JARL QRPクラブ会報 2015年10月15日発行 Vol.58-7
No. | 2015年10月号 目次 | コールサイン | 筆者 | 1 | 【製作】7MHz AM QRP送信機の製作 | JA8CXX | 高野 順一 |
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2 | 【運用】通信の遺跡巡礼の旅 オホーツク編 | JR3ELR/1 | 吉本 信之 |
3 | 【レポート】QRPなDXの世界 | JA1KGW/JA2OP | 青山 憲太郎 (Kentaro Aoyama) |
4 | 【小ネタ】SSBモニタ | JG3ADQ | 永井 正範 |
5 | 【告知】QRPキットJP60頒布について | JE1ECF | 斎藤 毅 |
6 | 【編集後記】 | JA5PSJ/9 | 小谷 一孔 |
7 | 【編集後記】近況報告 | JA8IRQ | 福島 誠 |
【製作】7MHz AM QRP送信機の製作
7MHz AM QRP送信機の製作
#971 JA8CXX 高野 順一
ハムフェア2015自作品コンテスト規定部門のテーマが『7MHz AM送信機』と発表されたとき、四十数年前に真空管(6AR5)で7MHz AM送信機を自作して開局したことを思い出しました。
このテーマなら自分にも出来るかもしれないと思い、正月から構想を練り始めました。
ありきたりのAM送信機ではつまらないので、SBM(Single Balanced Modulator)方式の低電力変調を試してみることにしました。
【図-1】 試作したSBM変調送信部基板
励振段までは成功して、かなり良い変調にすることができました。
しかし喜んだのもつかのま、AB級の終段を動作させるとトラブル発生。
送信出力が時間経過とともに増加してゆくという現象に見舞われました。
可変水晶発振→緩衝増幅→SBM→緩衝増幅→励振増幅→終段増幅という6ステージ、しかも発振から終段までずっと7MHz帯というストレート構成なので、出力が前段に回り込んで異常発振を起こしているのかもしれません。
色々対策を施しましたが効果なく、締め切りに間に合いそうもなくなり、SBM方式低電力変調は今後の課題として残し、今回は終段コレクタ変調でいくことにしました。
こちらはなかなか深い変調が掛からず、またもや悪戦苦闘しましたが、なんとかまとめあげて5月末にJARLに作品を送付しました。
【図-2】 外観
【図-3】 内部
AM送信機なら簡単にできると思って作り始めましたが、様々なトラブルに遭遇し、完成までに5か月もかかってしまいました。
余分なものを削ぎ落とし、結果的には非常にシンプルなAM送信機となりましたが、優秀賞第一席を頂くことができました。
【図-4】 賞状、カップ
東京でのハムフェアが終了してから2週間後、北海道ハムフェアで中古オシロスコープを格安で入手できたので、変調波形を観測しながら調整し直しました。また、簡易マイクコンプレッサを組み込んだり、変調器出力から終段増幅にいたる回路に手を加えて、更にしっかりした変調がかかるようになりました。
【図-5】 搬送波と1kHz変調波の波形
RXはアルインコDX-R8、アンテナは地上高8~12mの傾斜型ダイポールという組合わせで運用しています。
9月中旬まで7MHzの国内コンディションは異常な状態が続いていたこともあり、あまりたくさんの交信実績はありませんが、それでもこれまでに国内1、2、3、6、7、8、9、0エリアの局と交信できました。
定格仕様 | |||
ファイナル | 2SC2078シングル | ||
送信出力 | 1W | ||
送信周波数 | 7.172~7.198MHz | ||
変調方式 | 終段・励振段コレクタ変調 | ||
電源電圧 | DC 9~12V | ||
消費電流 | 無変調時 | 600mA | |
最大変調時 | 1200mA | ||
外形寸法 | 150(W)×71(H)×150(D) | (突起物含まず) | |
重量 | 950g |
【図-6】 ブロックダイアグラム(図をクリックすると拡大します)
【図-8】 変調部、制御部 回路図(図をクリックすると拡大します)
編集部より
高野さん、入賞おめでとうございます。内部の配線もパネルのデザインもすばらしく、さすがに入賞する作品は別格だなあという感じを持ちました。今後の作品にも期待しております。こちらに自作品コンテストの講評(音声)がアップされていました。
なお、自作品コンテスト2015の入賞者としては、QRPクラブ会員から高野さんだけではなく規定部門優秀賞第3席にJR8DAG菅野さん、自由部門優秀賞第一席にJA1VXQ塚原さんが選ばれています。おめでとうございます。昨年まで常連入賞者だった冨川さんはコンテストの裏方に回ってしまったため、もう作品を出せなくなったそうです。(JA8IRQ)
通信の遺跡巡礼の旅 オホーツク編
リタイヤ後活性度が落ち気味のJA9CZJ御大を引っ張り出すネタを詰め込んだオホーツク巡礼打電旅、果たして結果は。
#33 JR3ELR/1 吉本 信之
(旅程)
◎千歳~留萌~初山別~稚内~猿払~紋別~広尾~襟裳岬~千歳
千歳空港で合流しレンタカーで1300km走行した4泊5日の旅です。八割以上が一般道の走行です。日本海側のオロロン街道、北のオホーツク街道、東の黄金街道と走り回りました。途中ヒグマとの遭遇こそありませんが稚内市街地で路上を占領したエゾシカの群れに道を譲り、えぞたぬき、アライグマ、エゾキツネに出くわしたりと単調な運転の中に時折ドキッとさせられる走行でした。
(運用)
1.宿泊地運用
夕方の便で千歳入りしたので、初日は砂川SAまで前進して車中泊。二日目は稚内市勇払町のコテージで宿泊運用しています。(写真1)ここに全長40m+20m位のワイヤーを水平展開してカップラーでならしてからFT817につなげば運用準備終了でした。何しろ真っ暗な山の中です。ノイズも無く夜中は北米あたりまで聞こえていました。(写真2)
【写真1】稚内の宿
【写真2】ja9czj勇払打電
実は二日目の宿泊候補は猿払村の道の駅隣接のコテージを考えていました。(写真3,4)地平線と水平線が広がり電波が飛ばないはずが無い、ノイズに邪魔されるはずが無いという最高の環境です。(ただし完全自炊&寝具持参の環境です。)電波の飛びとノイズの無さはこちらの方が良かったものの門限の夕方5時までにたどり着くのが難しく100kmくらい手前の勇払町のコテージで打電しています。
【写真3・4】(参考)猿払バンガロー
三日目の宿泊地は紋別の森林公園内にある旅の宿からまつです。2階の窓から中庭にそびえるカラマツの枝まで極細ラッピングワイヤーを20mほど伸ばして打電開始。(写真5)
こんなのでも結構飛びました。
【写真5】旅の宿カラマツ
2.アウトドア運用
QRP運用のだいご味はアウトドア運用にあり。とはいっても奄美、琉球ではハブが、対馬では猪と鹿の出没で場所を選びます。北海道では当然ヒグマの来ない場所が絶対条件です。
a.樺太真岡郵便電信局員自決報受電場所
ここが今回の通信の遺跡巡礼の地です。猿払の海岸には樺太間海底通信線陸揚所の跡が残っています。(写真6,7,8,9,10)
【写真6】宗谷海峡電信1号
【写真7】宗谷海峡電信2号
【写真8】猿払打電1
【写真9】猿払設営中
【写真10】猿払運用全景
稚内市の山上に建つ氷雪の門の横には、真岡局で自決した9名の殉職電話交換手の名を刻んだ慰霊碑が建っています。(写真11,12)
【写真11】殉職碑
【写真12】氷雪の門
陸揚所の跡には1本ずつ円筒アクリルケースに格納された殉職していった交換手の声を伝えた電話ケーブル、そしてサイレントキーのそのときまで握り続けた電鍵の断続波を伝えた電信ケーブルが並んでいます。(写真6,7)
この筒の列はまさに墓標そのものでした。その前で私の下手な電信が流れたのではまことに申し訳ないので、KCJの古参JA9CZJ僧正にお願いして慰霊打電を始めました。そして後半が私の打電でした。(写真8)
b.道の駅運用
お手軽運用の代名詞が道の駅。枝幸、幕別虫類、苫小牧ウトナイ(写真13)と打電しましたが、虫類で「スズメバチ」の襲撃にあってしまいました。
塗色が黒のレンタカーめがけて二匹のスズメバチが憎しヒグマめ!!とばかり体当たりを繰り返し飛び去ってくれません。ウシアブとさしばえも車体に停まって動きません。放牧牛がホルスタイン主体の北海道だから車体が黒でも大丈夫だろうと思っていたら現実は甘かった。
車外に出られなくなったので静かに車を動かしてスズメバチとウシアブ、サシバエを振り切り打電のアンテナを撤収しました。どれもやられたら病院のお世話になってしまいます。
【写真13】ウトナイ打電
c.強風と霧の襟裳岬運用
風が強く立ち木の無い泥炭が岩盤に乗った草原です。強風で有名の襟裳岬で試そうと持参した凧揚げアンテナは風が強すぎて展開できませんでした。仕方なく猿払と同じく3.6mグラス竿を建てて40mのLWをひっかけての運用になりました。(写真14)
【写真14】襟裳岬打電
d.モービル運用
走行中はこんないい加減なアンテナを天井に張り付けて29MHz/FMを運用しました。(写真15)てーげーの極みのアンテナですが大自然のお助けが発生!!オロロン街道を走行中おきた日本海ダクトのおかげで2局交信できました。V/UHF帯は予想の通り全く信号が聞こえませんでした。
【写真15】29MHzアンテナ
通信の遺跡巡礼の旅、次は再び南の島を巡ってみたいと思います。
de.JR3ELR/1
編集部から
吉本さん、北海道縦断無線の旅のレポートありがとうございます。100km走っても景色が変わらない海岸線や対向車に出会わない山道などが北海道ドライブの醍醐味ではないかと思います。次回は南の島のようですが、その次に北海道に来られるときにはぜひ、アイボールをしましょう。(JA8IRQ)
【レポート】QRPなDXの世界
海外のQRPper
JA1KGW/JA2OP 青山 憲太郎(Kentaro Aoyama)
BA6QH/QRPper、Ruanさんの1WとのQSOの紹介(No.5)
中国のBA6QH/QRPper、Ruanさんと、これまでの2AY QRP QSOは14、18および21MHzの3バンドで4回のQSOをしております。このうち1ST QSOは2006年7月26日、20:10JST、14.06MHzにおける2WAY QRP QSOでした。
BA6QH/QRPper、Ruanさんのリグは、FT-817ND、1Wとダイポール・アンテナとの組み合わせでした。その後の18と21MHzバンドでのQSOは何故か何時もFT-817NDを5Wに設定しての2WAY QRP QSOでした。
BA6QH/QRPper、Ruanさんの中国名は“阮東升(Ruan Dongsheng)”ですが、真ん中の“東”は日本にはない中国独特の略字を使用しています。
アクティビティの高いQRP局ですから、多くの日本のQRPerの方がQSOされていると思います。QRZ.COMでのBA6QH/QRPper、RuanさんのコメントとQSLカードです。
I like QRP.and enjoy it! | ||
Rock-Mite(BD4RG Development 7.023MHz 5w) | ||
【図1,2】BA6QHさんのQRZ.COMでの自己紹介
【図3】BA6QHさんのQSLカード
【図3】BA6QHさんのQSLカード データ面
編集部から
青山さん、いつもありがとうございます。中国本土のQRPerの紹介は珍しいです。阮はベトナムだとグエンさんですが中国ではRuanさんになるのですね。検索したところブログもやっておられるようです。紹介ありがとうございました。(JA8IRQ)
【小ネタ】SSBモニター
JG3ADQ 永井 正範
SSBの電波をモニタするにはフィルタを通さない素の音を聞くのが良く、そのためにはダイレクトコンバージョン方式が最適と思います。
アンテナ端子からの入力信号と水晶発振させた信号を検波部で混合し、LM386で低周波増幅するという簡単な回路です。
QRP運用を考え検波段の前に広帯域増幅をつけました。高調波を利用して2倍、3倍等の周波数を聞くこともできますが、音質が若干違うように思えるため基本波で使うのが無難でしょう。X1,C1,T3を交換すればHF~VHFの色々な周波数で利用できます。
【図1】SSBモニターの回路図
【図2】ラグ版に組み込んだSSBモニタ
編集部から
永井さん、手持ちの部品でちょこっと作れそうな回路の紹介、ありがとうございます。アンテナ後にフィルタを入れて、水晶をVXOにしたら簡単な受信機になりそうだな、とか妄想をしそうですが、そうするとDC受信機ならではの混信が出てきて、やっぱりスーパーじゃなきゃだめだということになりそうです。欲張らないで使うのが良いのかもしれません。(JA8IRQ)
QRPキットJP60頒布告知
クラブ60周年記念「JA Pepper60」の頒布予約を開始。
#696 JE1ECF 斎藤 毅
お待たせしました。クラブ60周年記念「JA Pepper60」21MHzDSBトランシーバー・キットの頒布予約を開始します。
●頒布台数は限定60台。一生に一度のチャンスです。
●予約はお一人1台のみとします。
●キャンセル不可。
●前金制(頒布価格の一部8,000円)となります。
入手条件は以下の通りです。
- 現在、JARL QRPクラブの正員で2016年以降も継続して正員の意思のある方。
- 周波数ディジタル表示の21MHz帯トランシーバーを所有していること。(製作時の基準として活用できます。)
- ハムフェア2016のクラブブースにて展示協力の意思がある方。
- 調整済基板キットは初めて電子工作をする方。または65歳以上の方を対象とします。
頒布形態 | 価格(予価) | 備考 |
(1)パーツキット | 16,000円 | |
(2)パーツキット(ケース付) | 23,500円 | |
(3)調整済基板キット(ケース付) | 27,500円 | 頒布台数は上限10台限定。 |
※ ケースは取付穴加工済み
※ パーツキットの入手後はノークレーム、ノーリターンでお願いします。
※ 技術面でのアドバイスを実施しますが、パーツキットは修理等の作業は実施いたしません。
申し込み希望者はJE1ECF斎藤までメールをください。
Eメール je1ecfsaito@athena.ocn.ne.jp(@は半角@に置き換えてください)
募集締切日は2015年10月31日
なお、締切日前でも頒布予定数に達した時点で募集は終了します。
予約申込後、前金の振込先は個別に連絡します。前金は基板製作・部品購入に充当します。
クラブ正員以外で入手を希望する方はこの機会にクラブへの入会をお勧めいたします。
以上
編集部から
斎藤さん、頒布の告知ありがとうございます。ようやくここまで来ましたね。
このトランシーバについては会報の3月号に概要の発表があり、会報の4月号で回路図を、会報7月号ではケースの外観や配線済みの基板が公開されています。なお、試作品では片面の印刷なしの基板ですが頒布するキットは両面スルーホール基板で部品番号がシルク印刷されるそうです。
ただし、DSB機とはいえ低周波増幅の386アンプと三端子レギュレータ以外にICを使わず、ディスクリートのトランジスタを多用した設計(21石!)ですので、かなり作りがいのあるキットではないかと思われます。会員のみなさん、ぜひチャレンジしてみてください。(JA8IRQ)
編集後記&近況報告
JA5PSJ/9 小谷一孔
QRP会報の編集のお手伝いをさせていいただくことになりました。福島会長の足を引っ張らないようにがんばります。よろしくお願いいたします。
【編集後記】近況報告と雑感
JA8IRQ 福島 誠
10月号をお届けします。今月は原稿がすんなり集まったので、予定通り15日に発行することができました。
なお、11月号以降の原稿も募集中です。製作や移動運用レポートなどお待ちしております。宛先は qrpnews@jaqrp.net です。(@は半角@にしてください)
引き続き編集スタッフを募集しています。やる作業としては会報の原稿の依頼をすること、そして集まった原稿をHTML化し、画像を整理してブログに登録していくことです。ブログはwordpressで作っており、それほど複雑な構造やタグは使っておりません。ご協力いただける方はqrpnews@jaqrp.netあてにメールをください。
自作のために必要な道具とは?
このページを見にくる人の中には、アマチュア無線を再開して、そろそろ自作をやりたいという復活組の方もいらっしゃるでしょう。
アマチュア無線機器の自作は簡単なものは簡単だし、複雑なものは複雑で難しいです。(当たり前だけど)
簡単なものでも、きちんと完成させるためにはそれなりに根気や注意力が必要です。
また、最低限の道具類、工具や測定器などが必要です。
当会の会員でもあるJA1AMH 高田さんの「ゼロから作るアマチュア無線局(1993年発行、絶版)」では受信機製作の七つ道具として『ディップメータ、テスター、RFチェッカー、周波数カウンター、スピーカーBOXと8Ωのダミーロード、受信機、またはトランシーバー』が必要で、さらにSSGやオシロスコープ、電子電圧計などがあればよいと書いていました。送信機はそれにLEDワンターン、電力計、ダミーロードが加わります。
また、同じく会員のJF1RNR今井さんは「ランド方式で作る手作りトランシーバ入門」(2007年発行)で電子工作に必要な工具として、はんだごて(20Wと60Wの二本)、ラジオペンチ、ニッパ、ピンセット、カッター、ドリル、リーマ、やすり、をあげています。使っている測定器はアナログ・テスタ、デジタル・テスタ、周波数カウンタ、RFプローブ(メータと組み合わせてRFチェッカーになる)、QRPパワー計、BCL受信機だそうです。
私の印象では、ディップメータや電子電圧計(昔のバルボル)は使われなくなり、オシロスコープを使う人が多くなったようです。もちろん40年前から考えると、最近のディジタル表示のトランシーバ自体が、超高性能の測定器であることはもちろんです。
ありがたいのはデジタル技術が進んだおかげで、周波数カウンタなどは簡単なものが3000円くらいでヤフーのオークションなどで手に入るようになったことです。VFOもデジタル制御のものが安く手に入ります。LCメータなども比較的に安い市販品があります。また、部品や自作の情報なども入手しやすくなってきました。
まずはキットから
自作の初心者が雑誌やWebの製作記事をみて、部品を買ってきて作ってもなかなか思うようには動きません。
それにはいろいろな理由がありますが、JF1OZL砂村さん(元会員)はご自身のWebで「正しい自作と間違った自作」という記事で以下のように書いています。
(以下引用)
- 同じ型番のトランジスターでもhfe(増幅率)が違えば動作点を調節しないと動作しません。バイアス調節は当然必要です。
- ましてや、同じ部品番号が無い場合、部品屋さんの言う「同等品」は「工夫して、回路の諸定数を調節すれば使える。」とゆう意味で、「まったくそのまま置き換え可能。」ではありません。(話がそれますが、逆にこういった訳で、最近アキバの部品屋さん達は、お客の言った品番が無いと「無い(ムムム)!」の一言で済まして終い「同等品」を薦めようとしません。困ったものです。)
- 最初から完全には組めません。100個の部品の内1個でも付け間違えて居ると、全体として動作しないのです。(また、話がそれますが、おかげで、壊れたラジオからでも99%の部品は再使用可能なんですね。)
- 雑誌の記事の図面は結構間違っています。私も筆者の一人ですが、筆者の怠慢や編集者のズサンなどで、1Kオームと1オームの書き間違いなんて年中です。わかる人には簡単にわかるんですが。
- それぞれ、上記1から4の落とし穴が待ち構えていて、それぞれ、2分の1の確率で落とし穴に引っかかるとすると、2の四乗分の1しかうまく事は運びません。その確率は6%程度です。
(引用ここまで)
トランジスタだけではなく、コイルも同じ性能のものを入手するのが難しい部品です。初心者には違う部品でも正常に動作するかどうかがわかりません。こうして、作ってはみたけどうまく動かなく、部品が悪いのか、製作ミスなのか調整ミスなのかがわからなくて放り出すことになってしまいます。
その点、メーカー製のキットは再現性を考えて作られていますので、初心者でも完成できる可能性が高いのです。
初心者向けのキットとして昔から定評のあるのはJA1AMH高田さんの設計になる7MHz帯用送信機のQP-7です。たった3石ですが、回路図どおりにゆったりと組んであり、不器用な人でも完成させられるようになっています。簡単なキットですがJH2HTQ中井さんは、往年の名受信機JR599と組み合わせて使っていますし、JR7HAN花野さんもアイテックのSR-7と組み合わせて(改造して)実際の交信に使っています。
QP-7はつい最近までキャリブレーションで販売されてましたが、今はコイルが品切れになって休止中とのことです。再開を待ちたいところです。ただ、姉妹機のQP-21(21MHz用)の方はまだ在庫があるようです。
上記の花野さんが改造して使っている受信機のSR-7(アイテック)も定評のあるキットですが、今は 新SR-7となって入手できるようです。
ぜひ、みなさんキット作成に挑戦してみてください。そしてその結果を会報にリポートしてください。
ラズベリーパイその後
7月号から「ラズベリーパイ」という名刺サイズのLinuxコンピュータで遊んでいる話を書いてますが、その3回目です。
今月は「エレキット」で有名なイーケイ・ジャパンの真空管ハイブリッドデジタルアンプTU-H82を試用することができたので、組み合わせてみました。TU-H82は、12AU7を入力に使ったデジタルアンプで、コンピュータに接続できるようにUSB-DAC(デジタル入力)も付属しています。ラズベリーパイにはUSBジャックがありますので、これを組み合わせることでオーディオシステムができます。ラズベリーパイは100円ショップのはがきケースに入れて、アンプと接続するUSBケーブルと電源用のケーブルのみ外に出しました。操作は無線LAN経由で行い、接続先をスマートフォンにしています。
【図1】ラズベリーパイとアンプの接続
【図2】100円はがきケースに組み込んだラズベリーパイ本体
ラズベリーパイにはVolumioというソフトをインストールしました。これはラズベリーパイのOSと一体化して配布されており、これをダウンロードしてSDカードに入れて起動するだけで、ソフトのインストールが完了します。
インストール自体は簡単に終わるのですが、実際に使うときには何度も失敗しました。エラーが出てうまく起動してくれないのです。
何十回と再起動を繰り返してみてようやくわかったことは、起動時に電源の容量が足りないと失敗するということでした。電源にはスマホに使う5V1A以上の充電器を使うのですが、規格上は大丈夫でも実際には起動時に十分な電流を流せずに失敗することがあるのです。電源用のUSBケーブルに電解コンデンサをつけたりしてみましたが改善されず、結局、手持ちの優秀な充電器(ソニー製)をラズベリーパイ専用にすることで解決しました。(基板上に大容量のコンデンサをはんだ付けするという裏技は試してません)
現在、このシステムは500曲以上が入るBGMプレーヤーとして使っています。