JARL QRPクラブ会報 2015年2月16日発行 Vol.57-11

投稿者: | 2015年2月16日

JARL QRPクラブ会報 2015年2月16日発行 Vol.57-11


No. 2015年2月号 目次 コールサイン 筆者
1 第25回札幌QRPミーティング報告 JF1ISC
(JA8DIQ)
大久保 尚史
2 QRPなDXの世界 JA2OP/JA1KGW 青山 憲太郎
(Kentaro Aoyama)
3 昭和の無線塔・ロランC廃止 JR3ELR/1 吉本 信之
4 6mDSB機 ポケロク調整の勘所 JO1UBD 丸山 裕二
5 書籍紹介 JO1UBD 丸山 裕二
6 QRPクラブ役員会から JA8IRQ 福島 誠
7 編集後記&近況報告&アキバ散歩報告… JO1UBD 丸山 裕二
8 編集後記&近況報告&アキバ散歩報告… JA8IRQ 福島 誠


第25回札幌QRPミーティング報告

#822 JF1ISC(JA8DIQ) 大久保 尚史

 2014年12月14日、札幌市中央区民センターにて第25回QRPミーティングを開催しました。札幌QRPミーティングはQRPerだけでなく、工作が大好きな方々にお集まりいただいています。
 今回は、各局が持ち寄った力作の紹介の他に、2015年9月に開催が予定されている「北海道ハムフェア」への対応をどうしようか、という議論をしました。幾つもの案が出ましたが、「北海道ハムフェア」自体の計画がもう少し明らかになってからでも間に合うので、3月末くらいまで、計画を練ろうということになりました。
 持ち寄られた作品の中から何点かを紹介します。
 尚、次回は2015年3月22日に同じく札幌中央区民センターにて開催いたしますので奮ってご参加ください。

参加者は、JA8AUW、JA8AVC、JA8CCR、JA8CXX、JA8DES、JA8DIQ、JA8GAH、JA8JPO、JA8MRH、JA8VHD、JE8GNZ、JH8BTS、JH8BWH、JH8GFS、JH8LDW、JR8LJSの16名のみなさん。

Sapporo QRP Meeting
 【集合写真】

476kHz


 今年1月に開放になった476kHzのLPFをJA8JPO、TXをJR8LJSが試作しました。JA8JPOが試作したBPFは楕円フィルタで、減衰域で80dB以上の減衰特性が得られたそうです。JR8LJSが試作したTXは原振をDDS、ファイナルをE級アンプとしたものでコンパクトにまとめられています。RXはゼネカバ受信機を想定しているそうです。
 このバンドの第二次・第三次高調波は、中波放送の帯域に落ち込みますので、送信機からの高調波をかなり抑え込む必要がありますね。また、大電力の放送局に近いところでは、受信機のトップにBPFを入れると受信特性が改善するかもしれません。
 近隣居住者との調整が必要ということもあり、免許取得にはかなり難易度の高いバンドですが、お二方には是非とも電波を出していただきたいものです。
476kHz BPF(JA8JPO)
476kHz BPF(JA8JPO)
【476kHz BPF(JA8JPO)】

476kHz TX(JR8LJS)
【476kHz TX(JR8LJS)】

6V6シングルTX


 当クラブ会員でカナダ在住のVE3CGC Hiro Hayashiさん試作の6CL6シングル送信機(2014年12月号会報参照)に刺激されて、JA8DESが6V6シングルで7MHzのQRP送信機を一日半で試作されました。
 出力は5.4W、プレート効率は48%と立派なQRP TXなのですが、負荷変動によるQRHや近傍スプリアス発射の可能性があるからということなのでしょうか、我が国では、残念ながら発振器のみのシングルステージ送信機は認められません。
6V6シングル送信機(JA8DES)
【6V6シングル送信機(JA8DES)】

TS-311のレストア


 JA8VHDがハードオフでなんと800円で売られていたTS-311のレストアに取り組まれました。電源一次側のコンデンサの焼損を修理したところ10W以上のパワーが出たそうです。
 その後、コアの抜けなくなったコイルパックをなんとか調整し、札幌QRPミーティングのメンバー数局と21MHzのSSBとCWにてQSOしました。
TS-311のレストア(JA8VHD)
【TS-311のレストア(JA8VHD)】

シューマン共振発生器


 Wikipediaによれば、シューマン共振とは、地球の地表と電離層との間で極極超長波(ELF)を反射をして共振し、波長がちょうど地球一周の距離の整数分の一に一致したものをいい、その最低周波数は7.83Hzなんだそうです。
 JA8CXXがコイルに7.83Hzの電流を流し磁場を発生させると、環境の乱れを改善することができる(?)という怪しげ(HI)なもの。しかし、透明な半球状のケースとその中に60度おきに配置されたコイル、そして周期的に点滅する青色LEDを見ていると、何となく癒されたような気持になってきます。
シューマン共振発生器(JA8CXX)
【シューマン共振発生器(JA8CXX)】


編集担当から

 大久保さん、報告ありがとうございます。
 476KHzへの準備は進んでいるようですね。現在は2月ですので、そろそろ落成されている頃でしょうか?
 Jクラスタを見ても、まだ476KHzの欄が出来ていないので、QSO状況が判りませんので、何とも言えませんが、いろいろなサイトを巡回していると、我れ先にと競争状態で、とてもエネルギッシュな印象です。
 また、VE3CGC林さんの球機報告が切っ掛けで……会報の目的が達成できたと、とても嬉しいです。こうして会員の皆さんで刺激しあって様々な発見や進歩が更に良い循環になりますので、皆さんも是非報告をお願い致します。(JO1UBD)


QRPなDXの世界

海外のQRPer

JA1KGW 青山 憲太郎(Kentaro Aoyama)

HF~マイクロ波までQRVのOK1YA/QRP、MekさんとのQSO

 2014年7月18日、22:08~2215jstまで、チェコ共和国のプラハのOK1YA、Mekさんと18MHzで2WAY QRP QSOができました。素晴らしいコンディションに恵まれて、お互いに5W同士で、599のレポートを交換しました。QSOを続ける内に、何度もレポートを要求されました。Mekさんは2WAY QRP QSOに関心を持っているよう様でした。最近になって、MekさんのQSLカードが到着しました。
OK1YA
 【OK1YA、MekさんのQSL】

OK1YA
 【OK1YA、MekさんのQSL】

 カードの下側にRigとアンテナが記載されています。IC-756PROⅢ、IC-746PRO、IC-7000、SDR TRXと更に驚くことに23-13-9-6-3 cm、24GHz、47GHzおよび76GHzまで運用しているようです。たまたま、コンディションが開けた18MHzでQRP QSOの相手をしてくれた様です。
 インターネットで調べてみると、OK1YAの10GHzのTROPO レポートを見つけましたので、Mekさんのマイクロ波におけるアクテビティを報告します。

 K1YA JO70CG – 10GHz TROPO REPORT 06-07.11 06

OK1YA
 【マイクロ帯でもご活躍】

F6DWG 10368110.0 OK1YA JO70 559/559 tnx new # 2243 06 Nov
Premek’s, OK1YA short info: on 10368MHz 90cm dish and 27W PA was used. Beside above two DX contacts F1PYR/p JN19BC 881km was heard, but qso wasn’t completed, unfortunately. Nothing heard from UK. This was for the 1st time, when direct tropo contact on 10GHz between Prague and Paris has completed.
73 de Premek, OK1YA


編集担当から

 青山さん、報告ありがとうございます。
 マイクロ帯の機器には、僕もとても興味があり、昨年のハムフェアを一緒に見学していたローカル局が、衝動買いで5.6GHz一式揃えてしまい、それに刺激されて僕も……正気に戻って踏み止まりました。アンテナの準備がどうしても目処が立たず、また、測定器(最低限のパワー計)も揃えておかないと行けませんし。OK1YAは90cmのパラボナとの事ですが、結構大きいですね。トランスバータのエキサイタである1,200MHz帯の無線機も種類が減ってますし、益々敷居が高いです。OMさん方は上に下
にと、バンドを超えた挑戦をされていて、若者世代??として、背中を追って行かないと思いました。(JO1UBD)


昭和の無線塔・ロランC廃止

#33 JR3ELR/1 吉本 信之

 2015年2月1日午前9時に琉球本島北部、東村の慶佐次(げさし)の岬に建っていた昭和の無線塔とロランCの施設が停波しました。そして塔は3月27日までに倒し撤去されてしまいます。何時も通り過ぎるだけだった場所ですが、1月末に見納めに行ってきました。

現地への交通手段


1.島内移動はレンタカー
 空港~那覇バスターミナル~名護バスターミナル~東海岸東村行~徒歩2kmの路線バス乗り継ぎでもたどり着きますが半日以上かかりますが絶対にお勧めしません。那覇空港でレンタカーを借りてください。レンタカー代・燃料代共に本土よりも格安です。オフシーズンの今回は4500円/48時間、燃料代も119円/Lでした。那覇周辺は交通量と二輪車のすり抜けが多く運転に気を使います。できるだけ早く一般道路から沖縄自動車道に移り北上を開始してください。宜野座ICで降りて東海岸沿いの国道を北上すると、直ぐに名護市に入り辺野古ゲート付近で県外から来た群衆と駐車車両の雑踏に出会います。これを軽くかわして大浦湾を通り過ぎると無線塔が見えてきます。(写真1、2、3)ロラン塔付近一帯は海保と米軍の併用施設で入れません。岬の民間地側の金網の近くでFT-817を取り出して100KHz~400KHzをスキャンしてみましたが、全く信号を受信できず既に停波してている様子でした。(写真4)
JR3ELR/1
JR3ELR/1
JR3ELR/1
JR3ELR/1

2.Yナンバーと軍用車両
 北部の道はすいていますが、米軍軍属・米軍人所有のYナンバー車両の密度が上がります。この車両は事故時の対処が厄介です。軍用車両やYナンバー車は対向車線を使って交差点を曲がります。突然の挙動の変化に巻き込まれるリスクが高く必ず車間を空けてください。軍用大型車両やMP車両は日中シールドビームを点灯して走行します。後ろについたら十分に車間を空け、後ろから追い上げられたら避けて先に行かせてください。

3.道路舗装状況
 毎年未消化の一括交付金で最北端の奥集落から最南端の喜屋武岬の手前まで舗装済みです。東村以北の県道や村道、林道も舗装されています。

本島のインフラ


1.飲料水
 慶佐次のある東村や名護の水源は軟水の硬度まで下がります。那覇周辺の水道水は硬度を下げる処理をしてから給水しています。30年通って慣れましたが今でも中部以南では飲むとお腹がゆるくなります。硬水が苦手な方はペットボトルの飲料水を飲んでください。

2.電力
 中部西東海岸で石炭・石油・LNG発電し本島各地に送電しています。停電は減りましたが、台風通過後は一日経っても交通信号が消えていることがあります。夜間走行時は注意してください。

3.携帯電話
 沖縄の携帯安心度はAU、Docomo、SB、PHSの順です。小型船で漁に出る海人(うみんちゅ)や定期船の船長はアナログ時代から沖縄セルラーのガラケーを使います。北部国頭村や東村の山中と東海岸の集落を外れた路上で面の圏外域があります。昨今、琉球の風に乗って耳にとどくノグチゲラやヤンバルクイナの鳴き声をBGMに無線三昧のてーげー旅を知らない人たちが「デジタルデトック」と唱えています。何と可愛そうなことでしょう。

4.インターネット
 米軍のベースやキャンプがある地帯は光ファイバー網の敷設があります。北部の東村以北は空白地帯が広がります。
ています。

5.食料調達と食堂
 今回慶佐次では地上施設1haと海域が返還されます。この返還海域には旭蟹(スパナクラブ)がいます。東村の道の駅内食堂「東の浜(あがりぬはま)」のメニューにはこれを1匹丸せしたおきなわそばがあります。(写真5) ※岬の開墾地にあったもう一軒の食堂の方は今やっていません。これを採るおじいが一人になったと言われました。消滅危惧種の地元食になりました。「沖縄のコンビニ、でーじあるさー(いっぱいあるよ)」は名護以南の話です。北部は集落の「共同店」「共同売店」が調達拠点になります。ここでは弁当・飲料・パン類・飲料が手に入ります。しかし物流がでーじなっとー(大変です)。最北の設立100年を超えた老舗「奥共同店」は20世紀の頃から週二回山越えして南側の集落の共同店に留め置かれたパンを仕入れに行く状態が続いています。日と時刻によっては弁当も売り切れてスナック菓子とカップラーメンしか調達できないことがあります。不便は常の地に身を寄せることを悟り、非常食のカロリーメイト2箱の携行を強くお勧めします。(写真6)
JR3ELR/1
JR3ELR/1

北部の診療所


 各村に診療所がありますが道路事情が良くなりハブ血清は常備しません。咬傷事故の都度拠点から運びます。島内のタクシーもハブ採り道具は積んでいても血清は積んでいません。そして那覇周辺しか専門医は居ません。老後中北部で無線三昧の夢は長続きしませんよ。

本島の危ない生き物たち


1.「ハブ」と「はい」
 21世紀に入り那覇の暮らしはハブと無縁になりました。しかし古民家と石積みの塀が残る区画や公園には代を重ねた居付きのハブがいます。ハブは血清を打っても後遺症が残ります。石積みの塀によりかかったり、石積みに腰かけたりしてはいけません。大人のハブは人を避けますが、生まれて直ぐの10cm前後の幼体は向かってきたり荷物や足元に潜り込んだりして危険性が高くなります。けっして美味しい食材ではありませんし、非加熱で食べてはいけません。極めて稀ですが、コブラ目の毒蛇「はい」がいます。森の中でも非常に目立つ小型の蛇です。直ぐに逃げていきますから絶対に追わないでください。私も一度しか遭遇していません。

2.アフリカマイマイと爬虫類、両生類と淡水魚
 巨大ナメクジやイボイモリを触る人は居ないでしょう。大東島編でお知らせしたとおり、これには絶対に触ってはいけません。河川に幾らでも居るすっぽん、テラピア、国際通りの橋の下で満潮時泳ぐ淡水域の鮫、ビラルク・アロワナ(北部河川の随所、慶佐次のマングローブ林にもいますがハブ密度が極めて高く危険です)も非加熱で食べてはいけません。

3.海岸・干潟
 ハブクラゲなら激痛と水ぶくれで済みますが、ヒョウモンダコとアンポイナに噛まれたり刺されると死にます。絶対に素足やビーチサンダルで干潟や海中を歩いてはいけません。毎年この犠牲者が出ます。必ずマリンブーツを履いてください。

4.寄生虫他
 年中蚊がいます。琉球イノシシも数が増えダニとヒルに襲われるリスクが高くなりました。ディード剤を体にスプレーしてから散策してください。北部にあった繁殖牛の飼育場はほぼ無くなりましたが小規模の養豚は続いています。

風にただようワイヤーアンテナ


 琉球は常に島を風が吹き抜け凪がありません。極軽量のワイヤーを風に乗せると自然に飛んでいきます。立ち木すら無い無人島でも5~10mHのスローパーアンテナやスロープLoopアンテナを風が造ってくれます。「我が身とアンテナ風まかせ」。これが還暦前にたどりついたQRP無電の姿です。積年の罪滅ぼし。XYLサービスを兼ねた旅故に、この日の風にただようワイヤーアンテナは名護市西海岸喜瀬の浜辺に建つ白亜のホテル4階のテラスからたらすことになりました。20mほど風にのせて流しカップラー経由FT-817/4Wにつなぎ、20時から21時の30分弱、7MHz/CWで11局交信しました。ホテル内からの運用はエアコンインバータノイズがS9で入ります。しかし偉大なる大自然の力を信じ、パドルをつまめば何故かコールバックが聞こえてきます。(写真8、9)
JR3ELR/1
JR3ELR/1

島の結界域


運用場所を求めて人の居ない空地を探す無線屋の習性は、これと対峙してしまう危険があります。琉球の聖域の代名詞、御嶽(うたき)の建物の後方に白砂を敷き詰めた空間があったら、その空間に入ってはいけません。建物が無く香炉が置かれた先は立ち入り厳禁です。香炉の先に石柱(いび、大和で言うところの憑代<よりしろ>)があると近寄ることすら厳禁です。これらの一段と格式の高い聖域には元々建物がありません。本島内にはこれが随所にあります。そして、この場所の植生と生物に何か気が付くことがあっても口外しないように。必ず本土から荒らしに来る輩がいます。

やんばるくいな


 慶佐次の無線塔の柵の中から鳴き声が響きわたります。東村以北には「やんばるくいな」が至る所にいます。2年前から個体数が急増し日中極普通に出没します。集落内や道路付近は成鳥がなわばりにしない場所です。ここに出てきて餌をあさるのは親離れした縄張りを持たない若鳥です。やんばるくいなの食性は昆虫や小型動物を主体にした雑食です。街路灯に集まり落ちてくる昆虫を狙う蛙や雨の後出てくる山みみずは路上で車にひかれます。この動かない獲物の捕食を学習した個体は日中、車の走行直後に飛び出してきます。そして後続車にはねられてしまいます。前走車の後を車間を空けて走る際は、この飛び出しに注意してください。西表島や対馬では親離れしたての生後4か月程度山猫の幼獣が夜間これではねられます。(写真11、12、13)羽の色はクジャクと同じで干渉縞が見せた鶯色の偽色です。加齢と共に錆色が深り年齢を推定します。
JR3ELR/1

JR3ELR/1

JR3ELR/1

タイムスリップ


 名護以北に足をのばすと、観光ガイドが避けて通る古代食が存在します。「ひーとぅー(今回は回遊時期外なので燻製)」(写真14)、「ドカンと盛られた島産豚の足てびちの煮付け」(写真15)は未だ都会系の糧です。匂いが強い藪肉桂茶、万葉集に載る臭木の煮付や海松(ミル)が鼻を頼りにディープなところに分け入ると出会えます。そして、こんなところで運用場所探しをすると、後生(ぐそう/あの世の世界)に逝って朽ち果てた、通信の遺構と出会います。時代が変わっても無線屋のロケハン場所は変わらないですね。
JR3ELR/1
JR3ELR/1
  de.JR3ELR/1


編集担当から

 吉本さん、報告ありがとうございます。
 また行かれたのですね。それもとても珍しい場所。報道で知ったのですが、ロラン設備はすぐに撤去工事に着手して、更地に戻すようですね。通信遺跡として地上局舎だけでも残して欲しいと思いました。また、技術進歩の揺り戻しとして、いつかは先祖帰りして、こういう設備が再び重用されるようになって欲しいと思いました。次の訪問地のレポもお待ち致します。(JO1UBD)


6mDSB機 ポケロク調整の勘所

#993 JO1UBD 丸山 裕二

6m DSB TRX
 【6m DSBトランシーバ ポケロク】

 正月休みに2台目の製作を行いましたので、簡単に報告したいと思います。
 このキットは一応「上級クラス」にはなっていますが、組立て時に部品が選別しやすいようにとても丁寧に袋詰めされていますし、再現性も良いかと思います。2/12時点です、アキバの千石電商さんには在庫がありました(アキバで見掛けたのは、数年ぶりです)。
 さて、久々に手にしたポケロクは、FCZコイル(7S50)が終焉したために、コイルが別銘柄(7T50、サトー電気オリジナル品?)になっていました。それ以外の変更箇所は見当たりませんでした。
 キットに若干手を入れた箇所を紹介すると、全てのICはソケット化、水晶もソケット化、そして外線への接続箇所はピンヘッダとしました。水晶ソケットは、基板側の穴を少し大きめに加工しました。ソケットは、千石orサトーで入手可能かと思います。VXOコイルは、アイテックのコイルを追加し、送受切り替えはリレー式、ケースは大きめなアルミケース等です。それ以外はキットの通りで、終段の2SK241-GRは、シングルのままとしてあります。ちょうど大晦日の夜(酒場放浪記の年末スペシャルを見ながら)から製作を初めて、元日早朝帯の番組の朝まで生テレビが終わった頃には完成しました(ちょっとAC入ってましたので、カラーコードは読まずにテスターでカンニングしました、Hi)。以前に報告した1台目が全てピンヘッダで作成してありますので、今回は調整時の測定用ベンチとして利用できました。

6mDSB TRX
 【水晶にはソケットを使用】

6mDSB TRX
 【調整用ベンチになった1号機と共に】

 いつものスモークテストの前に、初心に帰って局発、受信部、送信部の所要電流値をそれぞれ測定しました。これらは、説明書にも注意書きとして『電源をつなぐときは、電流計を入れて、動作電流を確認します』とありましたので、それに従いました。
 さて、それぞれの電流値は以下の通りでした。なお、この時点では、まだコイル調整は行っていません。また、使用している部品誤差により、多少の変動はあるかと思います。
★局発部:7mA
★受信部:13mA(無信号時、8Ω負荷)
★送信部:22mA(無変調時)
 一発で合格点に達しましたので、次の段階、ここからが僕にとっても未だに難しい局発の調整の箇所です。それは、目的とする3倍波の50.200MHzがきちんと出ているのかが意外と難しく、例えば単純なRFプローブで最大化すると、実は基本波であったとか、トランシーバーでモニターすると、上手く最大値調整がSメータ変化に現れないなど、これまでに経験がありました。アイテック社のチューニングメータのように、周波数を選択してのRFプローブ測定が良いかと思います。スペアナがあれば、それを用いての測定が良いでしょう。
6mDSB TRX
 【チューニングメータと受信部調整の局発】

 このポケロクは再現性がとても良かったので、難なく3倍波が出て来て、調整は一発で終わりました(コイルは意外と深めな位置です)。受信部のIC(TA7358PG)の8番ピンから局発へ行く途中の1KΩ抵抗の足を測定ポイントとしました。ここからスペアナに繋いで最大値へ持って行きましたが、後で追試として普通のトランシーバー(内蔵ATTはON、プリはOFF)のANT端子へ接続して見ますと、コイル調整の具合がSメータにも十分に変化していました。

 ここまでくれば、後の調整は楽チンで、QRPパワーメータで送信出力を最大値へ。ただし、夜中に「あぁ~~あぁ~~」とECMに向かって叫ぶのも寂しいので、トーン信号を加えました。秋月のファンクションジェネレータや、以前に紹介したツートーンジェネレータで良いかと思います。サイン波発振器(CalKit#350)でも良いかと思います。また受信部の調整には、適度に弱い信号源を用いて、受信音を耳勘で最大まで調整すれば終わりです。これらは、ほんの2~3分の時間で終わりです。全ての調整は、あっけ無く終わりました。さすがにロングセラーなキットであると、更に気に入りました。
 ところで、受信部の調整では、局発の周波数を調べて(周波数カウンタやトランシーバなどを使用)、その周波数に合わせた別のトランシーバーからの送信波をポケロクで受信して、少しずつ信号レベルを弱めて調整するのも良いかと思います。直結するとポケロクは壊れてしまいますので、トランシーバーのANT端子から途中に通過型ATTを入れたダミーロードをポケロクに近くに持って行き、まずは受信するところから始めます。一旦受信できてしまえば、あとは空間距離を離したり位置を調整して上手く弱い状態を作り出しての調整も良いかと思います。
 なお、局発部の信号を取り出して、それをそのまま受信入力へ入れても、無変調な状態ですので、コイル調整は出来ません。これを機会に、受信部調整用の1石発振器を予め作っておくのも良いかと思います。以前に紹介したRFソースを使用しての受信確認では、-107dBmのキャリアが十分に判別できました。
6mDSB TRX
 【局発からの取り出し箇所は赤のテストクリップ】

6mDSB TRX
 【1石発振器の例】

 受信時にANT端子へ局発の漏れが若干感じられました。これは僕の調整の力量不足なのかもしれません。DC受信機では顕著に出る現象で、ポケロクの場合はTA7358PGの1~3番ピンにあるアンプを利用しての漏れ防止が備わっているハズですが、手っ取り早く効果を得るために、1石のプリアンプ(2SK241-Y)を追加して対処しました。

6mDSB TRX
 【受信時の局発の抜け(基本波)】

6mDSB TRX
 【出力スプリアス、十分に小さい2倍波のみ】

 さて、僕の今年の工作テーマはDSB機ですので、このポケロクを餌にして、今年はいろいろと遊んでみようと思います。まずは、ブレットボードタイプの基板に、ポケロクをコピーしてみました。こちらも再現性は良く、難なく完成しました。水晶はいろいろ試してみて、コンテスト周波数帯域まで持ち上げてみようと思います。Sメータの取り出しは、今後の課題として着手したいと思います。
6mDSB TRX
 【ポケロクから学ぶ=真似ぶ】


書籍紹介

“Low Power Communication”
 ~The Art and Science of QRP~

#993 JO1UBD 丸山 裕二

Low Power Communication
 【Low Power Communication】

 QRPクラブでは現在60周年記念誌の製作プロジェクトがスタートしています。来年の発刊に期待したいと思います。さて、QRPに関する書籍で、現在流通している物を探してみたところ、ARRLのこの書籍を見付けましたので、目次順に簡単に紹介したいと思います。

1.Just the FAQs(よくある質問)
  ここでは18個の質問/回答形式で簡単に纏められています。堅苦しくは無く、会話形式な中にはちょっとフランクな『私はお酒は飲まないけど、何で自作をしたいのか?』なる質問がありました。

2.The Advantages of QRP(QRPの長所)
 何名かの運用写真を交えながら、QRPの長所が語られています。太陽電池を使っての運用では、初期費用の紹介と電池寿命(ここでは20年と記されていました)が紹介されています。

3.Getting Started(入門編)
  QRP運用のための全般編として、既存のRigのALCを利用した運用方法の紹介や、様々なQRP Rigの簡単な紹介がされています。

4.QRP Equipment(QRP Rigの紹介)
 最初にElecraft K3の紹介に始り、FLEXRADIO 1500、MFJの各機器、ROCKMITE、TEN-TEC、QRP-PLUSなどなど。僕には見た事が無いRigが多く紹介されてました。

5.QRP Operating Strategies(運用方針)
 バンド内ワッチに始り、DX時のテクニック、ゴールはQRPでのDXCC。また、QRPでのコンテストテクニックの紹介がありました。

6.Antennas for QRP(QRPのためのアンテナ)
 アンテナ製作の解説で、一番ページが割かれている章です。

7.HF Propagation for the QRPer(QRPerのためのHF帯電波伝搬)
 従事者試験に出るレベルの電波伝搬の紹介の他に、電波伝搬の状態を伝えるハワイのWWVの紹介など。

8.QRP Station Accessories(QRPのアクセサリ)
 市販のアクセサリ製品の紹介。

9.Specialized QRP Modes(特別なQRPモード)
 ディジタルモードの紹介で、衛星通信での歴史や小電力の記録など。

10.Emergency Communication and QRP(非常通信とQRP)
 非常通信(EmComm)の決まり事が紹介されていましたが、米国には非常通信のための組織が有る事が知りませんでした。

11.Vintage Radio/Milcom and QRP(球Rigと軍用波機)
 昔のTV映画の「コンバット!」に出て来るようなハンディートーキーの写真やら、1950年代のRigの紹介など。

12.QRP Workbench Projects(QRP機プロジェクト)
 米国のQRPキット頒布の紹介。

Appendix(付録)
 MFJのQRPキット機(Cub)の説明書一式

 最後に、何年か前に読んだ書籍の中で、カナダの経営学者のヘンリー・ミンツバーグが『…企業のマネジメントは、アート、クラフト、サイエンスの3つが揃ってトライアングルのようにバランス良く……』と書いていた事を思い出しました。ここで言うアートとは構想力/想像力、クラフトとは多くの経験量、サイエンスは分析力です。今回紹介した書籍では、”クラフト”を除く2つが解説されています。この2つを習得して、数多くのQRP QSO経験を積めば、ゴールのDXCCを達成する事を著者のK7SZさんが望んでいるのではと思いました。


JARL QRPクラブ役員会から…

JA8IRQ 福島 誠(JARL QRPクラブ会長)

★ 当クラブは来年60周年を迎えます。そのためのいくつかの企画をたて、実行委員が集まって議論を始めています。

☆ 一つは「新版 QRPハンドブック」の編集です。ちょうど20年前の1996年にQRPハンドブックがCQ出版社から発行されましたが、かなり前からその2016年版を編集したいというもので、編集長以下数名の実行委員が企画を練っているところです。うまくいけば、来年のハムフェアころまでに書籍ができているでしょう。

☆ もう一つはQRPクラブキットの開発です。当クラブでは以前、FUJIYAMA,EQT-1などのキットを作ってきましたが、しばらく発表がありませんでした。今回はちょっと考え方を変えて、初心者でも完成させやすいものを開発したいと思っています。詳細については、今後、準備ができしだい会員向けに発表いたします。

★ JF1ISC(JA8DIQ)大久保さんの記事にもありましたが、2015年の9月5日~6日には北海道ハムフェアが開催されることになりました。第3回が開催されたのが平成3年ですから、24年ぶりとなります。東京でのハムフェア、関西ハムの祭典の常連である当クラブも出展する予定です。私も二日間、会場に入るつもりですので、ぜひ北海道でお会いしましょう。

★ 3月1日から、新年度の会員資格継続の申請を受け付けます。当会は毎年3月末で会員資格を更新しており、新年度の資格更新を済ませた方は正員、更新してない方は準員となります。連絡が取れない幽霊会員を減らすためですので、新年度も正員として活動したい方は忘れずに会員更新をお願いします。

☆ QRPクラブへの新入会、以前会員だった人の復活、および会員資格の継続更新はこちらのページより申し込むことができます。


編集後記&近況報告&アキバ散歩報告…

JO1UBD 丸山 裕二

★ お待たせ致しました、2月号会報をお届け致します。今月号は皆さんQRLなようで、少しボリュームが少なくなりました。

★ 小型ワンボードマイコンのラズベリーパイの新型機、Pi2が2月上旬から出回り始めました。新モデルは、動作中に強力なフラッシュ光を受けると、リブートするようです。EP-ROMのような窓はありませんが、実装部品に感受性に弱いのがあるようです。Pi1に比べると、確かに動作感は速く感じます。
ラズパイ
 【左が旧モデルのPi1、右がPi2】

★ 手軽にマイクロ帯遊びが出来る、24GHz帯ドップラーセンサで少し遊んでました。何かHAMでの活用は出来ないものかと思いまして、まずは24GHz帯に共振するダイポールに当てて、その時の受信電力を……24GHz帯の検波ダイオードを準備できなく諦めました。一陸技の試験内容(無線工学B、H26年7月)に、図のような出題がありました。これは単純な全反射でのANT利得測定(影象ANT)の手法ですが、ドップラーセンサーは、移動体からの反射波だけを検知しているので、どの程度の面積の物体まで検知できるのか判りませんが、反射で戻るのは相当少ない=受信電界は相当弱いと思います。
また、以前から出回っている10GHz帯ドップラセンサに比べて小型ですので、小さなオフセットパラボナを組み合わせて上手く放射方向を収束させて所要電界レベルを上げたりなど。それに、電源は5V/60mAですので乾電池でマイクロ帯へQRV可能……妄想は広がるばかりです。最近の乗用車に装備されるようになった”衝突被害軽減ブレーキ”のレーダ部分も、そのうちにジャンクで出回ってくるのでしょうね。期待します。
一陸技
 【影象ANT問題】
ドップラーセンサ
 【左が24GHz帯ドップラーセンサ、右が10GHz帯ドップラセンサ】

★ アキバで珍しい基板を入手しました。2月に入ってから、キャルキットの品揃えが増えてきました。
CalKit
 【#233 万能50MHz AM送信機基板】

★ 2SC2235-Y(データシート)は、50MHz帯で使ってみようかと思います。
2SC2235-Y
 【2SC2235-Y】

★ トラ技3月号の『私の部品箱』はバラモジ。NJM1496Dは、外付け部品が多くてちょっと敬遠気味です。皆さんも追試されているのでしょうか??

★ 皆様からの投稿をお待ち致します。月末締め切りの翌月中旬の公開予定です。
   投稿の宛先は、qrpnews@jaqrp.net です。(@を半角に変えてください)

編集後記&近況報告&アキバ散歩報告…

JA8IRQ 福島 誠

★ 書籍紹介 

当クラブ会員が出版した本で気づいたものを紹介していきます。

☆ ちょっと上で、丸山さんがトラ技3月号「私の部品箱」の紹介を書いてくださってますが、そのコラム著者のJA9TTT加藤さんは当クラブの会員です。3月号の記事は、バラモジICでAMワイヤレスマイクを作るという内容でした。

☆ 昨年11月に、誰もがよく使うテスターの本が電気工学書の老舗「オーム社」より出版されました。著者の一人は会員のJG1CCL 内田裕之さん(当クラブの選挙管理委員)です。
 題名はみんなのテスターマスターブックで、定価は2,160 円(本体2,000 円+税 ISBN 978-4-274-21670-1)。テスターはずっと使っていますが、改めて考えるとちゃんと使い方を習ったことがないですね。

みんなのテスターマスターブック

★ 部品紹介

☆ この1月に、新版QRPハンドブック編集会議で東京に行った際、秋葉原のaitendoに寄ってきました。ここは、中国系の部品ショップで、中国スタンダードのアヤシイ部品がたくさん置いてあります。今までに通販で利用したことはありますが、お店に行ったのは初めてでした。DSPラジオモジュールなど気になる部品がいろいろあります。

☆ 今回は極小電圧表示器 [VM3D-30V-036]を買ってきました。4.5V~30Vまで測れるデジタル式の3桁電圧計で、なんと価格は199円~269円(税別)です。
秋月電子にも同様のものがあるようです。

☆ ジャンク電源をを改造してつくったLM317の可変電圧電源につけてみると、スムーズに電圧が変化して表示されます。10V未満は0.01V表示なので5.99Vを表示してみました。さすがに0.01Vで止めるのは不安定ですが、なんとか表示できました。表示する電圧を電源に使って動作しますので、電圧を5V以下にするとだんだん表示が暗くなり、4.3Vくらいで読めなくなります。

簡易デジタル電圧系

☆ 可変型電圧計にはアナログメータの方が変化がみやすくて良いのですが、それでもこの値段であれば贅沢は言えません。以前、自動車バッテリのチェック用にシガーライタープラグにラジケータをつけて電圧チェッカを作ったことがありましたが、そのような用途にはぴったりだなと思いました。

☆ 昔の部品が消えてしまう一方で、驚くような安くて便利な部品が出てきています。新しいものにも慣れていきたいものです。(以上)