすれば18MHz帯にも出られますが、垂れ下がるワイヤが長くなりますので電気的にも、見た目もよくありません。24/28/50MHz対応のロータリーダイポールというのがちょうどよいところでしょう。

 ご近所の目がありますので使わない時には縮めてひっそり、アパマンハムのアンテナです。

【編集部から】

 石川さん、FBなアンテナの投稿ありがとうございます。塩ビパイプでロッドアンテナを固定するのが面白いですね。移動用にも使えそうです。(JA8IRQ)


【お知らせ】小笠原返還50周年に伴うJD1移動運用の予告

#696 JE1ECF 斎藤 毅

 2006年に行ったクラブ50周年に伴うQRP特別記念局のJD1ペディションから12年が経過しました。2018年は小笠原返還50周年の節目の年にあたります。

 今回の移動は通算14日目となり、これまでの運用実績は父島、母島、南島、行き帰りの「おがさわら丸」船上や「ははじま丸」からのQRVと色々と試みてきました。2016年には「おがさわら丸」の世代交代?イベントとして実施された西之島クルーズに参加し、西之島上陸はできないものの西之島近海での「おがさわら丸」からQRVし、普段、電波の発射のない場所からの運用を行いました。

 今回は小笠原返還50周年に際し、沖ノ鳥島クルーズが実施されるため、これを目的としてのJD1移動を計画しました。

 今回は同行者を募りましたがJR1QJO矢部さんが名乗りをあげ、同行確定。その他もう1名が調整中です。また、同一航海で小笠原常連のJD1BMG初見さんの別途5人グループが父島、母島からデジタルモード含むQRVを予定しています。





小笠原諸島・沖の鳥島クルーズ日程

月/日 JE1ECF 斎藤、JQ1ZYG ※
(沖ノ鳥島クルーズ参加)
JR1QJO 矢部さん、JQ1ZYG ※
(父島散策)
参考:JD1BMG初見さんほか
(5人グループの別動隊)※注
6/7(木) 竹芝出航 竹芝出航 竹芝出航
6/8(金) 二見港到着・沖の鳥島クルーズ 二見港到着・父島宿泊 二見港到着・父島宿泊
6/9(土) 沖の鳥島クルーズ 父島宿泊 父島宿泊
6/10(日) 父島宿泊 父島宿泊 母島宿泊
6/11(月) 父島宿泊 父島宿泊 父島宿泊
6/12(火) 二見港出航 二見港出航 二見港出航
6/13(水) 竹芝到着 竹芝到着 竹芝到着

 ※注 JD1BMGのみ7/2まで滞在予定。
 ※編注 JQ1ZYGはJARL QRP CLUBの所蔵リグによるクラブ局です。

おがさわら丸
【図1】おがさわら丸50周年エンブレム

地図
【図2】現地のシャック 外見

地図
【図3】現地のシャック 内部






船上からの運用予定

往路 6/7(木) 13:00~19:00
6/8(金) 6:00~10:00
沖ノ鳥島クルーズ
6/8(金) 16:30~19:00
6/9(土) 6:00~19:00 (途中、講演会や島見物でQRX)
6/10(日) 6:00~12:00
復路
6/12(火) 16:30~19:00
6/13(水) 6:00~13:00


◆ 船上での運用は許可を取って運用を行います。前回の運用許可願、運用許可を掲載します。

 昨年の(運用許可願および運用許可書)。

沖ノ鳥島クルーズ

 沖ノ鳥島クルーズは返還50周年記念行事として小笠原島民向けに役場が企画したものですが一般向けにツアー会社が参加枠を設定しました。5年前の秋にも同様の企画がありましたがこのときは天候の関係で中止されました。沖ノ鳥島は北緯20度25分、東経136度04分に位置し、東京から約1,700km、小笠原諸島父島からでも約900km離れた日本最南端の島です。

地図
【図4】小笠原諸島と沖ノ鳥島の位置


【QRPクラブからのお知らせ】 ハムフェア2018への出展

#0696 JE1ECF 斎藤 毅

 クラブでは8月25日(土)、26日(日)、東京ビックサイトで開催されるハムフェア2018へ出展いたします。今年は会場内でJQ1ZYGの運用(50MHz SSB等)を予定しております。(CWでOPしたい方は自身のキーを持参してください。)

 展示する自作品(解説A4版2枚程度を含む)、前日設営手伝い、当日の手伝いを募集します。
 締切は8月3日(金)です。JE1ECF斎藤までお願いします。

 


編集後記&近況報告

#1099 JR7SOX 菊池 弘二

◆今年も国際QRPデー特別記念局の運用が開始されたようです。
私のところではまだどの局も聞こえてこないのですが、コンディションがもっと上がることを期待したいです。


編集後記&近況報告

#0678 JA8IRQ 福島 誠

 公開が5月になってしまいましたが、新年度最初の会報をお届けします。連休中に移動運用やコンテストなどで楽しまれたるかたも多いのではないでしょうか。

 今月のミニ工作はダイナミックマイクを通常のオーディオアンプにつけて拡声器にするためのマイクアンプです。自作というには簡単なものですが、リハビリのつもりで時々はんだごてを温めています。

 私の勤務先はイマドキの本屋だからたくさんのイベントをやっていろいろなお客さんに店に来てもらおうとしている。お店にはステージ用のPA装置のほか、ポータブルのPAセットが1台あるのだが、土日はイベントが重なって使えないこともある。

 よく考えたら、自分がサルサダンスの練習会で使っているPAセット(中国製Lepyの20W+20WデジタルアンプとBOSEの101スピーカー)だって拡声器になるんじゃないか、と思って実験してみた。マイクはカラオケ用のAT-VD3というのがハードオフに1000円以下で売ってたのを使うことにした。

アンプ
【図1】中国製デジタルアンプlepyとBOSEスピーカー

 ダイナミックマイクをそのまま接続してもゲインがぜんぜん足りないので、当クラブ前会長の大久保さんのアマチュア無線自作電子回路(現在は品切絶版)にあった2SC1815の1石マイクアンプを作ってみることにした。

 この回路はもともとFCZ研究所の寺子屋キット#094の「1石マイクアンプ」で今でも同等品がキャリブレーションで電子工作パーツセットとして有償頒布されているものだ。

1石マイクアンプ
【図1】同書から1石マイクアンプの回路図

 押入れの部品の発掘に時間がかかったが、200Ωの半固定VR以外の部品は全部手持ちがあった(半固定VRは省略)。組み立て自体は30分ほどで完成。組み込み用のボタン電池があったのでそれを使った。マイク側はモノラルジャックで出力はステレオジャックにしている。
 いざ使うときに電池が消耗しているというのが「いかにも自分がやりそうなこと」なので、スイッチと電源表示LEDもつけておいた。ケースはいつも使う4個100円の密閉容器だ。

1石マイクアンプ
【図2】穴あき基板に組んでケースに入れたところ

 マイクとアンプを接続して音量をあげると、それなりに大きな声になる。月イチでやっている「歴史漫談」というイベントで使ってみたところ、本体アンプのVRを3時くらいまで回せば拡声器として使えた。アンプのVRは余裕をもって12時くらいまでで使いたいところだからキャリブレーションの説明にもあるように、ライン入力に使うにはゲインがちょっと足りないようだ。

オーディオアンプと拡声器アンプは別物と思っていたが、簡単な工作でとりあえずマイクを接続することができることがわかったのが今回の実験の成果である。

1石マイクアンプ
【図3】マイクを接続したところ

◆5月号の原稿を募集中です。あなたの実験、製作、運用レポート、小ネタなどを5月15日ころまでに編集部あてお送りください。パソコンが苦手な方は福島あて直接の郵送でもかまいません。(住所はMLや紙版会報などで確認してください。)宛先は qrpnews@jaqrp.net (@は半角@に)です。