JARL QRPクラブ会報 2014年10月号 Vol.57-7

投稿者: | 2014年10月16日

JARL QRPクラブ会報 2014年10月16日発行 Vol.57-7


No. 2014年10月号 目次 コールサイン 筆者
1 JE1RYH 尾崎さん追悼特集
2 FUJIYAMAとJE1RYH尾崎さん JA9TTT/1 加藤 高広
3 JE1RYH 尾崎さんの思い出 JR1QJO 矢部 伊知郎
4 JE1RYH 尾崎さんの追悼に寄せて JA5DIM 林 章二
5 忘れられない交信 JA1BVA 齊藤 正昭
6 JE1RYH 尾崎さんを偲ぶ JE1ECF 斎藤 毅
7 QRPなDXの世界 JA1KGW 青山 憲太郎
(Kentaro Aoyama)
8 DX短信 JA1KGW 青山 憲太郎
(Kentaro Aoyama)
9 ハムフェア2014自作品コンテスト
応募体験記
JA8CXX 高野 順一
10 アイテック 50MHz DSBトランシーバー
TRX-1改II
JE1ECF 斎藤 毅
11 隠岐郡知夫村・海士町・西ノ島町
移動運用データ
JR3ELR/1 吉本 信之
12 第24回札幌QRPミーティング報告 JF1ISC(JA8DIQ) 大久保 尚史
13 編集後記 JO1UBD 丸山 裕二
JA8IRQ 福島 誠


JE1RYH 尾崎さん追悼特集

 本クラブ会員のJE1RYH尾崎英之さんは2014年9月21日に逝去されました。尾崎さんを偲んで、この度、JARL QRPクラブでは、「故 JE1RYH尾崎さんとの思い出」というタイトルで巻頭特集を企画することになり、親しかった方々に追悼文を執筆していただきました。JE1RYH尾崎英之さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

JARL QRPクラブ会長 福島 誠

JE1RYH尾崎さんの軌跡

 QRPクラブ会員としてのJE1RYH尾崎さんは、現在も続いている『QRP懇親会』を通じて、またクラブ創設50周年事業の18MHz CW/SSB QRPトランシーバー『FUJIYAMAプロジェクト』を通じて数々の活動にご尽力を頂きました。
 特に『FUJIYAMAプロジェクト』では、開発チームにおいて再現性テストをご担当されました。
 FUJIYAMAは、CQ ham radio誌2000年4月号の表紙を飾り、同誌には14ページに渡り解説記事が掲載されました。当時は約100台がキットとして頒布され、そのうち何台が完成し、そして現在まで残っているのかを考えると、とても貴重なRigであると思います。世の中に何らかの形としてモノを遺す事は、そのモノを通じて後世への軌跡でもあります。

 QRP懇親会は、現在も月次で開催されており、私も10月開催分に初めて参加して来ました。その内容は、若い頃に体験したゼミナール活動を思い出すような集まりで、参加者それぞれ異なったテーマで製作や構想しているQRP機などを中心にして、知の交流を行っている言わば知のコミュニティがQRP懇親会。得意分野が異なった人々が集まり、それぞれを補間しながら成長してゆく、そういう『場』であると思いました。そして二次会では、AC変調を交えながらのフランクな情報交換。尾崎さんが愛して、そして伝えたかったQRP道は、これまでに接した方々に何らかのカタチで受継がれて行くと思いました。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。(編集担当 丸山)

以下は2002年に尾崎さんご自身が書いたプロフィールです。
JN1NGCさんのホームページより転載)





1958年某月某日 日本国内某所に生まれる
1966年頃 初めて秋葉原に行き、2石レフレックスラジオを作る。
(キットではなく、部品を集めて作った)
1969年頃 電子ブロックで遊ぶ
1971年 電話級アマチュア無線技士取得
1972年 TRIOTR-2200にてJE1RYH開局
1974年 第二級アマチュア無線技士取得
1976年 MC6800使用8bitマイコン自作
(4KBasicを手入力し、StarTrekで遊ぶ)
1980年-1982年 秋月でバイトHi
1983年 就職&結婚し、無線及び自作から遠ざかる
—————–
1999年7月 急にSSBの音が聞きたくなり、熊本シティTRXを完成させる
1999年8月 インターネットで自作関係の情報を探し、自作プラーザにたどり着く
1999年10月 QRPクラブ入会
1999年11月 2.54mmピッチ万能基板Fujiyama試作機を完成
2000年 FUJIYAMAプロジェクトに再現性試験担当として参画
この後、急ピッチで各種自作を行ない現在に至る




 【CQ ham radio 2000年4月号表紙(国会図書館蔵書)】


 【18MHz CW/SSBトランシーバー FUJIYAMA】


 【CQ ham radio 2000年4月号 p.229~241に掲載のFUJIYAMA解説記事(国会図書館蔵書)】


 【CQ ham radio 2000年4月号 p.230に掲載のJE1RYH 尾崎さんのFUJIYAMA試作基板(国会図書館蔵書)】


 【QRP懇親会が行われる喫茶ルノアール】


 【尾崎さんが好んだ下駄箱札】


FUJIYAMAとJE1RYH 尾崎さん

#456 JA9TTT/1 加藤 高広

 2001年の頒布から既に13年も経過しています。忘れてしまったり、初めっから知らないQRPクラブ員も多くなったと思うので、JE1RYH尾崎さん追悼の気持ちを込めFUJIYAMAキットのことを交えて振り返ってみようと思います。

(1)FUJIYAMA
 たぶん、他のお方が写真を提供すると思うので外観は示しません。18MHz帯のQRPトランシーバキットです。SSB/CWモードで交信可能です。出力はだいたい3~5Wくらいでしょうか。VXOにより概ねバンド一杯をカバーします。周波数表示はデジタルで、信号強度とパワーはバーグラフ式に16文字2行のバックライト付きLCDに表示されます。もちろん、RIT機能などトランシーバに必要な機能は完備していて、可変型ラダーフィルタを使った受信時の連続帯域幅可変も特徴でしょうか。バンドの性格上、開けていない時のGW(グランドウエーブ)での交信を想定し低ノイズ・高感度を狙ったトランシーバでした。今でも通用するQRP機だと思います。30数台が最後まで完成され今でも実働するはずです。

(2)PROJECT
 ミレニアムの記念行事として、当時、新宿の「談話室・滝沢」という喫茶店で毎月開催されていたQRP懇親会からスタートします。そのころ米NorCalやNJ-QRPのようなQRPクラブのキット頒布プロジェクトに触発されたのでしょう。色々な案があったようですが、最終的には上記のような本格的なトランシーバキットの開発・頒布計画として纏まって行きました。頒布目標は新しい世紀:2001年のはじめと決まります。

(3)MAILING LIST
 パートごとの開発と検討を行う開発協力者は全国に散らばっています。それらの人達で情報を共有しなくては一つのプロジェクトに纏まりません。試作で得られた技術的な情報だけでなく、製作マニュアルの内容、部材調達の状況、そのほかプロジェクトの進捗にかかわる様々な情報を共有する必要がありました。
 そのような状況を見て、JE1RYH尾崎さんがスタッフ用のメーリングリスト(ML)を立ち上げてくれました。日本ではまだインターネットが普及して数年の時代です。今ほど情報交換や伝達の手段が選べなかったころでしたから、MLは非常に効果的でした。信じられない事かも知れませんが、関係者の間でやり取りされたメールは4000通以上にのぼるのです。予定通りに頒布が進んだのもMLのお陰でしょう。

(4)KITTING
 キット化の話をしましょうか。FUJIYAMAは、スタッフの最終試作用を含めて約130セットが頒布されました。アマチュアの自作品開発においては、回路設計や試作評価のウエイトが重くて、回路が纏まればあとは板金工作くらいで完結するでしょう。しかし、100セットの頒布ともなれば、再現性の維持とキット化の作業がたいへん重要になってきます。たった30セットのスタッフ試作用を頒布した際でさえ、バラの部品からキットにするのに丸々一日を要するほどでした。ですから本番の頒布準備が思いやられたのです。結局、部分ごとのプリ仕訳を全国の有志で行ない、たとえばICなら必要な分を予め100セット分作って・・というような事前に仕分ける工程を含めました。最終的にはそれらのプレ仕分けパーツを集めて、秋葉原駅近くの千代田区の会議施設を1日借りてKITTINGを行いました。
 写真は全部の仕分けが済んだ100台のFUJIYAMAキットを前にする仕訳スタッフの皆さん。右から3人目、帽子をかぶっているのがJE1RYH尾崎さん。

JE1RYH

(5)IMPROVE
 市販品でもリコールがあるように、十分な検討を進めてきたFUJIYAMAにもいくつかの改良点が頒布後に見つかります。幸い致命的なものはなかったのですが、18MHzというバンドの性格を熟知していなかったために問題が起こりました。電離層反射ではなくGWでの交信を重視して低ノイズ・高感度に作った目論見は悪くなかったのですが、バンドがオープンした時が問題でした。DBM-IC:SA612を使った受信ミキサー回路が容易に飽和するほど強烈にバンドがオープンしたのです。強力なHAMの電波も問題ではありましたが、少し下にある海外放送バンドが大問題でした。強い混変調が感じられたのです。スタッフにより様々な対策が考えられたのですが、JE1RYH尾崎さんの対策は本格的でした。写真はその尾崎さんの提案で、SA612をやめてDi-DBMに交換すると共に、2SK125パラのポストアンプで感度も補うというものです。尾崎さんのお得意の高密度実装により、SA612の8ピンソケット上に実装されています。これは素晴らしいアイディアなのですが、尾崎さん以外の人にはかなり難しそうなので別の方法がアナウンスされました。尾崎さんの自作品をいくつか拝見させてもらいましたが、蛇の目基板の使っていない穴が殆ど無いほどの部品実装密度には舌を巻いたものです。基板いっぱいに部品は載せられても、私のような凡人には安定動作はおぼつかないに違いありません。hi

JE1RYH

(6)LAUNCH
 頒布から暫くの時間がたち、富士山の山開きに合わせた記念コンテストも開催されました。これは今もあったと思います。いくつか残った頒布後の課題もぜんぶ終わってスタッフで集まることになりました。FUJIYAMAの打ち上げとでもいいましょうか。2001年10月のことです。
 秩父の宿で一泊して、尾崎さんを含め皆さんとFUJIYAMA頒布の話やQRPのこと、自作のことなど夜遅くまで歓談したことが思い出されます。写真は埼玉の景勝地・長瀞のライン下りでの写真です。左から仙波さん、影山さん、一番右がJE1RYH尾崎さんです。

JE1RYH

(6)Epilogue
 尾崎さんとのお付き合いは、ちょうどFUJIYAMAプロジェクトが始まったころからです。小金井市にお住まいでした。ご近所にお住まいのクラブメンバーの様に長いお付き合いではありません。しかしその後も秋葉原に移ったQRP懇親会とその2次会では、何度となくご一緒したのが思い出です。
 今年の2014年5月3日の懇親会でお会いしたのが最後になりました。秋葉原の居酒屋「天狗」の2次会にも参加され、生ビールを酌み交わしながらお話したのが思い出されます。少しやつれた印象もありましたが、お元気でしたし2度の脳外科手術の後遺症も感じさせないお元気な様子でしたから、ご自身からの「夏ころまで・・」という言葉はとても信じられませんでした。すでに少し移動も不自由になってきているという2次会お開きの時の言葉も忘れられません。これからも活躍してくれたであろうアクティブなQRPerを失ったことはとても残念なことです。JE1RYH尾崎さんのご冥福をお祈りいたします。

2014年9月26日


FUJIYAMA


FUJIYAMA


FUJIYAMA


FUJIYAMA


上記4枚はFUJIYAMAの回路図


JE1RYH 尾崎さんの思い出

#725 JR1QJO 矢部 伊知郎

 尾崎さんとの最初の出会いは高校受験が終わり、ペーパーライセンスだった局免許がやっと実体のある無線局に落成した1972年でした。
 バンドが開けていない時には21.370MHzに自然とローカル仲間が集い、中学生、高校生を中心に毎日のようにローカルラグチューに暮れた青春時代に
尾崎さんがいました。自作が好きで、半田鏝を握りながら夜な夜ならラグチューしていました。そこでよくお互いのシャックを訪れ、自作機器を見せ
あっていました。彼は、当時皆の羨望の的であったFT-101で開局していました。工作の腕は抜群で几帳面な作りは私の工作に大いに参考になりました。

 尾崎さんは高校時代に一年アメリカ留学していました。まだ成田が開港していないので羽田に見送りに行き、帰国して再会した時には、アメリカからATLAS180という全半導体式HFトランシバーを持ち帰っていました。まだ真空管全盛の時代に興味深々で回路図を見てビックリ!
 受信はRF段なし、ダイオードミキサ、IFがMC1350、DETがダイオードミキサという構成で、送信になると同じIFストリップを使ってLOとBFOの信号を前後のダイオードミキサに切り替えて受信ミキサがDBM、DETが送信ミキサに役割に代わるというシンプルで21世紀のQRPでも通用する構成です。設計はあのSWAN社のジョンソン氏です。今でも真似して自作したい合理的な回路です。

 奥さんは高校時代に文化祭でナンパしたハイスクールスウィートハートです。高校時代一回紹介されました。これだけ長く付きあっていたのだから、なんだかんだと言っても愛妻家だったと思います。
 そういえばあの時代、荒井由美の「飛行機雲」が流行っていました。昨年流行ったの宮崎アニメ「風たちぬ」の挿入歌です。今思うにあの歌詞はレクリエムだったのはどういう偶然なのでしょうか?

 私が大学に進学すると他の事が忙しくなり、QRT気味になり、尾崎さんとのお付き合いが絶えてしまいました。二度目の再開にきっかけは2000年のCQ誌の「FUJIYAMA]記事です。
 尾崎さんの蛇の目基板に高密度実装したFUJIYAMA記事の試作基板を見て、高校時代の尾崎さんの几帳面な工作術の記憶が蘇りました。その基板を見ると、尾崎さんの名前があたかも基板中に書かれているかのようでした。

 インターネットで尾崎さんのメールアドレスを探し、コンタクトを取ると「新宿QRP懇親会」を主催しているので参加しないかと誘われ、以来「秋葉QRP懇親会」になっても常連であり続け、楽しい出会いの日々を過ごしています。同じ年、まだQRPクラブに入会していないのにもかかわらず「筑波全国集会」にも誘われ、そこでも多くの出会いが得られました。すぐさまQRPクラブの入会手続きを取りました。よって、尾崎さんとの約30年ぶりの再会が望外の楽しみを私に与えてくれました。

 尾崎さんのクラブでの活躍は皆さんのご存じの通りです。QROな声を生かした小気味良いオークション、忘年会や「QRPerの集い」乾杯の発声が印象に残っているかと思います。写真は2012年の「新宿QRP忘年会」の時のライオンでの乾杯のシーンです。
 まだ若く、やりたいことが沢山あったと思います。私もこれから更に親交を深めたいと思っていた矢先だけに非常に残念です。

 ただ尾崎さんのことですから、向こうに行っても半田鏝を温めて、あの几帳面な工作をしていることでしょう。三度目の再会をする時、尾崎さんの工作物を拝見したいと思います。

JE1RYH
 【在りし日の尾崎さん】


JE1RYH 尾崎さんの追悼に寄せて

#645 JA5DIM 林 章二

 JE1RYH 尾崎さんの訃報に接し、まことに残念でなりません。
 尾崎さんとは、QRPクラブに入ってからのお付き合いでした。遠隔地ゆえ新宿や秋葉原でのQRP懇親会、ハムフェアでのアイボール、全国集会といった機会にお会いする程度でしたが、比較的年齢が近いこともあって気さくに親しく接していただきました。
 色々とプライベートなお話もしていくうちに、3年違いで同じ大学出身(学部は異なりますが)だったこと。長男同士が1歳違いで、偶然にも同じ大学に通っていること。尾崎さんの生まれた同じ産院で、私の長男が生まれたことなど共通の話題も多く、とても近しく感じておりました。一時、ご病気でしばらく見えなかったのですが、その後手術が成功し元のように元気な姿でハムフェアや全国集会でお会いでき、ほっと安心していた次第でした。

 今年のハムフェアで、矢部さんから「病気が再発し、経過が思わしくないらしい」という深刻なお話を聞き、案じておりましたが、とうとう最悪の知らせを聞く事になってしまい、残念でなりません。
 FUJIYAMA開発時のお話も、興味深くいろいろお聞きした事を思い出します。また、中でも印象深く思い出すのは、全国集会でのオークションの名司会ぶりです。ぽんぽんと軽妙に飛び出す語り口、参加者の購買心を掴み、楽しく煽って場を盛り上げてくれました。もうあの名調子が聞けないと思うと、非常にさびしく残念です。
 闘病生活、本当にご苦労様でした。心よりご冥福をお祈りいたします。


忘れられない交信

#722 JA1BVA 齊藤 正昭

 それは、QRP特別記念局8J1VLP/8を北海道旭川市で運用した時の事です。
 2004年6月20日、コンテナシャックに一泊して08:00起床。JA8CCL木下さんから「50が開いているよ」とのお声掛けで、FT-817の50.240でCQを出しました。
 最初から猛烈なパイルとなりました。強力な局のSSB信号がひしめき合っています。時間経過と共にパイルが激しくなり、強力局のつぶし合い、過大なコプレッサー信号など、Sメータは最大値でピクリとも動きません。コピー出来ずに困惑?していた時、偶然にもパイルが一瞬、静かになったのです。その時間は1秒もなかったと思いますが、その隙間にきれいな変調のコールサインが聞こえて来ました。

 「JE1 レディオ ヤンキー ホテル」でした。私は、思わず「尾崎さん 59」と送信。
 尾崎さんからは「サイトウサン 59 100mWです」と返ってきました。
 このままでは(運用方法が)マズイので、「JE1RYH  59  100ミリ了解です。ありがとうございました」を送信しました。 次の瞬間、巨大なパイルに襲われ、尾崎さんの声はかき消されてしまいました。
 これが尾崎さんとの最初で・・・今となっては最後の交信になりました。

 一瞬の隙間を捉え、良く通る音声でコールサインを一発で送り込む技術は、並々ならぬオペレーションでした。運用のみならず、大きなQRP活動、卓越した製作技術、理論的実践など、尾崎さんには、これからも最大の敬意を持ち続けたいと思います。
 QRP懇親会では、いろいろお世話になりありがとうございました。
 電離層の彼方でのご冥福をお祈りします。  JE1RYH  DE  JA1BVA  72  72  72

JR1RYH in HAM Fair 2012
 QRPクラブ受付席で(ハムフェア2013)


JE1RYH 尾崎さんを偲ぶ

#696 JE1ECF 斎藤 毅

 尾崎さんと言えば、長年にわたり1エリアQRP懇親会やQRPerの集いの幹事としてご尽力いただきました。我々にアイボールの場を提供して頂きありがたく思っております。また、全国集会等のオークションでの名ディーラー、「最初はグー」の掛け声はわすれられません。また、ハムフェアでは当日の受付をしていただき、大変助かりました。

 尾崎さんとは同じプリフィックス(JE1)であることからつい最近まで同世代と思われていましたが、私は再割り当て組み(私は1985年開局。尾崎さんが開局された頃は3歳。)であることを話した時の驚きの表情も記憶に残っています。

 今年3月の時点で、6月のQRP懇親会の会場予約ができない旨連絡があり、6月は都電QRP号を計画しました。これに最初にエントリーされたのは尾崎さん、矢部さんでした。
 しかし、当日は天候不順であり、尾崎さんは不参加でした。今思うと、このころ歩行に支障をきたしていたのかもしれません。
 懇親会で体調の話になった時、次はないかもしれないと語られていましたがまさかこんなに早く現実となってしまったことは非常に残念です。
 昨年の忘年会では私の持参したハムジャーナル誌ピコトラ特集号に興味を示されていましたので進呈しました。きっと、記事に目を通されピコトラを堪能してから旅立ったのでしょう。
QRP懇親会は残った3名(矢部さん、竹野さん、斎藤)で継続していきますから「尾崎さん、安心してください。」これまでありがとうございました。

JE1RYH in QRP Club on HAM Fair 2010
 【ハムフェア2010】

JE1RYH in QRP Club on HAM Fair 2011
 【ハムフェア2011】


QRPなDXの世界

海外のQRPer

#377 JA1KGW 青山憲太郎(Kentaro Aoyama)

~IK5XCT/QRP, Stefanさんとの2WAY QRP QSO~

 2012年に14MHzだけで4回も2WAY QRP QSOをしたIK5XCT/QRP Stefanさん。2012年6月4日、14MHzでの2WAY QRP QSOをしたときのQSLカードを紹介します。使用リグはELECRAFT K3の5W、ULTRA BEAM 2エレのアンテナとの組み合わせで固定同士の2WAY QRP QSOでした。
 使用しているULTRA BEAM 2エレのアンテナに興味を感じましたので、インターネットで調べてみますとSteppIR風の燐青銅板を使用したアンテナで6m~20mの仕様でした。既に国内でも取扱店があります。IK5XCT/QRP Stefanさんは、I-QRP クラブの#239およびG-QRP クラブの#9597の会員番号で登録されて大変にアクテイブに活躍しています。
 移動運用にも力を入れていて、QSLカードの右側に“Portable QRP Bag”の写真がはめ込んであります。尚、IK5XCT/QRPで検索しますとStefanさんが実際に移動運用している様子をYouTubeで紹介をしています。是非ともhttps://www.youtube.com/watch?v=quADHsJWWjAがヒットしますのでご覧ください。

IK5XCT/QRP's QSL
 IK5XCT/QRP StefanさんのQSL

IK5XCT/QRP's QSL
 IK5XCT/QRP StefanさんのQSL

編集担当から

 青山さん、投稿ありがとうございます。StefanさんのQSLカードを拝見すると、天候のレポート欄があり”sunny”とありますね。QSO中に天候や気温を紹介する場合はありますが、QSLにてレポートするケースは、これまで気付かなかったのかもしれません。後日振り返る際には、有用な情報ですね。(JO1UBD)


DX短信

#377 JA1KGW 青山憲太郎(Kentaro Aoyama)

~ハイバンド、特に28MHzが矢張りオープン~

 先月号で“過去の秋口からのハイバンド、24MHzおよび28MHzがオープンすることを書きましたが、実際に連日ヨーロッパ、北米がオープンしていました。JT65でも確認しましたが、早朝の南米はいとも簡単にできますので、短時間WACの記録も作れそうな気がしました。ご承知のようにJT65でQSOが出来たからCWでもQSOが可能とは言えません。JT65ではSN比で20数デシベルの差があると言われています。
 事実、SWC 宇宙天気情報センターの平成26年(2014年)10月6日の“太陽黒点情報”の過去30日間の観測値を調べてみますと下記のようになっています。


#                Last 30 Days Daily Solar Data
#
#                         Sunspot       Stanford GOES15
#           Radio  SESC     Area          Solar  X-Ray  ------ Flares ------
#           Flux  Sunspot  10E-6   New     Mean  Bkgd    X-Ray      Optical
#  Date     10.7cm Number  Hemis. Regions Field  Flux   C  M  X  S  1  2  3
#---------------------------------------------------------------------------
2014 09 06  157    170     1380      3    -999   C1.1   6  1  0  9  1  0  0
2014 09 07  151    154     1210      1    -999   B9.8   6  0  0  9  0  0  0
2014 09 08  164    158     1110      0    -999   B8.8   4  1  0 16  1  0  0
2014 09 09  159    162     1120      0    -999   C1.1   1  0  0  4  1  0  0
2014 09 10  160    161     1070      0    -999   B7.6   1  0  1 12  0  1  0
2014 09 11  151    164      870      2    -999   B8.7   4  2  0  6  0  0  0
2014 09 12  152    157      790      1    -999   B6.9   8  0  0  8  1  0  0
2014 09 13  145    165      550      0    -999   B6.5   9  0  0 12  0  0  0
2014 09 14  139    120      550      1    -999   B7.2   2  1  0  3  0  1  0

2014 09 15  133     92      350      0    -999   B5.7   4  0  0  9  0  0  0

2014 09 16  133     85      290      0    -999   B5.5   5  0  0  3  0  0  0

2014 09 17  125     91      330      3    -999   B6.1   7  0  0  5  0  0  0

2014 09 18  120     75      230      0    -999   B5.3   4  1  0  5  0  0  0

2014 09 19  122     91      250      1    -999   B4.8   4  0  0  2  0  0  0

2014 09 20  119     75      300      2    -999   B4.5   2  0  0  0  0  0  0

2014 09 21  124     72      590      0    -999   B4.9   3  0  0  0  1  0  0

2014 09 22  130     87      670      1    -999   B4.7   1  0  0  2  0  0  0

2014 09 23  138     90      830      0    -999   B5.7   1  1  0  4  0  1  0

2014 09 24  145     76      590      0    -999   B6.1   3  0  0  5  1  0  0

2014 09 25  158    139      690      3    -999   C1.0   3  0  0 25  0  0  0
2014 09 26  170    203     1020      0    -999   C1.1   7  0  0 22  2  0  0
2014 09 27  181    159     1180      1    -999   C1.0   4  1  0 12  0  0  0
2014 09 28  181    200     1370      1    -999   C1.3   4  2  0 19  1  1  0
2014 09 29  175    160     1560      0    -999   C1.2   6  0  0 15  0  0  0
2014 09 30  162    166     1250      2    -999   C1.0   1  0  0 11  0  0  0
2014 10 01  155    164      770      0    -999   C1.2   1  0  0 14  0  0  0
2014 10 02  149    105      430      0    -999   C1.0   1  2  0  3  1  0  0
2014 10 03  137    128      310      3    -999   C1.1   8  0  0  3  0  0  0
2014 10 04  128    125      370      0    -999   B4.5   4  0  0  4  0  0  0
2014 10 05  128    106      330      0    -999      *   4  0  0  1  0  0  0


15日から9月24日の100以下を除き、何れも太陽黒点は100~200を示しています。
28MHzでのQSOの結果は出来るだけ“Dx Summit”にアップしていますので、ご覧戴いたOMさんもいらっしゃると思います。過去では、この“Dx Summit”にアップするのにパスワードを必要としない時期がありましたので、中傷めいたコメントもありましたが、現在でアクセスしてQSO結果をアップするのにパスワードが必要となり気分を悪くするようなコメントは皆無です。
 8月15日から9月15日の1ヶ月間で、28MHzで1ST 2WAY QRP QSOは、9月10日のUA1ACO/QRP、Vladさんと9月11日のOK2BJR/QRP、Milosさんの2局のみでした。その他は全て、QRO局とのQSO でした。皆さんご承知のQRP Window 周波数、28.06 MHzで恥も外聞も無く“CQ QRP”を叩きますが、成果はさっぱりでした。 Hi
 しかし、この原稿を書いていた10月6日、28MHzが良くオープンしていて、15;36JST、28.010.5MHzで7Z1HL(Saudi Arabia)そして16:29JST、28.004MHzにJY9FC(Jordan)がスプリット運用していて立て続けにQRP QSOができました。まだまだ28MHzは楽しめそうです。

編集担当から

 ”Dx Summit”の「BAND SPOTS」→「QRP」で絞り込みますと、JAからは青山さんがほぼ独占のスポットですね。もしかしてと、同じ時間帯を狙って受信してみましたが、ノイズばかりでNGでした、HiHi。(JO1UBD)


ハムフェア2014自作品コンテスト

応募体験記

♯971 JA8CXX 高野 順一

 会報4月号、5月号で御紹介した7MHz・QRP・CWトランシーバー、ハムフェア自作品コンテストに応募したところ入賞しましたので報告いたします。

 応募の動機は、受信機とテスターとSWR&パワー計だけを頼りに作り上げたRIGがどの程度の性能なのか審査していただける良い機会だと思ったからでした。4月末に書類を提出、5月末に一次審査合格の通知を頂き、6月初めに二次審査用の書類(取扱説明書等)と作品をゆうパックでJARLに送りました。
 そして待つこと約2カ月、7月末に審査結果と入場券が郵便で送られてきました。結果は優秀賞第1席とのこと。初めての応募で、せいぜい奨励賞か努力賞と思っていましたので、舞い上がりました。
 ハムフェアが終わって、8月末に作品が戻ってきました。別便で賞状とカップが届きました。

JA8CXX's TRX
 【図1】7MHz・QRP・CW・トランシーバーと賞状・カップ

 出品するからには多少の汚れや傷などはやむを得ないと覚悟していましたが、戻ってきた作品は送った時のままの無傷の状態でした。
 たいへん丁寧に扱ってくださったようで、JARL担当者の方に感謝いたします。
 このトランシーバーは2月に完成した後、2か月間ほど実際に使用していましたが、コンテスト出品前に書類を作る作業と並行して徹底的に調整と動作確認をやり直したら、送受信とも一段と性能が向上しました。自作品コンテストへの出品の思わぬ効用と言えそうです。

 最後に、JARLからレーダーチャート評価表と測定成績書を頂きましたので添付します。 今後、自作品コンテストに応募される方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

JA8CXX's TRX
 【図2】レーダーチャート評価票

【レーダーチャート各項目欄の内容】
1. アマチュア無線の特徴が生かされているか。
2. アイデア、デザイン、操作性は優れたものであるか。
3. 部品加工や配線など製作技術が優れているか。製作にあたって、適切な配慮があるか。
4. 実用性はどうか。うまく動作することが前提。
5. 動作特性はどうか(送信機は電波の質を重視します)。
6. 仕様書および取扱説明書は適切なデータとわかりやすい説明であるか。
(注)審査委員は4名で、各項目につき1人5点満点で評価、合計20点満点。

測定データ

受信感度:7.010MHz  聴覚限界 -127dBm
      -50dBmでAGCの制御 NG
送信特性
 最大出力:7.010MHz  1.7W (DC 12V)

  
近傍スプリアス特性
    2倍波:-58dBc

JA8CXX's TRX
 【図3】スプリアス特性1

JA8CXX's TRX
 【図4】スプリアス特性2

編集担当より

高野さん、投稿ありがとうございます。また、受賞おめでとうございます。自作品コンテストの審査に関する定量評価項目が、受賞者に対して報告されているのですね。こういう情報は知りませんでした。また、計測器による測定結果提供も有るとは知りませんでした。貴重な体験記をありがとうございます。僕も毎年、応募に備えての”製作妄想”のみで終わってしまい、いつかは応募したいものです。(JO1UBD)


アイテック 50MHz DSBトランシーバー

TRX-1改II

#696 JE1ECF 斎藤 毅

 当クラブ会員の多くの方が製作を経験されている無線機キットを使い勝手に合わせ、再び改造しました。
JE1ECF's TRX
 【図1】50MHz DSBトランシーバー TRX-1改II

1.改造の動機と改造箇所の比較
 主たる改造動機はJARLコンテスト周波数を使用するQRPコンテストに自作機で参加するためです。ついでに、世間で頻繁に出回っている携帯電話充電グッズを活用できたら・・・。周波数を監視したい・・・。と欲望を網羅してみました。

【比較表】
項目 オリジナル 改I 改II
電源電圧 9~12V 9~12V 2系統
9~12Vと5V(昇圧コンバータで12Vを供給)
VXOクリスタル 16.880MHz 50.320MHz2個
(スーパーVXO)
ch1:50.320MHz
ch2:50.550MHz
それぞれ2個(スーパーVXO)
周波数可変帯域 AM運用周波数 50.112~50.275MHz ch1:50.013~50.258MHz
ch2:50.292~50.429MHz
送信出力 50~100mW 想定公称50mW
(実測40mW程度)
左記同様
メインダイヤル 通常のつまみ バーニヤダイヤル
36φ
バーニヤダイヤル
30φ
周波数カウンタ なし なし GY560を実装
送受信切替 トグルSW トランジスタSW回路と12Vリレー 左記同様
Sメータ回路 オプション扱い オプション回路実装 左記同様
ケース 通常付属品 通常付属品を木目調ラッピング。
(横浜電子工作連絡会2013年9月のミーティングのご報告のHP参照)
運搬用アルミケース
※運搬用アルミケースの使用は2009年CQ誌AYU40ケーシングコンテスト、
2012年ハムフェアクラブ自作展示(ビギトラ)で実施済。
その他   送受信切替表示(2色LED) 送受信切替表示(2色LED)、
入力電圧監視、3桁LED表示。

JE1ECF's TRX
 【図2】50MHz DSBトランシーバー TRX-1改II 外観(搬送時)

JE1ECF's TRX
 【図3】50MHz DSBトランシーバー TRX-1改II 外観(使用時)

2.改造を試みての振り返りetc.
(1)周波数カウンタ基板を追加したことで当初計画していたビギトラに使用した携帯ゲーム機搬送用アルミケースでは収まらなくなり、ケースを再検討しため、操作部アルミ板の加工を何度がやり直しました。
(2)今回使用した昇圧コンバータはストロベリー・リナックスのもので5.5V入力、12V出力時に500mAの電流を得ることができるようだが、周波数カウンタ動作時は容量不足により電圧降下を起こしてしまい、このときの送信出力は20mW程度に落ち込みます。

JE1ECF's TRX
 【図4】使用した昇圧コンバータ

JE1ECF's TRX
 【図5】出力測定(20mW)

(3)電圧計を動作(点灯)するとノイズ音がすることから、今後の対策を検討中です。この7セグ電圧計ユニットは、秋葉原・千石では1,000円程度、名古屋・ボントンでは5~600円、大阪・デジットでは800円程度で購入できたと記憶しています。
(4)VXOクリスタルを2種類用意するに当たり、当初クリスタルのみをSWで直に切り替えるため、VXO基板から遠ざけた結果(VXOコイルとも離隔)、異常発振して周波数が定まりませんでした。現在はVXOコイルとペアで移設すること、VXOコイルの筐体をグランドにつなぐことで問題は解決?しています。今、思うとリレーを使い遠隔操作を行えば苦労せずに・・・と悔いています。

JE1ECF's TRX
 【図6】VXO水晶切替回り

(5)今回、採用した周波数カウンタユニットのGY560は、旧製品?のGY460と異なり、オフセット機能がありません。DSBなど周波数を変換せず周波数を確認するには安価でいいと思います。今回は周波数を確認したい時のみ動作させています。(下の写真は改造前の周波数測定実験です。)

JE1ECF's TRX
 【図7】周波数カウンタユニット

JE1ECF's TRX
 【図8】周波数カウンタユニット

以上

編集担当から

 斎藤さん、投稿ありがとうございます。先日のQRP懇親会で実物を拝見して感じた事は、スマホなどの補助電源であるUSB電源パックに注目した点が脱帽でした。普段持ち歩く鞄の中には、1~2個は予備電源としてUSB電源を入れていましたが、これをRigに利用することは発想できませんでした。最近は大容量なタイプ(USB端子1個あたり最大2.1A供給)も出ていますので、ちょっとした移動には良さそうですね。あとは昇圧回路の容量を拡張すれば、いろいろと応用範囲はありそうですね。情報提供ありがとうございました。(JO1UBD)

USB Power Supply
 [USB電源パック例。左から順に、1,800mAh(200円)、3,600mAh(800円)、7,200mA(1,500円)]


隠岐郡知夫村・海士町・西ノ島町

移動運用データ

#33 JR3ELR/1 吉本 信之

 8月のお盆時期に島根県隠岐郡知夫村、海士町、西ノ島町を回ってきました。伝説の海士町金光寺山山頂レンタルシャック情報もあります。

(島への交通手段)
1.七類港~島前(知夫村・西ノ島町・海士町)
 島前三町村には空港がありません。島への移動は渡船のみです。朝一番の船は七類港から出ます。師匠JR4CLN乃木さんからの事前情報で、前夜米子駅前に宿をとり翌朝駅前から港行の路線バスに乗りました。バスは途中米子空港ターミナル前と境港を経由して七類港に着きます。港に着くと乗船表に氏名住所を記入して窓口に並び、乗船券を買ってから二階の乗船口に向かいます。乗船したら後は2時間半から3時間の船旅になります。私は船酔いしませんが、普通の方は波高2mあたりが船旅の限界でしょう。辛くなった方は船の中央部の二等船室のカーペット床に横たわり、到着までじっと耐えてください。(写真1)
JR3ELR
 【写真1】

2.島前三町村の各島間移動
 島の高校生の通学や日々の買い物に欠かせない海上バス、内航船いそかぜ2が就航しています。これに乗せてもらい3町村を移動しました。(写真2)
JR3ELR
 【写真2】

2.島内の移動手段
 其々の港でレンタカーを借りてください。知夫村は港の観光協会、海士町は港の前、西ノ島町はフェリーターミナルで借りました。燃料代はガソリンスタンドが複数在る海士町は満タン返し方式でした。他の島は走行距離計算です。どの島も道が狭く、知夫村のレンタカーは軽自動車だけです。海士町も南端一周とレンタルシャック横付けを考えるなら軽自動車にしてください。(写真3、4、5)
JR3ELR
 【写真3】
JR3ELR
 【写真4】
JR3ELR
 【写真5】

3.道路事情(子連れ牛は要注意)
 知夫村と西ノ島町は居住区域外が繁殖牛の放牧地です。牛の群れが随所で道を塞ぎます。特に子連れの群れは危険です、絶対にクラクションを鳴らさない・子牛が親牛に助けを呼ぶような鳴き声を出させないことです。塞がれてしばらく待っても動かないときは前進をあきらめてください。車幅ぎりぎりの山道を慎重に数百m後退し方向転換して戻るのが最善の策です。群れに挟まれてしまったら、前後どちらかが移動するまで待つしかありません。こういうことが頻繁に起きて想定外の時間がかかります。出航1時間前には港付近に戻る余裕が必要です。

(島のインフラ)
1.飲料水
 西ノ島はダム水です。他は淡水レンズの地下水と湧水が水源です。とにかく煮沸しない水は極力飲まないでください。山の斜面で水が湧きだすところが多数ありましたが絶対に煮沸せずに飲まないでください。日中の飲用水は個人商店で調達できる2Lのペットボトル飲料だけにしてください。
2.電力
 道後の隠岐の島町で火力発電し島前3町村に海底送電しています。時に送電故障しますが、休止中の西ノ島町の発電所が代行発電して島前三町村に海底送電します。
3.携帯電話
 どの島も八割方使えるのはDocomoとAUです。海士町のレンタルシャックではどちらも使えました。
4.インターネット
 どの島もADSLまたは光のブロードバンドが開通しています。海士町のレンタルシャックではDocomoFOMA/FOMAプラスのスマホでJ-クラスタを覗いたり、SkypeでQRPerがオンラインになっていないか探したりしていました。西ノ島町の宿、国賀荘は客室内にLANケーブルが出ています。

5.昼飯・食堂
 調達が大変なのが知夫村で、2件の宿に併設の食堂で温かいもの、看板が無く見つけ辛い個人商店でパン・スナック菓子類が調達できます。海士町も土日営業している個人商店が少なく、レンタルシャックに向かう途中に寄った個人商店はJN4VVN田中さんの案内が無ければ絶対に見落としていました。西ノ島町は港のある別府と浦郷に食堂、個人商店が複数あります。とはいっても三町村とも調達できないリスクがあります。非常食のカロリーメイト2箱くらいは携帯して島に入ることを強くお勧めします。

(島の診療所)
 どの島にも診療所とへリポートがあります。重症・急患は松江に空送します。

(QRP運用地点)
1.知夫村
 居住地区を除き島全体が繁殖牛の放牧地です。山頂付近の車を止めての運用は難しいと考えてください。特に居住地区以外の夜間運用は危険です。お止め下さい。

2.西ノ島町
 この島も居住地区を除き島全体が繁殖牛の放牧地です。日中は尾根筋の駐車場で運用可能ですが夜間は危険です。お止め下さい。私は浦郷の岬に建つ国賀荘の客室の窓からラッピングワイヤーを崖下に垂らして夜間と早朝打電しました。
3.海士町
 この島は放牧していません。山頂付近に止めた車の中から終日運用が可能です。島の最高峰、金光寺山の山頂付近のベストロケーションに建つレンタルシャックは申し分のないロケーションでした。

(島の危ない生き物たち)
1.マムシ
 知夫村と西ノ島町では、山道に「マムシ注意」の看板が建っていました。海鳥が営巣している離島は蛇の生息密度が高くなります。草むらには入らないことです。こういう島は石積に座ったり寄りかかってもいけません。風景写真の中に時折、毒蛇の捕獲目的でボロボロになった漁網を被せてある石積みの塀や石垣が写り込んでいます。これは「この島には毒蛇がいるよ」の目印です。(写真6、7)

JR3ELR
 【写真6】
JR3ELR
 【写真7】

2.蜂
 蜂も頻繁に飛んでいます。日中のフィールドワークでは黒い帽子、黒い上下着衣は厳禁です。但しヒルが首筋めがけて落下してくるので帽子は必須です。私の装備には蛇と蜂、こまちぐも、サソリ対策のポイズンリムーバが2個入保険で入れています。

3.放牧繁殖牛
 知夫村と西ノ島町は居住地区を外れると全てが放牧地です。軽の車幅ぎりぎりの道は子連の群に随所で道を塞がれます。万一子牛にか細い鳴き声を出されたら、親牛たちが間に入って突っ込んできます。だから、この島は夜間山頂付近や尾根筋で運用してはいけません。

3.寄生昆虫他
 知夫村では繁殖牛の他に狸と日本雉が目前を横切りました。動物の密度が高い島は寄生昆虫が密生し草むらを歩けばダニに取りつかれ、森の木からヒルが落ちてきます。そして隠岐郡にはつつがむしがいます。激痛が走り腫れあがるウシアブとサシバエも飛んでいました。かならずポンプ式濃度12%のディード忌避剤をズボン、靴、腕、袖、首回り、頭に噴霧してください。蚊も飛び交っています。汗でディード剤が流れ落ちたところをやられないように、腕に電池式蚊取りを巻いてください。(写真8)もっと危険度が高い島に上陸するときは厚手のサポーターやスパッツ、ゲートルで足を厳重に保護しています。牛の放牧がある島は腸管出血性大腸菌のリスクもあります。隠岐郡はO(オー)26の集団発生がありました。カルキ臭がしない簡易水道水や煮沸しない湧水は絶対に飲まず、購入したペットボトルの水を飲んでください。「雨水たりとも煮沸水以外飲むな」これは西表島から2kmほど沖に浮かぶ外離(ふかぱなり)島に住む裸仙人に直に教わってきた無人島で生残る技の一つです。
JR3ELR
 【写真8】

(放牧地と車の色)
 ウシアブとサシバエは寄生主の牛を色で見わけて大群で襲います。このため車体が黒だと群に襲われます。これを知らず放牧場が広がる竜飛岬の駐車場にレンタカーで乗りつけアカメウシアブの大群に襲われ腫れあがったことがあります。写真をご覧ください、知夫村も西ノ島町も海士町もレンタカーは皆グレーです。マイカー購入の際は黒をお避け下さい。(写真3、4、5)


(海士町のレンタルシャック)

 師匠JR4CLN乃木さんから海士町のレンタルシャックの存在を教えてもらい、港の海士町観光協会に連絡して借用許可をとりました。鍵は同じく観光協会で借りました。現在シャック内の管理はJN4VVN田中さんが引受けておられます。観光協会指示で連絡をとり大変便宜をはかってもらいました。(感謝)手厚い管理で快適に運用できました。シャック内には水道、電気、和式水洗トイレがありますが冷暖房はありません。安定化電源は2台ありますが1台は故障しています。引き込まれた同軸は漏水で全滅です。ローテーターは動きません。タワー上のアンテナ群も使用不能の状態です。私は常用の40mナイロン被覆線にテフロン被覆ラッピングワイヤー20mを追加し、立木の枝にひっかけた即席のロングワイヤーアンテナとカップラー&アース、これにFT817/4W(持参のPC用DC12V電源)で運用しました。(写真5、9、10、11、12)
釣果は、運用延べ2時間で68局(内QRP4局)です。深夜大陸のジャミングがスキップした午前3~4時に7MHzでEU各局が519で聞こえていましたが届きませんでした。
JR3ELR
 【写真9】
JR3ELR
 【写真10】
JR3ELR
 【写真11】
JR3ELR
 【写真12】


(西ノ島町の運用)

 疲れが溜まったので、ちょっと豪華に岬の突端のリゾート宿をとりました。ここの部屋の窓の下に海が広がる景色は飛びを感じさせますが下には岬の崖。テフロン被覆0.26mmφラッピングワイヤーを20mほど外に垂らし窓枠をアースにしたステルスアンテナを造って打電した結果は1時間で61局でした。(写真13、14)早めに別府港に戻り出航までの短時間エンジンを止50cmほどに短縮したATXロッドアンテナと2.5Wの最後の打電結果は7局(内QRP1局)でした。何処の島のレンタカーもノイズ対策はありません。エンジンノイズとエアコンノイズでS9+になります。そしてエンジン停止中の車内打電は扉全開できないとサウナ状態です。(写真15)
JR3ELR
 【写真13】
JR3ELR
 【写真14】
JR3ELR
 【写真15】

編集担当から

吉本さん、いつも投稿ありがとうございます。気軽にシレっと行くような場所では無く、一歩間違うと生命の危機に直面するような場所ですね。『……淡水レンズの地下水……』とは何かと思い検索エンジンで調べてみました。知らない事ばかりで……HiHi。(JO1UBD)


第24回札幌QRPミーティング報告

#822 JF1ISC(JA8DIQ) 大久保 尚史

 9月21日、札幌市中央区民センターにて第24回QRPミーティングを開催しました。
 札幌QRPミーティングはQRPerだけでなく、工作が大好きな方々にお集まりいただいていますが、今回も15名と多くの局に参加いただきました。今回は、ラジコンボートや模型飛行機も集まり、いつにも増して賑やかなミーティングでした。持ち寄られた作品の中から何点かを紹介します。

 参加者はJA8AVC、JA8BQL、JA8CCR、JA8CXX、JA8CXY(初参加)、JA8DES、JA8DIQ、JA8JDQ、JA8JPO、JA8MRH、JE8GNZ、JH8BTS、JH8BWH、JH8LDW、JR8LJSの15名。
Sapporo QRP Meeting
Sapporo QRP Meeting
【図1~2】札幌QRPミーティング参加者の皆さん

1. 21MHz CW QRP トランシーバー(JA8CXX)
 ハムフェア2014自作品コンテスト自由部門でみごと優秀賞第1席を獲得した、「7MHz CW QRPトランシーバー」の21MHz版です。トランシーバーのみならず、電鍵もスピーカーボックスも手作り。電鍵のベースは黒檀でとても美しいです。どんなに立派な工作機械をお持ちなのかお伺いしたところ、ごく普通の工具しかなく、細かなところはドリルの歯を指で回して加工したとのこと。
JA8CXX in Sapporo QRP Meeting
【図3】JA8CXXさんの新作、21MHz CW QRPトランシーバー

2. Voice Key(JA8DIQ)
 ハムフェア期間中に行われた「QRPerの集い」のじゃんけん大会で当たったJA1IXI作の音声ではたらくストレートキー(VOICE KEY)を実演しました。マイクに向かって喋る「ト・ツー」によって、キーイングができる優れものです。尚、Voice KeyについてはQRP NEWS 9月号 Vol.57-6に詳細が掲載されています。また、ユーザーレポートはJA8DIQから別途いたします。
JA1IXI's Voice Keyer in Sapporo QRP Meeting
 【図4】JA1IXIさん作成のストレートキー(VOICE KEY)のデモ

3. 新バンドTX用コイル(JA8JPO)
 新たに開放される472~479kHzで早くもTXを試作されたとの事。UY-807で42W出したそうですが、その終段コイルがこれで、インダクタンスは100μH。
Sapporo QRP Meeting
 【図5】JA8JPOさん作成の終段コイル(100uH)

4. パラボラアンテナ (JA8CCR)
 パラボラアンテナの指向性利得は鏡面精度にも依存します。そのため、お椀に石膏を塗って、放物線の形をした型紙で石膏を削り取って乾燥させ、表面にアルミ箔を貼って鏡面精度を上げたそうです。その他、アマチュアには入手困難な矩形導波管の代わりに、ホームセンター等で廉価に入手できる銅の円管を使ってみたりと随所に工夫をされています。
Sapporo QRP Meeting
 【図6】自作パラボナアンテナ

5. SDR (JA8JDQ)
 USBインターフェースの1,000円程度のSDRをご紹介いただきました。PCにアプリを入れれば、スペアナにもなりウォータフォールも表示されます。30MHz以上であれば、結構使い途があるのではないかと思われます。FM放送の受信は全く問題なくできました。
Sapporo QRP Meeting
 【図7】JA8JDQさんのSDR受信機のデモ

5. 放課後
 いつものように終了後、狸小路の「お刺身居酒屋 瑠玖」で20時頃まで熱く議論いたしました。
Sapporo QRP Meeting
 【図8】左からJH8BTS、JA8MRH、JA8DIQ、JA8JDQ、JA8AVC、JR8LJS

編集担当から

 大久保さん、いつも報告ありがとうございます。
 JA8CXX高野さんは2台目の21MHz版ですか、着々と進んでますね。また、JA8CCRパラボナの石膏による整形は、良いアイディアですね。僕も5.6GHz帯に挑戦すべくアンテナはどうしようか悩んでいたのですが、参考にしたいと思います。でも5.6GHz帯が見れる測定器をまだ持ってないので、MIxerで変換しようか妄想中です、HiHi。


編集後記

JO1UBD 丸山 裕二

★10月号をお届けいたします。追悼特集については、急な投稿依頼にも関わらず、ご協力ありがとうございました。

★数年前に来日して、その著書がブームとなった米国政治哲学者のマイケル・サンデル氏の学派、コミュニタリアニズムについて再考していました。QRPクラブに参加して良かったと思ってもらうには、何をすべきかなど。微力ながら会報を通じて、楽しみながら関わっていきたいと思います。

★QRPコンテストの準備レポート、ACAGの移動運用レポート、ハイバンド帯でのDX交信レポート、また、Rigや周辺機器の製作や工夫など、皆さんからの投稿をお待ち致します。
投稿の宛先は、qrpnews@jaqrp.net です。(@を半角に変えてください)

JA8IRQ 福島 誠

★今回ははからずも尾崎さんの追悼特集号となってしまいました。尾崎さんの作品はJN1NGCさんのWeb内のJE1RYH尾崎さんの自作品というコーナーでまとめて紹介されております。TTT加藤さんやNGC鈴木さんといった電子工作の名人たちがスゴイと絶賛するのが尾崎さんの実装技術で、穴開き基板で空いている穴がほとんどないという伝説がありました。

★ 私自身は、数年前にジャンクの水晶を大量に入手しては頒布していた時期がありましたが、その時に尾崎さんに特性を計測していただいたことがありました。その時のやりとりは以下のページに残っております。
JA8IRQ イシイシ交換・水晶発振子の頒布について(現在は水晶の頒布は終了しています)。これからもいろいろ教えていただきたいと思っていた矢先の訃報でとても残念ですが、QRPクラブの活動を盛んにすることが尾崎さんの遺志にもかなうのではないかと思っています。