JARL QRPクラブ会報 2017年5月31日発行 vol.60-2

投稿者: | 2017年5月31日







JARL QRPクラブ会報 2017年5月31日発行 vol.60-2 The JARL QRP Club

JARL QRPクラブ会報 2017年5月31日発行 vol.60-2

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JARL QRPクラブ会報 2017年5月31日発行 vol.60-2


No. 2017年5月号 目次 コールサイン 筆者
1 【運用】JR3ELR 天壱號作戦検証の巻 JR3ELR/1 吉本 信之
(Nobuyuki Yoshimoto)
2 【製作】430MHz FM トランシーバの製作 JN3DMJ 松本 貢一
(Koichi Matsumoto)
3 【製作】FT-817ND ノブ付きつまみの製作 JA1XFA 田島 建久
( Michitaka Tazima)
4 【改造】中古HFトランシーバーを通信型受信機へ JH2HTQ 中井 保三
(Yasuzo Nakai)
5 【コンテスト】QRPスプリントコンテストに参加して JK1LSE 本田 進
(Susumu Honda)
6 【アワード】The Erecraft Century Club Award JA4MRL 北尾政司
(Masashi Kitao)
7 【お知らせ】 QRPクラブからお知らせ JA8IRQ 福島 誠
(Makoto Fukushima)
8 【編集後記】 JA8IRQ 福島 誠
(Makoto Fukushima)


【運用】JR3ELR 天壱號作戦検証の巻

#33 JR3ELR/1 吉本 信之

4月6日に鹿児島に飛び翌7日を選んで鹿屋市串良の地下に残る通信壕を訪れて72年年前の4月7日を少し検証してきました。

ここは民家の地下に当時のまま保存されており、二か所の階段から壕に出入りします。

【図1】

ここの通信壕は照明が付いており、懐中電灯の持参は不要です。

珍しくコウモリのねぐらになっておらず糞の堆積物も無く悪臭もありません。

【図2】

【地の利を使った排水方法】

出発の前から続いた雨でしたが、出入り口に吹き付けた雨は地面に吸い込まれていき溜まりません。

地下壕内も漏水など水の侵入が無く、天井壁面そして床面も乾いていました。
換気塔から降り込んだ雨も床の端に掘られた傾斜溝の先で地中に吸わせる構造で溜まっていませんでした。


【図3】


【図4】


【図5】

今まで見てきた通信壕は山の斜面を掘削して造っていました。
そして通路の端に角を立てて掘った傾斜排水路の先を山の表面に突き出して壕内の水を自然排水させいました。

しかしそれくらいのことでは水は抜けず、雨の日の壕内は湿度100%でメガネが曇ります。
ここの地下壕は掘り下げてコンクリートを打ち埋め戻しただけの単純構造ですが、乾燥しており撮影に使ったデジカメのレンズは曇りません。ここは低水位のシラス台地に助けられています。

【換気兼空中線引き込み塔】

通信壕から地上に突き出た四角形の換気塔は7本あり、内4本を4台の九二式受信機用空中線に、1本を送信機用にあてがっていた配置に見えます。

誰も居ない通信室で、一人静かに72年前、この場で繰り広げられた出来事を想ってみました。帰投は一割に届くかどうかの複座雷撃機を見送り2時間が過ぎるころ、真空管式水晶発信器から発したヒューヒューふらつく信号音が聞こえてくる。

対空砲火をかわし海面すれすれまで下げた機体の信号は雑音のうねりにのみこまれる。帰投かなわぬ被弾機が打つ終(つい)の文字は短い。

番機識別符号連打に続いて入感した「クタクタ」、そして一息おいて連続音になり、途切れる。そんな信号を聞き取るは稀のこと。文字の途中で信号は止まり、そのあとは無念を叫ぶ雑音が受話器で吠え続ける。その終の一文字一文字を4月6日、12日、16日、28日~7月22日と伝令用紙に書き綴っていった四人の後姿が受信機を並べた壁の前に浮かんできました。

【図6】

【最終打電のために】

通信壕の中で毎回やっているAMラジオの受信状態確認をしてみました。
雨を含んだ覆土の下ですが、琉球石灰岩の中に掘った豊見城海軍通信壕内のときと同じで普通にAM放送が受信できました。
逆に陸軍系の岩山壕、信州松代大本営壕群の一つ、象山通信壕内でやった実験では全くの電波暗室状態でした。
四半世紀前の聞き取り調査で、海軍は地上展開中の空中線が壊滅した後のために本土向けに大圏方位に掘る。
この直線壕内に展開したワイヤーを送信機につないで「さくら」を打つとお聞きしています。
最果ての旅先やハムフェアでお会いして聞き取ってきた方々は一様に断片を一言二言後世に伝えただけでした。

そして、残りを後生(ぐそう)にもっていきました。
何を持って行ってしまったのかな??
今回、その月日のその場所に押し掛けた仮想現実インタビューに苦笑しながら少しだけ明かしてくれた気がします。

【南九州堪能】

雨にたたられた四日間の旅でしたが、この他にも内之浦の追尾アンテナ、イオノグラムでお世話になる山川のアンテナ、油津の魚(ぎょ)うどん・飫肥の玉子焼き&飫肥天、薩摩川内の初ガツオ・黒鯛・初剣先烏賊などなど南九州を堪能して帰路につきました。


【図7】



【図8】


【図9】

【編集部から】

 吉本さんの通信遺跡の巡礼の旅ですね。吉本さんのおかげでいろいろな戦跡があったことを知りました。(JA8IRQ)


【製作】430MHz FM トランシーバの製作

#650 JN3DMJ 松本 貢一

1.はじめに

みなさまは、どのバンドからアマチュア無線を始められたのでしょうか? 7MHz? 50MHz? 私は 430MHz で、最初のリグはFMハンディー機C701です(1998年)。初めてのQSOは今でも忘れられません。

さて、今までに製作した自作機のモードはCWが多いですし、QSOもCWが多いですが、初QSOのバンド・モードである430MHz FM の自作をやってみたい、と以前から思っていました。具体的に行動を開始してから14年、ようやく 430MHz FM トランシーバが完成しました。周波数は432.00~433.98 MHz、出力は70mW程度のQRPpです。ケースはタカチ電機工業のYM-300なので、W300×H50×D200(mm)の大きさです。


【写真1】430MHz FM トランシーバ 外観


【写真2】430MHz FM トランシーバ 内部(左上と右上の基板には上部にもシールド板がつく)

2.これまでの経緯と構成

具体的に行動を開始したのは2002年8月で、当時無線機自作歴2年の私としては、難しそうなので、方針として、できるだけキットを利用すること、4個のケースに分割して、部分的にでも成功させることとしました。

そこで、アイテック電子研究所(2015/12/29業務終了)のRX-2/TX-1「144MHz FM PLLトランシーバキット」、福島無線通信機のUD-72「430・144 MHz可逆性アップダウンバータキット」(トランスバータ)、MA-430「小電力200mW (max) リニアアンプキット」等を購入し、製作を開始しました。RX-2とTX-1でケース2個なのですが、RX-2のケースと同一仕様のブランクケースも2個購入し、UD-72と周辺回路用にケース1個、MA-430と周辺回路用にケース1個を使用することにしました。
なお、現在でも、RX-2の主要ユニットであるMC-63とMC-68はキャリブレーション(数量&期間限定商品)にて、UD-72とMA-430は福島無線通信機にて販売されているようです。
RX-2/TX-1は完成しましたが、当時UD-72がうまく動作せず、2003年9月に144MHzトランシーバとして申請しました。

それから13年、製作経験や測定器も少しは増え、2016年11月に再チャレンジすることにしました。


【写真3】製作の過程で登場する4ケースバージョン(上2つは2003年に製作したアイテック電子の144MHz FM トランシーバキット(改)。下2つは今回製作したトランスバータ部と430MHzアンプ部)

3.製作概要

図1に最終的な概略ブロック図を示します。


【図1】430MHz FM トランシーバ 概略ブロック図(なるべく基板配置に合わせて作図した)

UD-72のオリジナルの局発は32×3×3=288(MHz)で、145+288=433(MHz)となるのですが、例えば、145×3=435(MHz)や288×2-145=431(MHz)が433(MHz)に接近しているため、144MHzと430MHzの2バンドにするのはあきらめ、15.5MHzの水晶振動子を購入してトランスバータの局発を15.5×2×3×3=279(MHz)に変更し、周波数の微調整ができるようVXOとしました。これに合わせて、144.00~145.99MHzの親機(RX-2/TX-1)の周波数を153.00~154.98 MHzに変更し432.00~433.98 MHzを確保しました。

ようやく433MHzの信号が合成され、ケース4個が機能し始めましたが、使いやすく、長く使えることも必要と考え、1つのケースにまとめることにしました(写真1、写真2参照)。1つのケースに移し替えた後も、433MHz付近のスプリアスや、異常発振を抑え、安定して目標とする50mW以上の出力と必要な受信感度を得るため、UD-72の局発、および、MA-430のバイアス回路中心に改造を加え、さらに送信は1段、受信は3段アンプを増設しました。左右の端のシールド板は実験の結果追加したものです。最終的にスプリアスは法令を十分クリアしました。


【写真4】最も苦労した154←→433MHzトランスバータ部


【写真5】MA-430(改)小電力アンプ

4.周波数設定・表示

RX-2/TX-1の周波数設定はサミールスイッチなのですが、ケース変更に伴い、ロータリーエンコーダで周波数設定できるようにし、5桁の7セグメントLEDで表示することにしました。ただし、PICやArduinoで新規にプログラミングするところまでするつもりはなく、秋月電子通商のPICを使ったキットの使用程度を想定しました。秋月のキットは0~99の100通りのBCD出力と2桁の7セグメントLED表示ができるのでFBなのですが、430MHz FM は 20kHzステップであり、0~198で2ステップの100通りの方が使いやすいので、結局汎用ロジックICで組むことにしました。ロータリーエンコーダに加えて、赤と緑のボタンで連続UP/DOWNできるようにしたので、ICは13個必要になりました。


【写真6】周波数設定・表示回路(この基板以外に、7セグメントLEDの裏にもIC2個を実装している)

5.おわりに

変更手続きが完了し、まずはローカル1局とQSOできました。
このトランシーバのもう少し詳細な内容を弊ホームページ「JN3DMJ の QRP と自作のページ」に掲載する予定ですので、よろしければご覧ください。

みなさまも、初QSOのバンド・モードの無線機の製作をご検討されてみてはいかがでしょうか。

以上

編集部から

 松本さん、いつも原稿ありがとうございます。FMトランシーバの自作記事は少ないのですが、市販品を上手に組み合わせての製作が見事だと思います。(JA8IRQ)


FT-817 私の使い方

【製作】 FT-817ND ノブ付きつまみの製作

#1078 JA1XFA 田島 建久

田島@入間市、JA1XFAです。
FT-817を使って7MHzCWに出ていますが、同調つまみが使い難いので、ジャンク箱の部品で“ノブ付きつまみ”を作りましたので、投稿します。
自作好きな局の参考になれば幸いです。

最初は某オプションメーカの市販品を購入しようか、と思ったのですが、値段でびっくり。
自作することにしました。
——–

【写真1】 加工したつまみと未加工の物。アルミ無垢材。ジャンク箱出身。
つまみの外径は26mm以上だと取り付け出来ませんので注意が必要です。
当つまみは外径26mm、厚さ12mmです。

ノブはつまみから直角に立たないとスムーズに回らないため、取り付けねじ穴を開けるには、スキルが必要です。
私はローカルのOMにお願いしてボール盤での穴あけとタップたてをやって頂きました。

つまみに貫通穴を開けても良いと思いますが、後述のバランス調整の手間が増えると思います。
大昔?QS-500というリグの主つまみにもノブを付けた事がありますが、この時はつまみに皿ねじを接着してみましたが、使っているうちに剥がれてしまって弱りました。
つまみの直径に合わせて金属板などで下地?を作って、それにノブを付け、下地板をつまみに貼るという方法なら、丈夫でしょうが・・・


【写真2】 ノブの部品です。
3mmのビスと外形6mm、長さ10mmほどのスペーサ(カラー)を使いました。


【写真3】 ノブ部分の組み立て。ナットはスペーサがスムーズに回るようにするためと、軸のビスのつまみからの緩み止めを兼ねています。


【写真4】 組み立てて塗装しました。


【写真5】 バランス調整のためにつまみ裏側を削りました。
おぉできたぞ、と仮に817に付けてみてビックリ!
ロータリーエンコーダのシャフトが軽く回りすぎて、ノブ側が僅かに重いため、こちらが常に下側に回ってしまいます。つまり“同調ができない(; ;)”

つまみと本体の間に適当な緩衝材を挟んでみたのですが、今度は軽く回りません(当たり前か?)。

結局つまみ自身の重量バランスをとる以外に解決できないようです。
ネットで資料を漁ると「反対側にバランス用の錘を付けた」というのがありましたが、格好が気に入らなかったため、つまみ自身を削って平衡を取るようにしました。

方法は画像の通りです。ノブ側をドリルで削って軽くしたのですが、これだけでは足りなかったため、反対側(つまみ取り付けビスのある側)に少し穴を掘って半田を流し込み調整しました。
半田は結構重いようで、それなりにバランスしました。アルミ無垢材のつまみなので半田は着きませんが、フラックスで接着しているので、その上から瞬間接着剤を流して固定しました。

バランスの確認は、つまみに仮シャフトを付けて適当な台に乗せ、ノブがどの位置でもつまみが転がらないようにします。仮シャフトは、私はUHFアンテナ制作時に余った外径6mmの銅パイプがあったので使いましたが、ドリルの刃などでも大丈夫でしょう。

余談ですが、バランス調整のためドリルでガリガリやったら、折角の塗装が傷だらけになり、再塗装するハメになりました。4と5の順は入れ替えた方が無難です。hi!


【写真6】 実装前のつまみ
スペーサのみ(外形は6mm)では、「私の指で摘むには」まだ細いので、ジャンク同軸(5C-2V)の外皮を被せました。外径が約8mmになり手触りも柔らかくなりました。


【写真7】 FT-817へ取り付けた画像です。

ノブ付きのダイヤルは、とても使い易いです。
作ってから思ったのですが、オリジナルつまみが「私には」使い難いと感じたのは、形が若干砲弾型(手前が少し細くなっている)ためでは?と感じます。素直な円筒型のつまみなら、「私には」もっと使い易く思えます。

でも、某オプションメーカー製のつまみ、なんと約5K円もします。
構造は、多分これと同様でしょう。この値段では、とても買う気が起きません。

田島建久 ja1xfa@jarl.com

【編集部から】

最近の小さいリグは操作が大変で、つまみを付け替えている人も多いようですが田島さんはジャンク品を上手に加工されてますね。一工夫することで愛着もわくのではないでしょうか(JA8IRQ)


【改造】中古HFトランシーバーを通信型受信機へ

#1014 JH2HTQ 中井 保三

改造箇所

1. IC-723S(10W)のMIC端子を改造し、PTT回路を、TXの 「セミ・ブレークイン回路」で動作しているリレーの「a」接点回路に、つなぎ替える。

2. RF・PWRツマミを「ゼロ」にする。

3. KEYジャックに何も、つながない!、、、こと。

RFゲインのツマミと、内蔵DSPが無いが、、、デジタル式・通信型受信機として、機能してます。

ATTスイッチと、外付けのDSPで、何とかデジタル式・通信型受信機として使えています。

OAMのパイルの中でも、デジタル式・通信型受信機ならば、SDPを絞れば、、、
キー局が受信してる局の周波数を毎回、直読み 出来てますので、、、
QRPp-TXのデジタルVFOの数値を毎回、正確に変更しさえすれば、、、
常に、、、キー局の狭いフィルターのド真ん中に500mWの信号を、ぶち込む事が出来てます。

JH2HTQ/QRP と長いコールを14wpmで打てば、QRPだけが混信の中に残るので、、、
ベテランのキー局になると、超弱い信号には、かなり敏感に反応する高いスキルを持っているので、、、
次の瞬間、、、 QRP ? AGN 、、、となり、、、安易にパイルを打ち抜きます。(笑)

外付けのDSPの画像も添付します。

de JH2HTQ Yasu 73

編集部から

中井さん、QRP DXの秘伝ありがとうございます。中井さんはミズホのQP-7を実戦に使っている方で、2014年7月号の会報にMIZUHO QP-7+VFO・TRIO JR-599 ラインの組み合わせを紹介されました。この写真がイラストになって『QRP入門ハンドブック』の表紙を飾っております。その後、送信機のVFOもデジタル化されたようですね。1Wでパイルアップに打ち勝つというのは素晴らしい!(JA8IRQ)

QRPスプリントコンテストに参加して

#1045 JK1LSE 本田 進

 

 ゴールデンウィーク(5月7日)に開催された、QRP Sprintコンテスト(主催:きゅうあ~るぴぃ~コミュニティ)に参加しました。このコンテストは、ハイバンドが前半の12時から、ローバンドは16時から開始され、種目はマルチバンドまたはシングルバンドとなっています。シングルバンドはいくつでもエントリーすることができます。特徴として、QRPp(0.5W以下)の部門があることです。これまでの経験から、5Wは「かなり飛ぶ」という印象ですが、0.5Wは手ごわいということを感じています。今回はこのQRPp部門の7MHzバンドにCWで参加することにしました。

 まず、7MHz帯のコンディション把握です。先週開催されたALL JAコンテストの経験から、夕方から夜半にかけては、そこそこ国内が開けていました。ただし、コンディションは決して良くなく、Big-Openではありませんでした。こうなると、パワーの差が出ます。何せQRPの5W組は10dBもハイパワー?です。なので、競って呼んでも勝ち目はありません。また、今回はもちろんCWでの参戦です。残念ながらPhoneに出ることができる無線機を持っていなかったので仕方ありませんが、QRPpのPhoneはさらに交信が難しいでしょう。今回は、どこまでできるか、楽しみです。

 さて、いよいよコンテストの開始です。いつもなら、場所取り(周波数確保)して、Runから始めますが、こちらは弱小組、おとなしくS&P(サーチして呼びに回る)で開始しました。Runしている局はQRP(5W)の局ばかりですが、結構安定して入感しています。これならば、競わなければ0.5Wでも届きそうです。

 いつものコンテストとの違いは、呼ぶ時もコールサインを2度送信するようにしました。相手から聞き返されるより効率的と考えたからです。同様に、コンテストナンバーの送信も2回行いました。ナンバーを聞き返された時は、ナンバーをフルで4~5回連呼します。部分的に打つよりも同じ内容を繰り返します。受信する側は同じ内容の繰り返しの方がパターン認識で前後関係から判別できることがあるので、同じ内容をひたすら繰り返します。本当に弱い信号だとゴチャゴチャ打たれてもよくわかりません。

 CWの送信速度ですが、QRPだからといって特に遅くする必要はありません。通常と同じか、むしろ早くします。QSBの谷間で瞬間的に信号が浮かび上がり受信できるケースがあるからです。同じ内容を繰り返して送信し受信してもらうチャンスを増やします。速度が遅いと、部分的には良く受信できるのですが、コールサイン全体やナンバーが取れないケースが多いのです。

 
一通り呼びに回ってみると、ある程度強力に入感している局からは応答があることがわかります。弱い局やパイルになっている局からは応答が無いので、早々に諦めることが肝心です。しばらくすると、自分の飛び具合がわかるようになります。これを基準に呼びまわると効率的です。弱い局の場合はコンディションが上がって強くなるチャンスを待ちます。

 一通りS&Pを行うと新しく呼ぶ局がいなくなります。ここで、QRPp(0.5W)ながら、Runを始めます。できるだけ下のバンドエッジ近い場所が有利なのですが、ここは強力な局が並んでいて入れそうにありません。結局、20数KHzあたりに隙間を見つけてRunを開始しました。最初は中々見つけてもらえず、呼んでもらえませんでしたが、それでも続けるとぼちぼちと呼んでもらえるようになりました。新しい局を増やすには、Runが欠かせません。

 
【図1】上段が自作CWトランシーバー

 今回参加した設備は、自作のCWトランシーバーを使用しました。このトランシーバーは終段にE級増幅器を使用しており、0.5Wから10Wまで連続可変が可能で、今回は一番絞って0.5Wに設定しました。受信部はシングルスーパー構成で1KHzのIFフィルターが搭載されています。通常の交信であれば、1KHzのフィルターでも十分ですが、以前の経験からコンテストとなるとかなり厳しく250Hz程度のフィルターがほしくなります。20数年前にHAM Jorunalに掲載された記事を製作したAFフィルターを入れて使うことにしました。随分と長い間使用していなかったので接触不良など整備して使用できるようにしました。今回はこれを使用して正解でした。帯域も3段階に調整できるので、混信で苦労することはありませんでした。


【図2】90年代に製作したAFフィルターの外観


【図3】90年代に製作したAFフィルターの内部

 

 アンテナは、より高く、より大きくが理想ですが、実際には制限があるので、できる範囲で「高く」「大きい」アンテナを使います。今回は昨秋上げたリニアローディングの短縮ダイポールアンテナを使用しました。これも以前使用していたグランドプレーンアンテナよりも、偏波面の関係か、打上角の違いか、国内の交信には短縮ダイポールの方が有利でした。


【図4】

上が7MHzのリニアローディング短縮ダイポールアンテナ

 21時の終了まで、夕食で抜けた以外はほぼフルで参加することができました。最後の1時間はコンディションも変化してしまい、一部の局は聞こえて来ますが、全体的にはあまり聞こえてきません。Runを続けていましたがほとんどできませんでした。もう少し効率的なやり方があったかもしれません。反省点です。

また、近くがスキップし始めると沖縄のJR6HKさんのCQがよく聞こえ始めました。呼んでいる局はいないのですが、何度呼んでも拾ってもらえませんでした。残念です。QRPpのパワーの違いを味わいました。もう少しコンディションが上がらないと無理でした。それ以外でも、熊本の局が聞こえましたが、何度呼んでもダメでした。

結果は90QSO(2QSO重複を含む)、33マルチと交信することができました。交信した中には、当クラブの方も多くいて、終了後に集計してみたら9名の会員の方とQSOしていました。昨年のハムフェアー懇親会、60周年懇親会でお会いした方とも初めてお空で交信することができました。全交信の1割の方が当クラブの会員ということで、会員の方々のアクティブぶりがうかがえます。

 QRPのコンテストは最大5Wという制限の中で競う競技です。多くのコンテストにもQRP部門が設けられていますが、強力な局に挟まれることになるので、条件はさらに厳しくなります。これに比べてQRP専門のコンテストは、参加者が全員が同じ条件であり、他のコンテストとは大きく異なります。みんな同じ条件なので面白いです。また、QRPについてですが、5Wという電力はかなり良く飛びます。当然、コンディションにも大きく依存しますが、国内であれば問題なく飛んでいきます。ただ、パイルアップとか競うと中々勝つことができません。誰も呼んでいないか、タイミングよく呼ぶと拾ってもらえることがあります。

QRPp(0.5W)はさらに厳しく、条件がそろわないと交信が成立しません。普段だと気おくれして、呼ぶことも躊躇しがちですが、QRPコンテスト中であれば気おくれすることもなく呼ぶこともできます。まして、Runするなんて大それた?ことも平気でできます。今回も結果的にAJDも完成し、北海道から鹿児島まで交信することができました。これが、QRPコンテストの魅力です。

 11月には当クラブが主催するコンテストが開催されます。このコンテストも多くの方が参加し、手軽に多くのQRPの方とQSOできるチャンスです。市販のRigでもパワーを絞ることで簡単にQRPになります。是非、参加されてはいかがでしょうか、多くの会員の方にもお会いできると思います。

編集部から

春はQRPスプリントコンテスト、11月には私たちのクラブの主催するQRPコンテストがあります。ふだん、QROな方もパワーを絞って参戦しているようです。QRPの魅力に気づいてくれるとううれしいですね。(JA8IRQ)


【アワード】The Erecraft Century Club Award

#788  JA4MRL 北尾 政司

 珍しいアワードを手に入れたので紹介させて頂きます。
 これはお互いがエレクラフトのリグを使っての交信が有効で、その機器のシリアルナンバーを100個集めるというものです。

 QRPクラブメンバーの中にはエレクラフトのリグをお使いの方が沢山いらっしゃると思います。
 私は2007年始め頃K2を組み立てて運用を始めたのですが、暫くしてエレクラフトのサイトで上記のアワードがあることを知り密かに狙ってまして、コツコツと集め結局賞状を手に入れるまで10年かかりました。何人かのクラブメンバーには大変お世話になりました。

編集部から

これは珍しいアワードの取得おめでとうございます。自己申告ではなくシリアルナンバーを集めるというのがすごいですね。(JA8IRQ)


【報告】役員会からの報告

#678 JA8IRQ 福島 誠

4月から3年の任期となる新役員が選出されました。前号に続き、会計担当の自己紹介を掲載いたします。

#725 JR1QJO 矢部 伊知郎

遅ればせながら、自己紹介させて頂きます、今年度から会計を拝命頂いたJR1QJO/矢部と申します。

私がアマチュア無線に興味を持ったのは小学校の時、当時流行っていた電子工作キットがきっかけでした。ヒノデの2石ラジオキット、神田の科学教材社のOV2キットを作り電子工作にハマり、中一で従事者免許を取りました。高校受験のため開局が延期するも、高校入学と共に開局し、青春時代はアマチュア無線一色となりローカル仲間JE1RYH/尾崎さんと毎晩の様に工作談義のQSOをしていました。

大学入学後QRT気味となり、興味がマイコンブームに乗り自作マイコンに移り、就職と共に多忙となって完全QRTになりました。

2000年になり、CQ誌にクラブプロジェクトのFUJIYAMAの記事を見て、高校時代の友人の尾崎さんの試作基板を見てびっくり。尾崎さんと再開して、「新宿QRP懇親会」に誘われてそのまま「筑波山全国集会」に参加してクラブの一員となりました。定年まで「夢の工作室」の建立に勤しみ、定年後の今では下手の横好きな電子工作を中心にハムを楽しんでいます。クラブでは会計より「宴会部長」が本職に見えますが、大事なお金を守る仕事を誠心誠意行いたいと思っています。

以上


【写真】矢部さんの工作室兼シャックの近況

役員会が開かれました

 5月21日に新年度第一回の役員会が秋葉原のルノアールで開かれました。とりあえず速報で要旨のみ、お伝えします。
 今年度は事務局長が欠員となりましたので、当面、事務局長の仕事を会長、副会長、会計で分担することにいたしました。

 

ハムフェア、関西ハムの祭典、北海道ハムフェアーについては例年どおり出展することとし、準備を進めています。

例年行っている全国集会は、今年は北海道ハムフェア(9月23日~24日)にあわせて懇親会を行うこととします。この時期の団体での宿泊予約が難しいため、航空券並びに札幌市内の宿泊は各自の手配にまかせることとします。


編集後記&近況報告

#678 JA8IRQ 福島 誠

◆ 5月号をお届けします。今月は投稿が多く、記事が集まらなくて困ることはありませんでした。

◆ 6月号の原稿を募集中です。あなたの実験、製作、運用レポート、小ネタなどを6月15日ころまでに編集部あてお送りください。パソコンが苦手な方は福島あて直接の郵送でもかまいません。(住所はMLや紙版会報などで確認してください。)宛先は qrpnews@jaqrp.net (@は半角@に)です。