JARL QRPクラブ会報 2020年1月29日発行 vol.62-04 The JARL QRP Club
JARL QRPクラブ会報 2020年1月29日発行 vol.62-04
JARL QRPクラブ会報 2020年1月29日発行 vol.62-04
No. | 2020年1月号 目次 | コールサイン | 筆者 |
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1 | 【運 用】 北海道無線旅の巻 | JR3ELR/1 | 吉本 信之 (Nobuyuki Yoshimoto) |
2 | 【運 用】ELR離島打電随行記 | JA8IRQ | 福島 誠 (Makoto Fukushima) |
3 | 【製 作】 AutodyneでQRPコンテスト参加 | JA0IXX | 赤羽 史明 (Fumiaki Akahane) |
4 | 【お知らせ】QRPクラブからお知らせ | JA8IRQ | 福島 誠 (Makoto Fukushima) |
5 | 【編集後記】 | JR7SOX | 菊池 弘二 (Kohji Kikuchi) |
6 | 【編集後記】 | JA8IRQ | 福島 誠 (Makoto Fukushima) |
【運 用】 北海道無線旅の巻
#0033 JR3ELR/1 吉本 信之
夏の北海道で千歳空港を起点に6日間にわたり無線三昧の旅をやってきました。
【江差】7月26日
朝9時出航の船が江差の港に入って来るまで鴎島の横でJA9CZJは千歳空港留置で発送した無線道具を広げてリグ試験を兼ねた上陸第一声。
【写真 1】上陸第一声
【奥尻島】
JA8IRQも合流し三人で乗り込んだ奥尻島。ベタ凪航行なれどもJA9CZJはマグロ状態で寝たまんま。どうなることやらと思っていたら、着岸した途端顔色が戻り三人元気に北端の賽の河原と宿、港で運用しています。
【写真 2】JA8IRQ@賽の河原
【写真 3】JA9CZJ@賽の河原
【写真 4】FT-817/5W運用中
【写真 5】奥尻港打電
【写真 6】宿舎で打電三昧
【八雲町熊石】7月27日
奥尻島から江差の港に戻ったのが16時。日のあるうちに次の転戦地、ロケの良さそうな宿でアンテナを展開して打電三昧です。
【写真 7】熊石で打電三昧
【旭川】7月28日
八雲町熊石から次の転戦地の旭川迄、途中休憩をはさみながら高速道路を北上して午後2時過ぎにJA8CCLご自慢の日本最大規模のシャックに到着しアンテナを借用して打電開始。飛びます!飛びます!海を越えて何処までも。HI
【写真 8】JA8CCL局舎にて
【写真 9】巨大アンテナ群
【上富良野】7月29日
翌朝旭川から次の転戦地日高町へ観光渋滞地帯を避け裏街道を一気に南下の途中、ロケ抜群の峠で休憩しながら運用。
【写真 10】上富良野で運用中
【占冠村】
高速インター近くの道の駅で再度休憩打電。
【写真 11】占冠村で打電
【日高町】
観光客皆無の三間地。サルナシとクルミの宿でのんびりと打電。(写真撮影忘れ)
【厚真町】7月30日
千歳空港に向かう途中で地震源の火山灰堆積層と母岩を調べた後、JA9CZJは北海道最後のFT8。
【写真 12】厚真町でFT8運用
【安平町】
千歳空港発が一日1便のJA9CZJを送り届けた後、隣町の安平町で最後の打電。(写真13)
今回はネタが多すぎて無線系だけに絞って載せましたが奥尻島の漁師宿で出た赤雲丹(あかうに)旨かったですよ~~~。7~8月の北海道無線旅は日頃の罪滅ぼし。XYLを誘って種類と餌の海藻で匂いと味が変わる日本海の雲丹満腹編成を組むことを強く強くお勧めします。
【写真 13】安平町で最後の打電
de JR3ELR/1 吉本
【編集部から】
コメントは、次の記事に。(JA8IRQ)
【運 用】ELR離島打電随行記
#0678 JA8IRQ 福島 誠
全国離島打電の旅を続けておられる吉本さんが、奥尻島に再チャレンジするということで同行を志願しました。
【写真 1】函館バスで江差へ
自宅から、30分バスに乗って新函館北斗駅へ。そこからさらに2時間バスに乗って江差町に向かいます。
【写真 2】江差フェリーターミナル
江差でELR吉本さん、CZJさんと合流しフェリーに乗船。そこから2時間の船旅です。
【写真 3】奥尻に到着
奥尻島に無事に到着。ここでレンタカーを借りて島内を回り、運用場所を探しました。
【写真 4】賽の河原へ
奥尻島北部の賽の河原公園を運用地とし、ここで無線開始。空中状況悪く私のピコは7も21も全然応答がない。
【写真 5】島内一周
撤収してから奥尻島を一周しました。これは名所のつりがね岩です。
【写真 6】宿の近くの温泉
宿のすぐ近くの神威脇温泉、いいお湯でした。
【写真 7】宿の夕食
この旅館は吉本さんが選ぶだけあって、ウニ・アワビの豪華な献立でした
【写真 7】吉本氏は宿で運用
吉本さんは宿の窓からワイヤを庭木沿いに張って部屋からも運用します。松盛さんはレンタカーから無線運用。
【写真 8】吉本さん機材一式
吉本さんの移動運用機材一式です。
【写真 9】アンテナチューナ
チューナは広範囲に共振させることができるように、空芯コイルにタップをたくさん出したものをミノムシで選択しています。
【写真 10】キーヤーとパドル
キーヤーとパドルはこんな感じ。EDCのキーヤのようですね。
【写真 11】FT817
使い込まれて歴戦の勇士、という風貌ですね。
【写真 12】翌朝の朝食
【写真 13】JA8IRQの機材
めったに出てこない私の機材。電池は外付けです。今回は新しいチューナを使いました。翌日午前中も同じ場所で運用しましたが、交信できず。
【写真 14】フェリー乗船前
今回はボウズかと思っていたところ、フェリー乗船前にホイップアンテナで一交信できました。
【写真 15】おまけ画像
松盛さんにいただいたおみやげ。北陸出身の八村選手が好きだということで話題になったお菓子です。翌日、会社にもっていって同僚のお嬢さんたちと食べました。ごちそうさまでした。
【製 作】 AutodyneでQRPコンテスト参加
#1111 JA0IXX 赤羽 史明
エーコン管のソケットを二つ貰ったのがきっかけで、秋口に7MHz用0V1を製作しました。最初は954(P)-955(T)の構成でしたが、少し音が小さいのでAFアンプも954(P)に変更。その後いくつか改善を施しながら暫くワッチしてみましたが、「感度、選択度、安定度のいずれも思ったよりFBで、CWノートも良い。使い方をキチンとすれば、今でも十分実用になる。」と感じました。
【写真 1】二本の954、左は昭和16年海軍工廠製
【写真 2】AFアンプ(左) 955バージョン
【写真 3】オーディオアンプを954に変更後
【写真 4】Autodyne 全景
開局前に0V2受信機をいじっていましたが、それを使って実際にQSOしたことはなかったし、ちょうど開局して50年なのでその記念になればと、QRPコンテストにAutodyneで参加することにしました。
【0V1受信機の回路と定数】
受信機の回路自体はオーソドックスなものです。昔と違うのはQuが200以上のトロイダルコイルを使うことで、この辺はJA0BZC矢花さんがCQ誌の連載記事で解説していますから参照されてください。 追試される場合、検波管954の代替は6BD6がFBで、gmの大きな球は再生受信用途には必ずしも向かないようです。
【図 1】954-954 Autodyne 回路図
(1) トロイダルで巻いたRFコイルのANTリンクは1tがベストです。2tにすると音声出力はアップしますが、逆に選択度が悪化してしまい頂けません。(JA0BZCの測定結果によれば、7MHzではリンク1tの時に入力インピーダンスがちょうど50Ωになっています。)
(2) カソードのコイル巻線は2tが適当でした。3tだと帰還量が多過ぎるのか、SG電圧の上昇に伴いIMDのようなスペクトルを持つ異常発振が起こって困りました。
(3) B+は20V以上あれば十分に再生発振します。DC+100Vでは少しゲイン過剰で、+50~70Vがちょうど良い塩梅。B+は安定化が必須で、今回は以前3A5トランシーバの実験用に用意したDC69VのDC/DCコンバータを活用しました。(詳細はhttps://ja0ixx.web.fc2.com/posts/others8.htmlを参照ください)
(4) 検波管のプレート負荷は純抵抗(200kΩ)よりAFチョークトランスの方がFBでした。AM放送を聴くには抵抗負荷の方が音は良いと思いますが、オートダインでCWを聞くなら話は別で、チョークの方が引き込みは俄然少なくFBです。Ipが増加してもEpの落ち込みが小さいから、再生発振の周波数が不安定になり難いのでしょう。
(5) AF出力特性は620Hzがピークになっていますが、これは使用した9R59出身のAF出力トランスの特性が影響しているようです。500Hz以下では急激にレスポンスが低下して音が割れるので、ハイトーン(600~700Hz)のピッチでワッチしています。
【図 2】954 Autodyne の AF特性
(6) 五極管のグリッド検波は、ANTからの信号を発振回路自体にダイレクトに滑り込ませるため、強信号が入ると動作点がシフトしてOSC周波数が引き込まれるのが弱点です。FBなcondxでバンドが混雑した時やパイルアップが激しい時などはビヨービヨーと、何か咆哮のような凄まじい状況も生まれますが、大抵はATTで15dBも絞れば収まります。従い、ANT入力部の可変型ATTは必須といえます。7MHzでは250pFのANTカップリングバリコンで30dBまでは絞ることができます。使い勝手を考え、予め校正して10dBごとに目盛を付けておきました。(ATTに付いては更に後述します。)
(7) 再生発振をかけた際にANT端に漏れ出てくるRFエネルギーは実測-26dBm。 超再生受信機ほどのパワーはないから目くじらを立てる必要は無いと思いますが、厳密に言うと引っかかるレベルです。この0V1の実測感度は-10dBμより良好なので、受信感度的には高周波増幅は不要ですが、不要輻射抑圧の観点では、RFアンプを持つ1V1のほうが20dB以上は有利だろうと思います。
(1955年6月号CQ誌を見ると、JA1AA庄野さんのオートダインは奇しくも954の1V2。SWL時代~開局直後にかけてそれが大活躍したと記されています。Tnx JA0BZC)
【図 3】参考:CQ誌 1955年 6月号(35ページ) JA1AA のオートダイン
【実際のQSOのためシステム整備】
0V1と送信機をつなぎ、スーパーヘテロダインやD/C機の場合にやっていた手順で実際にキャリブレをとってみると、送信機前段を動かしただけでも受信周波数がスッ飛んでしまってゼロインは困難でした。これではQSOなど到底望めないので、先ずどのくらいの信号レベルなら良いのかSGでチェックした結果、引き込みはシングルトーンで-58dBm(電界強度55dBμ、S表示で9+15dB)までなら許容でき、望ましくは-70~-65dBmくらいが最もキャリブレを取りやすいことも分かりました。
なお、ANTを切り離すと入力負荷変動で再生発振周波数が動いてしまうのでこれもNG。要約すれば、送信VFOのキャリブレ操作は、「ANTがつながった受信状態のままで、-65dBm前後の送信信号をストレスなくモニタできること」が条件となります。それに合致するよう、現用中のヘテロダイン式0.4W送信機と周辺に少し手を入れました。
【図 4】キャリブレ時のレベル配分説明図
(1) キャリブレ信号のレベル合わせ
->リレーの励磁ラインにトグルSWを追加。そのSWをoffにし、RL1と2だけ動作させずに送信機を動かし、IFキャリア(+16dBm)を加える。
->送信機にはRL1のアイソレーションを介して-30dBmが入力され、送信機出力端には-20dBmが出てくるが、RL2のアイソレーションにより受信機ターミナルに現れる電力は-66dBmになる。(裸のRLアイソレーションはもっと良いレベルにありますが、配線などのストレー容量により実質的にはその程度のレベルになります。)
->相手局にゼロイン。
->RL励磁のSWをNormalに戻して相手をコール。
QRPPといえども、負荷オープン状態のまま送信機を動かすのは、本来は良くないことです。オーソドックスにやるならキャリブレ時だけ送信機出力にATTが入るように細工すれば良いのでしょうが、発振など不安定動作に陥ることも無く、スムースにキャリブレできているので、テンポラリーはこれでよしとしました。
(2) ATT
前述のANT結合調整用の250PFバリコンは一種のリアクタンスATTなので、回すと再生発振周波数に少なからず影響を及ぼします。下の表にそのシフト量を示しますが、KHz単位で動くので急にグルっとやると相手局を見失うほどです。これを嫌う場合は抵抗で定インピーダンスのATTを組み、SWで切り替えればよいでしょう。最近はバリコンの入手も難しくなっていますし、その方が費用的にも安くなると思います。
(入力レベル: +40dBμ )
減衰量(dB) | ATT種類 | |
250pF VC 容量可変 | 50Ω系 ATT | |
0 | Ref. | Ref. |
10 | +2.1KHz | -0.1KHz |
20 | +3.6KHz | -0.1KHz |
30 | +4.4KHz | -0.1KHz |
【表 1】ATT減衰量と再生発振周波数のシフト量の関係
(3) その他
使っているDC/DCコンバータは単三電池の単体電圧が@1.5V →1.15Vまで低下しても69Vを維持できる優れものですが、運用中いつバッテリー切れになるか分からない不安があったので、電圧モニタ用に外付けのDC100V計だけ用意しました。
コンテスト当日の7MHz condxは完全に近県スキップ状態で、聞こえてくるのは専ら6や8が中心。参加各局とも信号はさほど強くありませんでしたが、オートダインはスーパーで聞こえる局をすべてFBに捉えており、弱い信号は静かなAutodyneのほうがむしろ聞き取り易かったと思います。
キャリブレ/ゼロインは狙い通りスムースにでき、QSOも目標のミニマム局数は無事クリア。100年前にアームストロングが考案した回路と1943年製のAcorn管の組み合わせには歴史的な趣もあり、例年とは味わいの異なるコンテストになりました。
【写真 5】暗闇に浮かぶ0V1
AutodyneやDirect conversionなどのシンプル受信機を 「作ったよ」、「動いたよ」、「聞こえたよ」、で終わらせてはもったいなくて、HAMは「それでQSO」することに意味があるし、醍醐味だと思います。
SDRやJTモードに耳目が集まる今の時代に、この様なリグで実際に交信を・・・が共感を呼ぶのは、恐らくQRPなCWの世界だけでしょう。そう考えると、クラブ主催のSimple Receiver weekendとかRegen Dayなど数日有ってもいいかなと思います。 いかがでしょうか?
【編集部から】
ARRLでは、1月1日にSTRAIGHT KEY NIGHTというのを提唱していて、この日は縦振り電鍵やバグキーで交信するのだそうです。真空管式のリグを出してくる人も多いのだとか。カナダ在住の当クラブ会員のVE3CGC林さんに教わった話です。そんなことが日本でもできると良いですね(JA8IRQ)。
【お知らせ】 QRPクラブからお知らせ
#0678 JA8IRQ 福島 誠
QRPクラブでは、現在、次年度の役員選挙を行っております。私(福島)は3月末での退任が決まっており、この会報の発行体制を含めていろいろ変わることが予想されます。会員の方にはメーリングリストなどでお知らせしますのでご注意ください。
編集後記&近況報告
#1099 JR7SOX 菊池 弘二
◆web版THE QRP NEWSの画面右側に表示されるアーカイブをご覧になるとおわかりのように当局がお手伝いを始めた2017年頃から年間発行回数が減少傾向にありました。
当初時間が自由になるものと感じて福島さんへお手伝いを申し出てから二年以上が過ぎました。
結果はご覧のとおり。スタッフとして参加してきましたがあまりお力になれずに心苦しい限りです。
そこで誠に勝手ではございますが今年度いっぱいでお手伝いを終わらせて頂きたいと思っています。
これまで多くの投稿をして頂いたみなさんのおかげで会報発行のお手伝いを続けることができました。たいへんありがとうございました。 72
編集後記&近況報告
#0678 JA8IRQ 福島 誠
10年前くらいには地元の小学校で毎月工作教室をやっていたのですが、最近は勤務先の書店で思い出したようにやっております。昨年12月にはクリスマスツリーを、1月にはゲルマラジオを作りました。その様子は1月16日の北海道新聞道南版でも紹介されました。
【写真 1】新聞記事
長く保存してもらえるように(お母さんにゴミとして捨てられないように)4個100円のケースに入れてます。ふだんラジオを聞かないひとも、停電時などに思い出してもらえると役に立ちます。アンテナ用として10mのビニール線を付属し、ターミナルに接続します。皿ネジはグラウンドにつながっていますのでここを指で押さえると聞こえが良くなります。
【写真 2】ゲルマラジオの外観
ラジオの部品は以前にNPO法人ラジオ少年さんから分けていただいたものを使いました。なお、ラジオ少年さんは3月末で一般向けキットの頒布を終了するとのことですが、教育用にはその後も続けるそうです。
コイルは鼓型コアで作りましたので、巻き数が少なくて子どもたちにも簡単に作れます。
当地函館はAMラジオの放送所が3局ありますので、NHK第二を入れて4局を聞くことができます。ただし、4局を分離させるためにはコイルのタップから出力をとるなどの工夫が必要です。
【写真 3】ゲルマラジオの内部
◆ 次号の原稿を募集中です。あなたの実験、製作、運用レポート、小ネタなどを編集部あてお送りください。パソコンが苦手な方は当面、福島あて直接の郵送でもかまいません。(住所はMLや紙版会報などで確認してください。)宛先は qrpnews@jaqrp.net (@は半角@に)です。