JARL QRPクラブ会報 2014年12月10日発行 Vol.57-9
No. | 2014年12月号 目次 | コールサイン | 筆者 |
---|---|---|---|
1 | 全国集会に参加して | JE1ECF | 斎藤 毅 |
2 | 21MHz・QRP・CWトランシーバーの製作と QRPコンテスト参加記 |
JA8CXX | 高野 順一 |
3 | QRPなDXの世界 | JA1KGW | 青山 憲太郎 (Kentaro Aoyama) |
4 | DX短信 | JA1KGW | 青山 憲太郎 (Kentaro Aoyama) |
5 | ジャンク遊び ~スイッチング電源の再生~ |
JO1UBD | 丸山 裕二 |
6 | DC-DC昇圧コンバータが昇天……失敗談 | JO1UBD | 丸山 裕二 | 7 | AA8V/W8EXl 6CL6 one-tube transmitter の追加報告(予告編) |
10 | 編集後記 | JO1UBD | 丸山 裕二 |
JA8IRQ | 福島 誠 |
全国集会に参加して
#696 JE1ECF 斎藤 毅
2014年11月15日・16日と兵庫県淡路島にてJARL QRPクラブの全国集会が開催されたので参加いたしました。(写真は明石海峡大橋とゲストハウス花野)
【写真1】
【写真2】
当日東京方面から新幹線で移動された方についてはお疲れ様の一言を申し上げます。(早朝の停電事故の影響で運転再開したものの最大90分延となりました)
【写真3】
【写真4】
今回の幹事は関ハム出展メンバーに行って頂き、大変ありがたく思っております。お疲れ様&ありがとうございました。
開催地へのアクセスについては会報でアナウンスがありましたがバスを乗り間違いたり、また乗り遅れてタクシーを利用し東京~新大阪間と同額運賃を支払った方がいたりとハプニングもありましたが結果としては参加者がそれぞれ楽しいひと時をすごせたのではないでしょうか。
2016年にクラブ創設60周年を迎えるにあたり、プロジェクト(記念トランシーバーキットの頒布)を思案している私は、参加者(FUJIYAMAや634のプロジェクトメンバー、トランシーバーを自作する著名人)から貴重な意見をいただき、なんとなく考えていた事が具体的なものとなりました。結果、過去のプロジェクトと異なり、設計期間がないため、また、再現性を高めるため、
・市販キットのバンド変更による21MHz DSB機(記念ステッカー付)
・基板付バラキットとビギナー向け限定調整済基板キット
の2種類。(なお、調整済基板キットは会員ボランティアで製作予定のため、数量限定)。加工済ケースまたはケガキシール付ケースをセットにする(詳細要検討)等の基本仕様を決めました。
2016年にはこれを活用する記念コンテスト開催やハムフェアでの一斉展示を視野に入れることで2015年8月には頒布できるようにしたいと思います。
今後、会員へのリサーチを行い製作希望者数を確認したうえでプロジェクトの実施有無や頒布台数の決定(私案は60台)、プロジェクトメンバーの募集を行っていきたいと考えます。合わせて同一メーカーで21.4MHz付近で使用できる水晶(7.15・21.45、10.7・21.4など)の安価に確保したいと考えます。
まずは製作してみたいと思われる方はJE1ECF宛にEメールをお送りください。
さて、恒例のオークションでは「HAM Journal誌 No.44」とピコ6Zの基板をゲットしました。出品者には感謝いたします。
【写真5】
今回も参加者のみなさんから元気を頂きました。次回の開催地は決まっていません。できたら1・3エリア以外での開催を希望します。
【写真6】
【写真7】
【写真8】
編集担当から
☆斎藤さん、報告ありがとうございます。オークションでは良いモノをゲットできましたね。また、Face to Faceなミーティングの機会は、あまりありませんので、良い議論になったのでは思います。60周年記念機、楽しみにしております。(JO1UBD)
☆全国集会はJARL QRPクラブの年一度の合宿交流会です。旅館などに宿泊して宴会しながら旅館の庭に建てた仮設アンテナで交信したり、ジャンク品を交換したりしながら過ごします。幹事は料理や酒や温泉ではなくアンテナが立てられるかどうかで宿を探すという苦労があります。(JA8IRQ)
21MHz・QRP・CWトランシーバーの製作と
QRPコンテスト参加記
#971 JA8CXX 高野 順一
21MHzのQRPトランシーバーを製作しました。
【図1】外観写真
【図2】内部写真
今年前半に手掛けた7MHz機は製作、調整に時間がかかり、完成まで4か月も要してしまいました。
21MHz機は少し簡素化して楽をしようと考えました。そのため受信部はダイレクトコンバージョンでやってみることにしました。
しかし、試作してみると感度不足というか、ほとんど何も聞こえません。色々な混合回路・検波回路を試してみましたが、どれも似たり寄ったりでした。
そこで次に、ラジオ用ICのLA1600を使ったシングルスーパーを試作しましたが、これも原因不明の感度不足でした。
しょうがなく前作の7MHz機と同じ回路でシングルスーパーの受信部を組み立てましたが、どうしたものかこれも感度が異常に低く満足できるものではありませんでした。
今回各部のコイルは10Kのシールド付きコア入りボビンに0.2mmのポリウレタン銅線を手巻きして自作したものを使用していました。
ひょっとしたらこのコイルが原因ではないかと気付き、試しにFCZコイルに換えてみました。
するとみごとに感度が上がりました。逆にゲインが高すぎて低周波出力が歪むくらいなので、RF段、IF段のソース抵抗、AF段のエミッタ抵抗を大きくしてゲインを調節しました。
コイルの巻線は0.1mmのほうがQの高いコイルを作れるらしいのですが、断線が心配なので0.2mmの銅線を使用したことと、1次コイルと2次コイルを重ねて巻かないで隣の溝に巻いたため結合度が弱かったのが原因かなと思っています。
ダイレクトコンバージョンやLA1600使用の受信部がうまくいかなかったのも、自作のコイルが原因だったのかも知れません。
送信部も、実績のある7MHz機と同じ回路構成にしましたが、こちらは異常発振が発生して苦労しました。
VXOの可変幅を狭くしたり、段間の同調コイルの中間タップを使ったりして多少改善されましたが、ダミーロードをつないで送信し、モニター受信してみるとあちこちスプリアスだらけでしかも周波数が高い方に変動しまくって、まるでサイレンの音のようです。
もう一度配線に間違いがないかチェックしたらRIT回路に間違い発見、VXO水晶発振回路に余計な長い線がつながっていました。
これが原因で高周波出力が回り込んで、異常発振していたようで、配線を直したら異常発振はピタリと止まりました。
結局、また何か月もかかってしまいましたが、ようやく出力1Wの21MHzCWトランシーバーが完成しました。
11月3日のQRPコンテストには7メガと21メガ、自作機、CWで参加しました。21メガは午前中に4エリアの2局(山口県と広島県)のみでしたが、両局とも599++で大変強力でした。
7メガでは昼間はどこも聞こえなくなって局数が伸びませんでしたが、夕方にはCONDXが回復、終了時刻ぎりぎりまで粘って59局×27マルチという結果になりました。
お相手をして下さった各局、ありがとうございました。
【図3】7MHz QSOレートグラフ
さて、再開局以来これまで3年間、送信機ファイナルには2SC1957を使って出力1W以下で運用してきましたが、1Wにダイポールでコールした場合、何回も何回も聞き返され、相手局に相当の御苦労をお掛けしている様子が伝わってくることが度々ありました。
ある日、●●●電気さんの商品リストに往年の名石2SC1971を発見、[ 2SC1971 旧 、テスタで導通チェックしました。交換は出来ません。] という注意書きが気になりましたが、予備も含めて4個注文しました。
7MHz機と21MHz機の両方ともファイナルをこの2SC1971に取替え、励振増幅回路も少し変更して、電源電圧12Vでちょうど5Wの出力が得られました。
11/29~12/1のCQ WW DX コンテストCWで、飛びを試してみる予定です。
【図4】ブロックダイヤグラム
< 仕様> | |
送受信周波数 | 21.000~21.085MHz |
送信ファイナル | 2SC1971シングル |
送信出力 | 最大5W(0.1~5W可変) |
受信方式 | シングルスーパーヘテロダイン方式(RF1、F2) |
中間周波数 5.12MHz | |
6Pole クリスタルフィルター | |
電源電圧 | DC12V |
消費電流 | 受信時 45mA(最低音量時)、送信時 840mA(5W出力時) |
外形寸法 | W200×H81×D180mm(突起物を含まず) |
重量 | 1.25kg |
編集担当から
高野さん、報告ありがとうございます。中味を見ると、縦積みの基板は、かっこいいですね。スロットイン式のプロ用機みたいで、憧れます。正面パネルは、前作と同様に、綺麗に仕上がってますね。これくらい綺麗だと、QSLの写真に使えるのですが、僕のは穴位置が不揃いであったり、とてもQSLには使えません、Hi。そしてQRPコンテストの実戦使用で59 QSOとはかなりに高得点です。コンテスト中に21MHzもタヌキしたのですがベランダANTには入感ありませんでした。2SC1971は、フランジがエミッタなので人気部品なのでしょうね。ちょっと高くて手が出ません。これらのグレードアップや実戦使用のレポート、引き続きお願い致します。(JO1UBD)
QRPなDXの世界
海外のQRPer
#377 JA1KGW 青山憲太郎(Kentaro Aoyama)
~UA1ACO/1/QRP,Vladさんの1W、EHアンテナとの2WAY QRP QSO~
2014年9月10日(水曜日)は、28MHzが大変に良くオープンしていました。
この日は、SV3/RW3AL,OH2XX,YL2014W,EH5SDE,LY5Mなど主としてヨーロッパ方面がオープンしていて、全部で19局とQSOが出来ましたが、全てQRO局とでしたが、最後に20:40JSTにUA1ACO/1/QRP、VladさんとQSOが出来ました。QSO中に交換した229/579のレポート交換し、厳しい伝搬状態でいたが、コピーしたQTHがSt.Petersburgは兎も角として、1Watt出力で且つ1m長のEHアンテナとコピーしましたが半信半疑でした。郵送されてきたQSLカードを見て、フィールドでの運用写真としかもEHアンテナが映っていました。兎も角、EHアンテナに関しては、私はマグネチック・ループ・アンテナとは異なり、今一実力が理解できないと食わず嫌いの考えがありました。機会があったら、一度トライしてみたいと考えています。
【図1】UA1ACO/1/QRP,VladさんのQSLカード
【図2】UA1ACO/1/QRP,VladさんのQSLカード
編集担当から
青山さん、いつもありがとうございます。EHアンテナはまだ試してませんが、同じような構造のアイソトロンは7MHzで使用した事があります。同軸ケーブルの取り回しを工夫すると、ノイズを減らせたり、予想外に飛んだりなど、調整がちょっと困難でした。口の悪いローカル局からはダミーロードだと言われましたが、飛べば良いという結果のみを見る限りは使えるかなと思いました。(JO1UBD)
DX短信
#377 JA1KGW 青山憲太郎(Kentaro Aoyama)
~28MHzでのWSPR運用とDL2WB,Tomさんからのレポート(その2)~
前月号で、報告しましたDL2WB,Tomさんに下記のWSPRの受信レポートをメールで送りました。(再掲載です)
【図1】WSPR Spot Database
返信として先週、TomさんからJA2OP(WSPRではJA2OPでQRVしています)宛てに28.146MHz信号を受信したことをコンファームしたSWL用のCardが届きました。TOMさんが、運用している装置の詳細は、TRXはUltimate 2キット(G0UPL、Hans Summers氏が設計したもの)、出力電力200mWとキッチンの窓から突き出した1/4λの竹竿ホイップ・アンテナとの組み合わせでした。
【図2】DL2WB,TomさんからのQSLカード(表面)
【図3】DL2WB,TomさんからのQSLカード(裏面)
SWL Cardのメッセージには“Dear Ken-san,Thank you for running yur ESPR setup
and my uploading spot! Tom , DL2WB “と書いてありました。この原稿を書いている12月5日もハイバンドの電波伝搬が良好でした。因みに、11月25日以来、太陽黒点は100超の状態が続き、且つ地磁気の状態も静穏です。OMの皆さんはDXハンテイングにご活躍と思います。
編集担当から
QRPのレポートを見る度に、上手く自然と付き合っていて、太陽活動を中心とした自然現象を味方にしているなぁと思います。常に安定してQSOできるような状態では気付かないような伝搬状態や現象など、OMさん方はきっと身体に染込んでいるのでしょうね。最近は国内144MHzで、羽田空港に飛来する飛行機反射を感じ始めたばかりで、僕にはまだまだ修行が足りません、Hi。(JO1UBD)
ジャンク遊び ~スイッチング電源の再生~
#993 JO1UBD 丸山 裕二
安定化電源のジャンク品を入手したので、故障箇所の切り分けと再生までを簡単に報告します。
【図1】中古無線機本舗さんより入手したジャンク電源
秋の夜長のお伴に、ジャンク遊びの題材は中古無線機本舗さんから入手した正真正銘なジャンク品で、不動品です。再開局してから、これまでにローカル局から持ち込まれた修理依頼品(または捨てておいてとの事でゴミ回収した)の安定化電源はだいたい次の通りで、シリーズ式はブリッジのパンク、スイッチング式は高圧直流を振る箇所か、振った直後のカソードコモンのダイオードが定番であると考えていました。今回のジャンクも「一回経験あるし、FETを取り替えれば良いのね」など、軽く考えて注文しました。
機器名 | レギュレータ形式 | 申告ベースの原因 | 故障箇所 |
---|---|---|---|
GZV4000 | SW式 | 自然故障 | FET(IFRP640×2個)の破損 |
RS-300 | シリーズ式 | 自然故障 | ブリッジ |
RS-300(再発) | シリーズ式 | 自然故障 | ブリッジ |
RS-300 | シリーズ式 | 自然故障 | ブリッジ |
SS-330W | SW式 | 落雷 | バリスタの破損 |
SS-301X | SW式 | 自然故障 | Tr(2SC3306)の破損 |
SS-301X | SW式 | 自然故障 | ダイオード(G20N50C)の破損 |
DM-305MV | シリーズ式 | 自然故障 | ブリッジ |
DM-305MV | シリーズ式 | 自然故障 | ブリッジ |
DSP-1000 | シリーズ式 | 自然故障 | ブリッジ |
DM330-MV | SW式 | 自然故障 | PCBパターン |
DM330-MV 現在修理途中 |
SW式 | 自然故障 | 制御部用トランスの断線、Tr(2SC5353)の破損 |
CPS3200 | SW式 | 自然故障 | パワーTrの半田外れ |
CPS3200 | SW式 | 自然故障 | パワーTrの破損 |
到着して最初に再現試験として電源を加えると、広告の通り電源は入らない状態(前面のLED不点灯、冷却ファン停止のまま)でした。最初の見立てとしてFETとカソードコモンのダイオード不良と仮説し、基板に取り付けられたままでテスターで端子間の抵抗値を測ると、抵抗はあります。これまでに遭遇した故障例では、FETやダイオードはショートモードでしたので、その時はほぼゼロΩでした。今回は新種な故障なので、回路図を電子メールで請求しましたが……(ダイワ社はディスコン品でも回路図は販売されています。また、アルインコ社はショップ経由で基板上の部品を購入できましたので、期待していましたが……)、回路図の入手は諦めました。仕方無いので、電源入り口から調べて行き、トライアンドエラーで部品交換を行いました。
まず最初に基板上の交流入力直後に、4Ω/5Wのセメント抵抗が並列接続されて、その後段にブリッジダイオードに入ります。また、この抵抗と並列してリレー回路があり、電源スイッチON直後は、セメント抵抗により減流された状態で制御回路部まで供給され、そこからリレーをメークし、ブリッジには100%の電流が掛かる構成でした(ブリッジ後段の大容量電解コンデンサへの充電電流は、この抵抗の経由した状態で充電され、その後にリレーがメークする時間差による突入電流の防止策)。このセメント抵抗が2個とも断となっていましたので、交換しました。
以前修理したモデルでは、ブリッジダイオードにはヒートシンク期待な簡単な鉄板が取り付けられていましたので、今回は本格的なヒートシンクを取り付けるべく……実装状態ではネジが入らず……ブリッジは良品でしたが交換しました。交換時は、熱による基板パターンの痛みを最小限にすべく、最初に部品の足をカットしてから取り外しを行います。
次に制御回路をチェックして行きます。最初は、回路をパターンから追う以前に、Tr、Rは実装状態のままでテスターで抵抗値を測ってゆきます。これはTrのショートモード破損、抵抗のオープンモード故障の発見する為です。目視での破損状態が発見出来れば楽ですが、今回はそうした箇所がありませんでした。また、安定化電源などの商用電源を使用する製品は、人体保安のために入力側と出力側は絶縁されていますので、もし部品破損(ショートモード)により絶縁が無ければ、そこが故障かもしれません。そのような思考で各部品を確認してゆきます。今回のジャンクでは、抵抗のカラーコードが色変色してませんでしたので、それはそれで良かったです(抵抗値が判る)。テスタで一通り確認すると、ゼロオーム、または無限大な部品は発見できず、仕方無く、TrとRの取り外しに着手しました。TrとRはともに測定したいので、再利用可能な状態として丁寧に取り外します。Trは秋月電子から販売されている半導体アナライザDCK-55を使用して、また、RはLCRメーターを使ってそれぞれ測定を行います。
この時点でTrの一つが不良である事が発見できました(Q1、2SC5353)。また、Rの一つがオープンでしたので交換しました(R8、100KΩ/1W)。その他の取り外したTrとRは、同じ物が手持ちにあったので全てを交換してしまいました。ただ、高価なFETとカソードコモンダイオードは、オリジナルな状態に戻しました。ダイオードは実装状態のままで、テスタのダイオード測定モードを利用して、Vfを測り、また、逆接しての抵抗値に違いがある事が確認出来たので、そのままとしました。
【図2】断線していた抵抗(R3,R4)
【図3】大物部品も取り外して測定
【図4】ヒートシンクを取り外すと測定しやすい
これで修理は完了と思い、電源スイッチをONにしましたが、ダメでしたのですぐにスイッチをOFFとしました。スモークテストと称して、最初は5秒だけ電源ON、次の10秒だけON等とON時間を長くしてゆきましたが、煙は出てきませんでした。また、赤外線温度計を使用して、発熱箇所の有無も調べましたが発見出来ずでした。
次に調べたのが、各部品の足にテスタ棒を当てての電圧測定で、各部品にはそれなりの電圧が掛かっているのかを調べてゆきました。その時に、R7(300KΩ)の足に触れた時にシステムの電源がONされる事を発見しました(出力はきちんと13.8V)。再現性があり、絶縁された物ではONされないので、どこか容量性の箇所で不要があると見立ててコンデンサ類を実装状態の目視で調べ始めました。しかし異常は無さそう。発想を転換して、故障により絶縁状態になった箇所としてダイオードが怪しい(オープンモード故障)と判断しました。ここへ至るまでに導通は測ったのですが実装状態ですし、周辺部品の影響があるので、制御回路を中心に数カ所のダイオードを取り外して、半導体アナライザにかけると1個が故障表示でした(D4、型番不明、スイッチング用)。これは手持ちの汎用なスイッチングダイオードと交換しました。その他の取り外したダイオードは、スイッチング用と小型整流用にそれぞれ手持ちの物と交換しました。
【図5】交換した箇所など
これで修理は完了と思い、電源を入れて、出力の13.8Vが確認でき、また、冷却ファンも回りました。しかし、スモークテストで20秒くらいした時点で、ちょっと臭いがしてきました。温度計で高温な箇所を探し出すと、制御回路用の半波整流ダイオード(D2)からの発熱でした(D2のリード線の艶が無くなってました)。この時点での見立ては、制御回路中に不良がある為に、過負荷になっているという仮説。負荷側に何が繋がっているのかを調べて行くと、リレー回路が怪しいと思い、リレーに対して直列に入っている抵抗を少し高めにしました(R90、15Ω→100Ω。突入保護のための遅延回路なので、メーク時間が遅れても影響無しと判断)。それでも発熱は止まらず破損に至ります。ここで良品のGZV4000(これもジャンク再生品)との比較測定を行いました。各部品間の抵抗値を測っての比較、また、電源ON時の各部品の足の電圧比較………。異常はありません。ただ、モデル時期による改善による違いなのか、良品のセットではC84は未実装なのに、このモデルには10Ωの抵抗が入った箇所がありました。この抵抗は、D2で作られた制御部用電源出力のプラスとグランド間に入ったブリダー電流のためのなのか、また、若干の熱変色があり、スモークテスト時に発熱がありましたので、取り外して電解コンに交換しました(220uF/35V)。また、D2後段の平滑用Cは、一旦取り外して、LCRメータで容量とESRを測定すると正常でした。ところで、発熱しているD2は、既に手持ち品と交換した物で、オリジナルなD2は足は短く切っているので戻せず、また、型番は読めません。この時点での見立ては、整流用ダイオードの耐圧不足またはVfの大きさからの発熱量過多という仮説。そこでもう少し大きい耐圧/小さいVfのダイオードへと交換して……4回目には耐圧1,000Vのダイオードにしても煙吐いて破損となりました。
【図6】C84に抵抗(10Ω)が
【図7】D2の温度は平常に戻る
このダイオードの上位側は制御回路電源用の小型トランスで、二次側電圧は20V未満。もしかして、ここに加わる交流は50Hzでは無く、もっと高い周波数が掛かった半波整流なのかもしれないとの仮説で、ファーストリカバリダイオード(11DF4)へ交換しました。その結果、動作中のダイオード表面温度の測定でも30度未満で、数時間の負荷を掛けた状態でも異常は有りませんでした。
今回は回路図が無かった為に余計な箇所を誤った部品に交換してしまったので、かなり遠回りしたジャンク遊びでしたが、ファーストリカバリダイオードの動作が身体に染込みた良い教材となりました。また、高価なFET故障では無くと良かったと思いました。僕はこれまで、新品の安定化電源は1台(MFJ-4125、$50くらいのバーゲン品)しか買ったことがなく無銭家です、Hi。さて、次はどんなジャンクに巡り会えるのか….。
【図8】使用した工具類
不良箇所
[1]R3(4Ω/5W) 断線、良品では4.7Ω/5W
[2]R4(4Ω/5W) 断線、良品では4.7Ω/5W
[3]Q1(2SC5353) 全端子オープン
[4]D4(型番不明、スイッチング用) オープン
[5]R8(100KΩ/1W) 断線
【図9】取り外した部品類(GZV4000の2台分)
学んだ事
・実装状態の部品を調べると、単純な故障(ショートorオープン)ならすぐに判るが、それ以外はやはり困難
・50Hzまたは60Hzを越える整流は、ファーストリカバリダイオードを
・良品は取り替えるな! オリジナルに戻せ!
・カラーコード抵抗の微妙な色の変色はキツい
・電解コンデンサは意外と長持ち
おまけ:以前の失敗談
大電力用の三端子型ダイオード(カソードコモンのSR30100P、U30D20Cなど)を放熱版へ固定する際のシリコングリスに、最近よく見る「銀色」の物を以前に修理時に使用しました。単純なテスターによる導通では無限大でしたが、高電圧な状態では導通するようで、塗る際に少しはみ出していた為に、絶縁されているハズな放熱版に触ったらビリビリ来ました、Hi。それ以来「銀色」は止めました。
DC-DC昇圧コンバータが昇天……失敗談
#993 JO1UBD 丸山 裕二
2013年8月号にて報告した、シールドバッテリを13.8Vへ昇圧するコンバータについては、その後、別の様々な機種を試しています。安く、またノイズレスな機器を探して、使えそうな物を収集?しています。今回は失敗談を報告したいと思います。
【図1】評価中に壊した残骸たち(全てコイルが断線)
【図2】今回の評価対象(千石電商で入手)
【図3】基板(FETはIFR2807)
【図4】ケースに入れた状態(ヒューズ位置の穴開けに失敗して、スイッチと当たってしまいました)
移動運用で使用する為には、ある程度の電流量が取り出せる物を中心に、日頃のアキバ探索をしている中で、150W型が有りましたので、評価を行いました。
かなりコンパクト割に150Wとは、約10Aが取り出せますので、移動運用時に一時的にQROが可能かもしれないと、不純な動機で飛びついてしまいました。無負荷時のリップリは殆ど感じられず、また、ノイズも感じられず、なかなかFBな状態でした。FT-817(50MHzFM/5W)で負荷を掛けてみますと、リップルと言うよりも、もっと大きなヒゲが観察出来ました。対策として、搭載されている電解コン(1,000uF/35V)を低ESRタイプへ交換と、回路中にパスコンを入れての低減を行いました。比較的良好な状態となり、これで行けると思った時に、「電源の発振現象」の兆候に出会いました。
【図5】上は電圧(ヒゲが出ている)、サージ電圧は定格超過??。下はFFT結果、100KHzノイズ
【図6】対策後(レンジは2V/div)
【図7】搭載されていた電解コンのESRは0.03Ωで、交換用に準備した物は0.02Ωであまり変らず。一般的な電解コンで0.06Ω(1,000uF/35V)でした。
電源の発振とは、1998年に大阪で発生した通信事故により顕在化された、電流値の急激な変動により発生する電圧変動が止まらない現象です。(図8、図9を参照)
今回の現象は、FT-817のPTTを離して受信状態へした際(電流値が急激に低下)に、数Vの電圧変動が5秒程度発生し、最大値は13.8Vを越えることは有りませんでしたが、オシロで見ると1.5Hz程度の周期で11V~13.8Vを波を打つように変動していました。FT-817前面の電圧表示では、その変動は判りませんでした(安定して表示したまま)。
【図8】1998年の電源発振事故報告(NTTのHPより)
【図9】発生メカニズム(NTTのHPより)
電源の発振現象への対策は、負荷側直近に電解コンとチョークコイルを入れると学んでいますので、その対策確認として最大電流での負荷変動を行う事を目的に、負荷にFT-857Mを繋げました。また、発振しやすいように、電源コード長は約3mまで長くて実験しました。
FT-857MのRF出力は20Wにセットし(ここが失敗ポイント)、PTTをONしてみました。すると、1秒程でFT-857Mは受信状態となりました。電圧低下なのかと思い、前面パネルの電圧計に注目して再度PTTをONする、今度は電源自体が切れて、DC-DCコンから煙が出て昇天してしまいました。もしかして過電流かと思い、FT-857Mの消費電流値を測定すると、なんと20W出力でも12.6Aも流れているのです。いくら150Wタイプの昇圧コンとは言って、明らかに流し過ぎです。まさか20Wで、こんなに電流を喰っていたとは……。(また、20W出力でも、こんなに流れているとは思いませんでした)
DC-DCコンの破損箇所は、基板のパターンが焼けただけで、部品類は焼損してはいませんでした。次回は、大電流が流れる箇所を対象に、レジストを剥離させて、パターンには銅テープを貼付けた後に半田を盛っての大電流対策をしておこうと思います。既に評価用として追加で2セットを準備しました、Hi。
【図10】FT-857M、50MHzFM/20W時の電流値
【図11】焼けたパターン(FETのソースへの部分)
【図12】リニアテクノロジー社のHPにあるリップル対策の解説記事にも発振注意と(参考)。
編集担当から
2014年9月号会報で報告いただきました林さんから、続報メールが入りましたので簡単に紹介します。なお、林さんには投稿をお願いしていますので、次号以降に改めて報告いただく予定です。今回は予告編として、メールから抜粋して編集いたしました。(JO1UBD)
AA8V/W8EXl 6CL6 one-tube transmitter
の追加報告(予告編)
#906 VE3CGC 林 寛義(Hiro Hayashi)
夏にスタートした”AA8V/W8EXl 6CL6 one-tube transmitter(QRP 2watts out、20mバンド)”が昨日完成し、テストのQSOもできました。
配線図は”AA8V”をグーグルで検索すると見られます。
P.S. 12月31日の夜から24時間、毎年ARRLのStraight Key Night にでます。
今回は1950年代の送信機で出ようと思って、今月初めから、送信機の点検と調整を予定しています。送信機はQRP CW機です。
【図1】QRP CW機外観
【図2】QRP CW機内部
編集後記
JO1UBD 丸山 裕二
★12月号をお届けいたします。年末に近付き、忙しい中、投稿を戴きありがとうございました。
★最近は半田コテを握る機会ばかり増えて、春までアンテナ工作はお預けです。
★以前ローカル局との間で、完全な自作機とは何かという思考実験をしました。C/R/Tr/ICなどの部品は仕方無いけど、ANTは自作、でも同軸ケーブルは代替で針金を使用など。その時に、安定化電源はトランスだけは完成品として使用しても、その他周辺回路は自作できるかと。僕が最初に開局した頃は、秋月の”723基板”に2N3055を抵抗経由で数個並列接続してなど、比較的容易に自作できました。いつかはスイッチング式電源をフルスクラッチで作ってみたいと思います。まずは回路原理を学ぶために、ジャンクで勉強です。
★会員の皆様の2014年のQRP活動の報告や、2015年の抱負や計画など投稿をお待ち致します。毎月の月末が締め切りです。
投稿の宛先は、qrpnews@jaqrp.net です。(@を半角に変えてください)
JA8IRQ 福島 誠
★12月号も無事に編集を終えました。JARL QRPクラブは2016年に創立60周年を迎えますが、今、60周年に向けての企画をいろいろ考えているところです。先輩たちから受け継いだQRPの楽しさ、面白さをなんとかして後の世代に伝えていきたいと思っております。会員の皆さまの協力をお願いするとともに、まだ会員になってない方、以前、会員だった方の入会をお待ちしております。
★入会登録は(再入会も)こちらからどうぞ。